ヤマハエレクトーンコンクール2008 A部門 審査講評

審査結果

審査の講評にあたって

このコンクールは、エレクトーンによる新しい音楽の世界を創造する音楽家の登竜門としての役割を踏まえ、様々な音楽キャリアを持つ数名の審査員で審査します。評価は要項の「審査のポイント」(下記参照)を基本に、審査員各々が評価を総合的に検討・調整して評価結果を出します。つまりは将来のより良きエレクトーン音楽創造の担い手として活躍を期待する思いから、より創造性を高めた音楽表現力を求めたいといった、将来の可能性を主軸に各々の審査員の思いが反映された評価結果へとつながることになります。コンクールは競う場ではありますが、エレクトーンを通して音楽表現への意欲とともに技能が研鑚され、より充実したエレクトーン音楽が育まれる場、より充実した個々人の成長の場であって欲しいと願って審査に携わっています。どうかこの思いをご理解いただき評価・講評を受け止めていただけますようにお願いいたします。

審査のポイント

●基本的な考え方
「自分の表現したい内容や意志を感じさせ、共感性や説得力を持つエレクトーン演奏であり、音楽家としての将来性を感じさせること」

1、楽曲への取り組み

○いかに自分の音楽として個性的・独創的に表現できているかを評価します
自作曲・既成曲に関らず、個々人の音による創造美に対する確かな意欲とそれを支える確かな感受性が、演奏を通して感じられかつ音楽的説得力につながって表現され、これらがリアルタイム演奏でどこまで実現されているかが評価のポイントになります。

2、音づくりへの取り組み

○いかに自分の音楽として必然性・独自性を持って表現できているかを評価します
音の美しさや共感性は前提として、楽器の持つ多彩な音色や機能を、自分が表現しようとする音楽表現のために、いかに効果的に活用しているかが評価のポイントとなります。

3、演奏への取り組み

○表現豊かな高い演奏力を尊重し評価します
表現したい音楽内容のために必要な楽器機能が効果的に活用され、その表現のためにふさわしい必要なテクニックであるかが評価のポイントとなります。

4、課題編曲演奏への取り組み

○課題を活かして、いかに個々人の主張ある音楽表現がなされているかを評価します
課題編曲を通して、個々人の音楽的主張が、アイディア・楽曲構築・音色・演奏に感じ取ることができ、且つその表現内容に、独創性・独自性・豊かさなどを含み表現意欲をどこまで感じさせるかが評価のポイントとなります。

[審査員長]
大野雅夫
 財団法人ヤマハ音楽振興会 理事、音楽研究事業部長

今回も参加者お一人お一人の素晴らしい音楽に出会えたことを嬉しく思います。そして参加者を支えてくださった皆様に感謝申し上げます。
セミファイナルでは参加者夫々の持ち味が一曲一曲に凝縮され、音楽する喜びとともに日々音楽と向き合う思いが伝わってくる演奏に出会え、さらにファイナルでは存分にお一人お一人の音楽世界が繰り広げられる充実した内容だったと思います。
そうした傾向の中、伝えたい気持ちがやや勝り過ぎてせっかくの熱演が、一方的な演奏と感じさせたり、味わいの乏しい演奏と感じさせたり、そうした伝わり方が残念な結果となってしまったのではないかと思います。どのように伝わるか、どのように伝えるか、自分の奏でる音楽とどのような姿勢で向き合っていたかがポイントだったと思います。
審査員の皆様には誠実に参加者お一人お一人の音楽に向き合っていただき感謝の気持ちで一杯です。いただいた講評は単にコンクールの講評に留まらない、音楽に取組む大切な内容を持つメッセージだと思います。これらのメッセージを心に留め、より良き成長に向かって夫々の持ち味をより一層磨き前進されることを期待します。ありがとうございました。

斉藤 ノブ パーカショニスト、音楽プロデューサー

今回のセミファイナル、ファイナルで総体的に感じたのは、まずリズムが悪い。 大変なテクニックを持っているにも関わらず、自分達で作ったビートに単純に乗れない人が殆どだった。 折角、それぞれが考えた格好良いパターンの上で、どうして楽しくプレイ出来ないのか?
やはりコンクールのプレッシャーなのか?と感じた。まず簡単に言うと、素敵なメロディとコードが有って、そこにメロディを際立たせるビートが加わって曲が出来ている。その楽曲をプレイヤーが聴きに来ている観客にパフォーマンスも含め楽しませてくれるのがLIVE。
彼等は全国から選び抜かれたのだから自信を持って、与えられた時間をミニLIVEだと思って楽しんで欲しかった。
あともう一つ感じたのは曲の中身だ。イントロの部分、Aメロの部分やサビの部分が全部別の曲の様に貼付けて有るかの様だった。
やはり一曲なのだからイントロからエンディングまで仕掛けは別として流れを大切にして欲しいし、全体の何処に一番ポイントを置くか!を考えて、その曲のピークへ向けて劇的なダイナミックスを付けてプレイして欲しかった。
もう一つ、スネアやタムタムとかドラムの音色が全体的に似ていた事も、打楽器奏者としては残念だった。
特にシンバルの音が仕掛けの度にうるさい感じがした。そんなに打楽器を安易に考えないで欲しい。
しかし、年々感じるのは、みんな凄いテクニックで我々プロをも唸らせる程のプレイヤーが多くなって来たということ。
同じ音楽人として、とても嬉しく毎回楽しみにしている。これからもお互いに音楽を楽しむとしよう!

国府 弘子 ピアニスト、作曲家

皆さんの演奏、印象深く残っています。この楽器の醍醐味でもある、作曲&編曲&プレイというマルチな音楽性を出し尽くしてくれました。今後のエールをこめて、二つのポイントを。まず「人を感動させるためには、まず自分が感動してること」。そのコードの響き、そのメロディラインに、「クーッ」と演奏者自身が感動してると、これは演奏温度にかなり出る。自分で作った曲ならなおさら、その「幸せ感」をどれだけダイレクトに表現するか。これが演奏のインパクトを決定します。そして二つめ。これは一つめと矛盾するみたいですが「重心がブレない、冷静な演奏」…例えば、グルーヴの安定感、音量や音色の心地よいバランス感覚、それらは、たとえ演奏中に興奮しようが感動しようが乱れちゃあいけない。それが“重心の低さ”ってやつです。いわば「熱さ」と「冷静さ」、この二つの両立が聴き手に「圧倒的感動」をもたらすわけですね。こんな事を考えながら審査をしていたら、採点には全く迷いは生じませんでした。ファイナルの6人それぞれも、この2点において、感心する時とザンネンな時とがありました。このことを意識をする事で、演奏はどんどん変化します。(ってか、アタシもがんばれよと笑)。次にどこかで、変化の生まれた演奏を聴く日が楽しみ!

栗山 和樹 作曲家

ファイナリストのみなさん、ファイナルご出場おめでとうございました。
みなさんのすばらしい演奏には感嘆の連続でした!
とても複雑で高度な曲が多くて、本当にびっくりで、ただ、ただ感動しました。もう少し単純でグルーブがきいたポピュラー音楽の醍醐味を聞いてみたいなーとも思いました。
「ポピュラー音楽の歴史はリズムの歴史!」。凝ったリズムでなく、単純でもドライブ感のあるカッコイイ曲が聞きたかったなーと、ちょっと思いました。
4ビートがもし、ちょっと苦手な場合には、JAZZだけがポピュラー音楽ではないので、もっと色々なポピュラー音楽を試してみては?と感じました。

作曲、編曲に従事する人間のひとりとして、みなさんと同じく、日々その難しさを痛感しています。大きな単位でのびていくメロディを、目標にむかってモーションする音楽がもう少しあってもいいように感じました。それが聴く人へ強い表現力となるように思います。

パンニングとかウッドベースのEQとか細かい事も気になりました、もしお心あたりのある方はご参考までに。

ファイナリストのみなさんの、これからの活躍を心よりお祈りしております。

柏木 玲子 エレクトーンプレイヤー、作・編曲家

今回エリアオーディションからファイナルまで全エントリーを会場で聞かせていただきました。
ビデオでの課題曲録画から、それぞれの大会でのレパートリー準備、即興演奏での課題、ドラムとの共演・・
あらためてコンクール出場に向けてのエネルギーは大変なものだと実感し、全出場者の方々にその労をねぎらいたいと思います。そんな中で上位成績に輝いた方には、特別なモノを感じました。ここ何年か審査をしていますが、今年1位,インドネシアのエントリーはホントに素晴らしく 彼の演奏=彼自身 を表現しているように客席に伝わってきました。

特にファイナル30分のステージから表彰式での様子は、みんなが思わず笑顔になってしまいました。
音楽の一番大切なことは楽しむこと、人とのコミュニケーションで作る演奏の楽しみを、彼のステージから教えてもらった気がします。そして個性的な演奏の内側には、当然基礎的な音楽能力がきちんと備わってこそ出せることだということも一部のエントリーから感じました。又、残念に思ったことはエリア~のときには個性が出ていたのに、セミファイナルでは、その人の良いところが表現しにくいレパートリーだったように感じた方も見受けられました。
ファイナルでのプログラムとして、スタンダードバラードや、馴染みの曲を個性溢れるアレンジなどを聞けたのは、とても良かったと思います。
オリジナル曲を作ることは勿論大切なことですが、ポピュラー音楽では やはりスタンダード曲を即興的にさっとセッションできたり、勉強を積み重ねて既成曲アレンジすることも不可欠だと客席から感じました。
今回上位になった方々の今後を楽しみにしています。そして惜しくも思うような結果が出なかった方々にも是非このコンクールに参加したことが、今後の音楽経験に活かされるように願っています。

当初伏せていた課題曲、「Wondering with Dreams~ 夢を想いて~」 は私がこのイベントの為に作った大切な曲です。今後皆さんに親しんでいただければ嬉しいです。
ありがとうございました。
(ファイナル終演後BGMとして流していただいたものはセミファイナル後、サウンドチェックのステージでドラム奏者と演奏したものです。。。。)

三原 善隆 キーボード・エレクトーンプレイヤー、作・編曲家

2008年ヤマハエレクトーンコンクールA部門を終えて感想を述べさせていただきます。
まずはセミファイナル・ファイナル共に出場者の熱演に心より讃辞を呈したいと思います。
特に今回よりドラムとの共演など新しい課題が導入されましたが、心配をよそに素晴らしいステージパフォーマンスを披露して下さいました。
また、音色やバランスなどはエレクトーンSTAGEAを熟知した完成度の高い大変聴きやすい曲が多くあったように思いました。
但し曲については似たように聞こえる楽曲(ジャンル)が多く、もっとバラエティーに富んだ選曲を望みます。
コンクールを意識するが故、難易度の高いリズムやベースの動きに意識が行きがちでグルーブ感が疎かになっていたり、大切なメロディーを伝えきれていない様にも感じました。
ぜひ今一度、ポピュラー音楽の世界観を広げ自分に最も適した音楽を見つけ出して、技に専念せず心に残るメロディーや楽しめる音楽を追求し「弾くんだ!」ではなく「聴かせるんだ!」を大切に考えて頂きたく、次回を楽しみにしております。
ありがとうございました。

窪田 宏 エレクトーンプレイヤー・キーボーディスト、作・編曲家

出演者の皆様、関わられた皆様、本当にお疲れ様でした。
大変今回も素晴らしい演奏と内容とで楽しませていただきました。
エレクトーンという楽器を使い、全身全霊で演奏する姿に感動いたしました。
聴いていて思った僕なりのストレートな感想を述べさせていただきます。
セミファイナルの課題編曲演奏ですが、コード付けなどに気を取られせっかくの綺麗なメロディが後回しになり残念に思えた出演者の方もいらっしゃいました。歌心を大切にした演奏を心がけて下さい。自由曲ですが、アレンジしたことによって場面転換のし過ぎとなり、曲が長く感じられ、せっかくのいい演奏が余り必然性なく付け足されたように聴こえた曲もありました。短くても、良い音楽ならば十分説得力があるはずです。
音色面については、生楽器の再現を強く意識するのではなく、弾き手のオリジナリティあふれるサウンドに乗った“気持ち”が、こちら側には欲しいのです。特に審査員の方々は本物の音を知っているプロの方々です。色々な音色を出すことができるのはエレクトーンの利点でもあり、弱点でもあり難しいところですが、曲中でころころと変わりすぎる音色がかえって聴き手の集中を妨げ、伝わらない場合がありました。その辺を考慮すればかならずポイントは高くなるはずです。
これからの益々の新しい星を期待しています。

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