YEC2015審査のポイント及び審査講評

審査の講評にあたって

このコンクールは、エレクトーンによる新しい音楽の世界を創造する音楽家の登竜門としての役割を踏まえ、様々な音楽キャリアを持つ数名の審査員で審査します。
コンクールは競う場ではありますが、エレクトーンを通して音楽表現への意欲とともに技能が研鑚され、より充実したエレクトーン音楽が育まれる「場」であって欲しいと願っています。
以下に審査員各々からのメッセージを掲載致します。
今回のセミファイナル・ファイナルに出場した皆さんへのメッセージではありますが、エレクトーンでの音楽活動に関わる方々にとっても、貴重なアドバイスとして、ぜひご一読いただければ幸いです。

審査のポイント

基本的な考え方

聴衆の心に響く、魅力ある演奏内容・演奏表現であり、音楽家としての将来性を感じさせる個性や説得力を備えていること。

  • 演奏力
    • 音楽内容にふさわしい確かな演奏技術と表現力で、高い音楽性を発揮できることを評価します。
  • 創作力
    • 明快な音楽的主張が感じられ、印象に残る魅力的なテーマや、一貫性を持った説得力のある構成など、多くの聴衆に繰り返し聴きたいと感じさせる作品を評価します。
  • 即興力
    • モチーフの活用や展開、ハーモニー付けなど、基礎的な音楽力と即興的な応用力を評価します。
  • 編曲力
    • アイディアや独自性を含んだ楽曲構築・アレンジに高い音楽性が感じられることを評価します。
  • ファイナルでの評価ポイント
    • ソロリサイタルという形式を通じて、音楽家としての魅力や将来性を感じさせられるかどうかを評価します。
    • 聴衆と共有する時間として、選曲やプログラム構成も評価の対象とします。

[審査員長]杉山 久仁夫 ヤマハ音楽振興会 理事

エレクトーン演奏家を目指す方々にとって、最高のレベルが求められるYEC。
セミファイナルでは2曲(課題編曲と自由曲)を14名の皆さんが大変完成度の高い演奏で聴かせてくれました。
翌日のファイナルには6名の方々が進まれましたが、30分のプログラム(4曲以上)を演奏するという点で、セミファイナルまでのステージとは大きな違いがあります。
主役と脇役のキャラクターのちがいは? どんなストーリーで聴衆に何を伝えたいのか?
選曲や編曲の意図は? オリジナル曲では個性や聴かせどころは?など、30分をいかに企画構成するかがポイントになります。
ファイナルでの皆さんのプログラムについて、ストーリー性(企画構成)と演奏の完成度という点で更に高いレベルを目指せる方々ではないかと感じました。
音楽は時間の芸術と言われます。
ファイナルの30分ステージでは、聴衆が「この場に居て良かった…」と言える瞬間を、創造していくことを目指して欲しいと思います。
最後に本年度のYECは、審査員の評価が分かれた結果、1位該当者無しとなりました。この結果は出場者の皆さんが、更に高いレベルを目指せる方々だというメッセージも込められていることをお伝えしたいと思います。

栗山 和樹 Kazuki Kuriyama 作・編曲家

セミ・ファイナル、ファイナルに出場の皆さん、お疲れ様でした!
普段の研鑽の成果を遺憾なく発揮され、どの方も大変立派な演奏で、甲乙つけがたく僅差であったと思います。
YECはプロのエレクトーン奏者の登竜門であり、未来のエレクトーン界を担う音楽家を輩出することが目的であると理解しています。
エレクトーンの関係者以外の方が演奏を聴いて、「エレクトーンってこんな素敵な楽器なんだ」「自分もやってみたい!」「エレクトーンの曲って良いな!」とエレクトーンの虜にできるような演奏ができる方、エレクトーンならではの魅力あふれるオリジナル曲を作曲できる方を輩出する場ではないかと考えています。
そういった非常にレベルの高い位置で申しますと、その魅力にかけたかなと感じました。また、同じ世代の若い音楽家と比べて、もう少し色々なポピュラー音楽の語法が操れる様になっても良いのではないかと感じました。
ヤマハで幼いころから研鑽をつまれた皆さんは、基礎的な音楽能力の非常に高いことに疑いはありません。ますますご研鑽をつまれ、さらなる発展を遂げられますことを心より期待しております。

国府 弘子 Hiroko Kokubu ピアニスト、作・編曲家

今年のYECほど悩んだコンクール審査はなかった!それくらい皆さんのパフォーマンスは甲乙つけがたいものでした。
シンフォニック&クラシカルなもの、そしてバンド的なもの、と音楽スタイルは二分されていましたが、どちらも皆さんがエレクトーンという楽器に多大な時間を注ぎ、夢中になって音楽を追求したものでした。この先、より慎重に研究してほしいのは「音楽のクライマックス」のありかたです。サウンドの厚み、そして音の大きさという意味でも、クライマックスは厳選されたものでなくてはなりません。ここぞという時は、ここぞという迫力で、ダイナミックな興奮を聴き手も共有したい。しかし、ここぞという“その時”までは、ある意味のガマンが重要。抑えに抑さえた感情だからこそ、やっと解放されるその瞬間が感動につながる、といった感覚、わかりますよね。エレクトーンはドラマティックにクライマックスを彩ることができる楽器なので、その分そのサジ加減をくれぐれも慎重に。それには自分の演奏をいかに客観的に聴いて調整できるかが、とても大事だと思います。

中川 英二郎 Eijiro Nakagawa ジャズトロンボーンプレイヤー

YEC2015に参加された皆様、大変素晴らしい演奏をありがとうございました。
セミファイナル、ファイナルと続く審査は、私にとっても貴重な体験でした。なぜなら、これからプロフェッショナルな演奏家、作曲家として活躍するかもしれない原石を、どのようにしたら見つけることができるのか、自分自身にとっても未知のものであり、そこで自分が公平なジャッジができるのかと当日まで不安でした。
しかし、実際の演奏を聴くと、一人ずつの音楽性、想像力、技術などがちゃんと、良い意味でも悪い意味でもはっきり聴くことができましたので、非常に明快な審査を行えました。
私も演奏家として、たくさんのステージを積み重ねています。その際いつも心がけていることがあります。
それは、“ステージでは自分と向き合い、自分の心をさらけ出して演奏すること。”
言葉でいうのは簡単かもしれません。でも、実際に実行するにはとても勇気のいることだと思います。
特に演奏技術が優れている奏者であればあるほど、テクニックで観客を魅了することができてしまうので、なかなかさらけ出すことが怖くなってしまうものですが、どんなに技術的に完璧な演奏をしても、そこに自分自身と向き合い、さらけ出した表現がなければ、万人を魅きつける力はないと私は信じています。それが何かを自分自身で見つけ、最高の表現ができた人には、最高のご褒美がやってくることでしょう。
これからも音楽と向き合い、そして自分と向き合って成長していってください。いつの日か一緒に演奏できることを楽しみにしております。

柏木 玲子 Reiko Kashiwagi エレクトーンプレイヤー、作・編曲家

先ずは参加してくださった全エントリーの皆様、大変お疲れ様でした。ビデオ審査から選考会、ファイナルまでのレパートリー構成、即興演奏など非常にエネルギーのいることだったと思います。
セミファイナル、ファイナルと聴かせていただき、エレクトーン演奏技術についてはみなさん高い水準で感動する演奏も多くありました。
セミファイナルの課題編曲演奏はアイディアに富みいつも楽しんで聴かせていただいています。ただせっかくのアイディアがあまりに多彩な音色群(レジストレーション)により伝えたい大事なアレンジ内容が薄れてしまう方もあり残念に思いました。
オリジナル曲に関してはその人の個性が溢れ出ている楽曲がやや少なく、テーマの印象が薄いと感じてしまった方が何人かいらっしゃいました。カッコいい!美しい!音楽にはさまざまなジャンルがありますが、やはりメロディーが人の心に響きハーモニーとの関係がバランスよく奏でられていることが音楽の持っている魅力だと思います。
去年に続き第1位該当者なしという結果は厳しく残念でもありますが、自分自身をエレクトーンで表現するエネルギーを感じる魅力的な演奏家が今後も誕生することを心から望んでいます。ありがとうございました。

窪田 宏 Hiroshi Kubota エレクトーンプレイヤー、キーボーディスト、作・編曲家

出場者の皆様、関係者の方々、2015YEC大変お疲れ様でした。
2日間に渡り出場者の皆さんの素晴らしい演奏に堪能させて頂きました。
初日のセミファイナルでは14名の出場者の方々が演奏された訳ですが、皆さんの素晴らしい演奏に甲乙付けがたく今回も採点にかなり迷ってしまいました。自分の採点ポイントとして、次の日のファイナルでもう一度聴いてみたいと思ったファイナリストを選ばさせていただきました。ファイナルも大切ですがセミファイナルでの演奏が如何に大切なのかと今回は特に実感しました。ここまで勝ち上がって来た皆様方なので才能もあり高度な演奏技術も僅差です。
残念に思ったことはトータルなサウンド作りで、STAGEAシリーズになり、よりリアルな生楽器に近く演奏出来る反面、サウンドの奥行き感や曲によっては広がり感などを研究されたら更に良くなると思いました。
音量が大きすぎる出演者出場者の方もいて演奏は良いのに残念でした。
エレクトーンは単体でスピーカーも付いていて便利です。音作りでヘッドフォンで作成される方も多いと思います。ヘッドフォンの場合は種類によっては低域感が減り低域を多めに作ってしまう可能性もあります。コンクール等でスタジオやホール等で演奏する機会を考えると事前にPAやスタジオモニタースピーカーから出るサウンド作りをされると更に音楽の幅が広がると思います。
皆さまの益々のご活躍をお祈り申し上げます。

難波 邦宏 ヤマハ音楽振興会 音楽指導スタッフ

セミファイナル、ファイナルに出場された皆さん、そして2015年度のYECにチャレンジされた全ての皆さん、お疲れさまでした!出場にあたっての準備には大変苦労されたことと思いますが、沢山の熱演を聴かせていただきありがとうございました。
ビデオ選考からファイナルまでの審査を担当させていただきましたが、優れた演奏テクニックをお持ちの方も多く、良く弾いているなぁと感心させられる場面が多々ありました。一方で、聴いていてワクワクする気持ちになったり、印象深くいつもまでも心に残るような演奏は、残念ながら少なかったように感じました。
オリジナル曲であれアレンジ曲であれ、自分の表現したいモノは「コレ!」という強い主張が感じられる演奏はとても印象に残ります。しかし、演奏面での主張は強くても演奏する楽曲の魅力が乏しかったり(特にオリジナル曲で、その曲の顔となるテーマやメロディーが印象に残りにくいものだったり)、逆に楽曲としては申し分なくてもどこか他人事のような主張のうすい演奏だったりと、演奏と楽曲のバランスが取れていないケースも多かったように思います。
聴く人を惹きつける音楽とは・演奏とはどういうものなのか?それを体感するためには、生の音楽を聴いて感動する経験を数多く重ねることによって、音楽的な視野を広げていく必要があるような気がします。
ワクワクするような魅力的な音楽をエレクトーンを通じて奏でることで、多くの人を魅了することのできるプレイヤーの登場を心から期待しています!

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