YEC2016審査のポイント及び審査講評

審査の講評にあたって

このコンクールは、エレクトーンによる新しい音楽の世界を創造する音楽家の登竜門としての役割を踏まえ、様々な音楽キャリアを持つ数名の審査員で審査します。
コンクールは競う場ではありますが、エレクトーンを通して音楽表現への意欲とともに技能が研鑚され、より充実したエレクトーン音楽が育まれる「場」であって欲しいと願っています。
以下に審査員各々からのメッセージを掲載致します。
今回のセミファイナル・ファイナルに出場した皆さんへのメッセージではありますが、エレクトーンでの音楽活動に関わる方々にとっても、貴重なアドバイスとして、ぜひご一読いただければ幸いです。

審査のポイント

基本的な考え方

聴衆の心に響く、魅力ある演奏内容・演奏表現であり、音楽家としての将来性を感じさせる個性や説得力を備えていること。

  • 演奏力
    • 音楽内容にふさわしい確かな演奏技術と表現力で、高い音楽性を発揮できることを評価します。
  • 創作力
    • 明快な音楽的主張が感じられ、印象に残る魅力的なテーマや、一貫性を持った説得力のある構成など、多くの聴衆に繰り返し聴きたいと感じさせる作品を評価します。
  • 即興力
    • モチーフの活用や展開、ハーモニー付けなど、基礎的な音楽力と即興的な応用力を評価します。
  • 編曲力
    • アイディアや独自性を含んだ楽曲構築・アレンジに高い音楽性が感じられることを評価します。
  • ファイナルでの評価ポイント
    • ソロリサイタルという形式を通じて、音楽家としての魅力や将来性を感じさせられるかどうかを評価します。
    • 聴衆と共有する時間として、選曲やプログラム構成も評価の対象とします。

[審査員長]小原 栄一 Eiichi Oharaヤマハ音楽振興会 本部長

今回のYECではセミファイナルへ12名、ファイナルへ6名に出場いただきました。
出場された皆さんから、心のこもった音楽のメッセージをいただけたことに改めて感謝とお礼を申し上げたいと思います。
そしてエレクトーンの限りない可能性を実感できる二日間でもありました。
音楽は演奏する立場の人と、聴く側の立場の人がいて、たいていの場合、聴く人は演奏者を選ぶことができますが、演奏者は聴く人を選ぶことが出来ません。
当たり前のことではありますが、そんな中、不特定のどれだけ多くの聴衆に、しっかり受け取ってもらえる音楽メッセージであったかどうか、が今回の審査においてカギを握った様に思います。オリジナル作品はもとより、課題編曲にも言えることだったと思います。
自身の主張やオリジナリティを追及することはとても大事であり価値の高いことです。ただ、それは何のためにしていることか、を意識することも大切であり、演奏者と聴衆という両方の立場から取り組んでいただく事が新しい価値をつくりだすことにも通じると思います。
審査会からファイナルまで出場者にとって、それぞれのステージ経験は必ず前進の一歩につながっていると信じています。皆さまの更なる活躍を期待しています。

栗山 和樹 Kazuki Kuriyama 作・編曲家

ファイナリストの皆さん、ご出演おめでとうございます!素晴らしい演奏、ありがとうございました。まだ非常に若い年齢でこれだけのステージをみせられるのは非常に驚異的で、みなさんの実力、才能に非常に感銘を受けました。今までのヤマハでの基礎音楽教育をどれだけ吸収なさったか、また指導者の方々の能力と熱意の賜物と尊敬してやみません。
これだけ素晴らしいみなさんですから、さらに音楽の枠を広げ、オリジナリティの探求に、一層、勉強していただければ、すごい作品ができるのではないかと、その可能性に非常に期待します。
私はみなさんに比べ微々たる才能で、比較するのもおこがましいです、日々、自分に疑問をなげかけ、悩んで勉強しています。
自分のアレンジはプロフェッショナルと言えるだろうか?ドラムはそれだけ聞いても魅力的だろうか?ベースラインにサウンド感とオリジナリティがあるか?ストリングスは生き生きと躍動しているか?クライマックスは小さな音量で聞いてもサウンドとして盛り上がり、聞く人の心をふるわせられるか?そして何よりもメロディは心にしみて、聴衆を泣かせたり、笑顔にしたりできるかなど。課題は基本的な事ばかり、山積みで書ききれません。
その答えは過去の素晴らしい音楽の歴史の中にあるように思います。みなさんも一度、自問自答して、一緒に勉強していきせんか?

国府 弘子 Hiroko Kokubu ピアニスト、作・編曲家

皆さんの大変ハイレベルな演奏に改めて感嘆。二日間堪能させていただきました。何しろ各演奏者につけた点数が僅差で、順位をつけるのが本当に苦痛でした。
今回演奏を聴かせてくださった方々は全員、「音楽に夢中になる」ことを知ってしまった人ばかり。どんな形にせよ、もう逃れるわけにはいきません(笑)。一生、どうか音楽で至福の時間を過ごして欲しいです。
さてエレクトーンは、まさにバンドやオーケストラを自分一人で奏でられてしまう“魔法の楽器”。私の友人のアレンジャーのほとんどがエレクトーン出身なのも「なるほど」という感じです。多彩な音色の個性を活かすこと、各音色の音量バランスをとること、それらが「絶妙」であるためには、やはり日頃から生楽器の演奏に多く触れてほしい。CDだけではなくライブで「その瞬間の音のおしゃべり」を浴びてほしいと思います。そしてご自分自身が「他の楽器とコラボすること」。そこで味わうスリルや喜び、一体感は、きっと想像以上なはず。膨大なる孤独な時間を演奏準備に注いでいるであろうエレクトーン奏者たちには、もっともっとそういう “ゴホービの時間”を差し上げねばなりません!

柏木 玲子 Reiko Kashiwagi エレクトーンプレイヤー、作・編曲家

今回審査をした2日間のYECは、大変レベルの高い充実した内容に感じました。そんな中で順位を付ける事は難題でしたが、自己の音楽をストレートに表現された方に魅力を感じ評価されたように思います。コンクールという競い合う場で簡単(シンプル)な表現でチャレンジすることは、勇気のいる事だと思います。物足りなさを心配して過度に盛り上げようとする気持ちから、ついあれもこれもと複雑な内容に仕上げてしまいがちな想いを断ち切り、本番に臨んだ英断に共感いたしました。
基礎がしっかりしたシンプルな作品は、華やかに、力強く、幾様にも変化でき色々な演奏形態でより膨らんでいけると思います。編曲課題に於いても興味深い作品が多い中、やや過剰なアイディアが逆効果になり原曲の印象が薄くなり過ぎている作品が残念に感じました。
誰にも負けない超越したグルーブ感、メロディーとハーモニーの美しさを大切に構築した作風、母国語以外にも軽妙なMCで魅了した海外エントリー・・・それぞれ誇りを持って次の目標に進んでいただきたいと願っています。
皆様の5年後10年後に、魅力ある人間であり、プロとして輝いて活躍される姿を心から期待しています。ありがとうございました。

平部 やよい Yayoi Hirabeエレクトーンプレイヤー、作・編曲家

今までに積み上げてきた成果が試せるコンクールにチャレンジすることは、「自分は音で何を伝えたいのか?」を考える大切なチャンスでもあります。
演奏を聴かせて頂き感じたことですが、テーマに明確な意志と展開に一貫性が感じられないと、ただ音の羅列になってしまうということです。引き算し、本当に伝えたい音のみを厳選する必要があるように感じられました。選ばれた方々は、伝えたい音に一貫性があり、それを表現する上での歌心やグルーヴ感が心地よく伝わり、潔いくらいに脱力が出来ていてメリハリがあり、「間」を大切にした演奏でした。
心に残る演奏には、一音一音の「入り口」「出口」を大切に【音の向き】を意識し、タッチに気持ちを込めた繊細かつ大胆さが不可欠です。
ただ、斬新さが感じられる「Electoneでしか表現出来ない音楽」が少なかったことは残念で、今後さらに生まれて来ることを期待しております。
皆さんが時間を割き準備してこられたものを丁寧に音で紡ぐ時間は、苦労しただけのことが必ず身になっている期間でもあり、指導して下さる先生方と一体となって一つの音楽を創りあげる醍醐味は、コンクールならではの厳しさと達成感があります。
自分を昂めていける場として諦めずにチャレンジして欲しいですし、それを聴かせて頂くことを今後も楽しみにしております。

窪田 宏 Hiroshi Kubota エレクトーンプレイヤー、キーボーディスト、作・編曲家

出場者の皆様、関係者の方々、2016YEC大変お疲れ様でした。
2日間に渡り出場者の皆さんの素晴らしい演奏を堪能させて頂きました。
初日のセミファイナルでは12名の出場者の方々が演奏された訳ですが、皆さんの素晴らしい演奏にこの日は終演後とてもハッピーな気分の一日でした。なぜかと言うと今回は特に将来性のある出場者が多くいらっしゃったからです。
12名の皆さんの音楽性はもちろん、テクニックも素晴らしく、またサウンド作りもよく考えられて平均的に聴きやすかった印象を覚えています。 課題曲もそれぞれ個性のある編曲で楽しませていただきました。ただ、5分以内でのアレンジの制約でしたが、無理に長く編曲をしてしまい逆に勿体無いなと、思った出場者の方もおられました。
2日間通して聴いていて一番に感じたことは、演奏やテクニックは素晴らしいけど聴いているこちら側にその情熱が余り届かない演奏が残念に思いました。指を速く動かしたり両足で凄いパッセージを弾くことは練習に大変な努力が必要です。
でも、音楽は目で感動をするのではなく、聴いてくれる人にいかに気持ちを込め感動を与えるものだと自分は思います。
このコンクールを通して有能な音楽家が多勢誕生しています。そして、今回は特にエレクトーンプレーヤーになれる将来性のある出場者が誕生したと思います。
皆さまの益々のご活躍をお祈り申し上げます。

難波 邦宏 Kunihiro Nambaヤマハ音楽振興会 音楽指導スタッフ

セミファイナル・ファイナルに出場された皆さん、そして2016年度のYECにチャレンジされた全ての皆さん、お疲れ様でした!
今回のセミファイナル・ファイナルは出場者全員が学生さんという若さ溢れる大会でしたが、個性的でパワフルな熱演の数々を楽しく聴かせていただきました。
そして、久々に第1位を選出できたことは審査員全員にとっても大きな喜びでした。
YECはコンクールですから、もちろん高い演奏テクニックや創作・アレンジの技術が求められるのは当然ですが、それらをことさらにアピールすることが必ずしも良い結果につながるとは限りません。それらの技術は、聴く人が心地よく聴けるために用いられるものであって、それらをアピールすることが演奏の目的になってしまっては、コンクールといえども本末転倒なのではないかと思います。
自分が本当に好きな音楽・目指す音楽をしっかりと見据えて、聴く人の心に届く音楽を、沢山の魅力が詰まったエレクトーンという楽器で奏でて欲しいと切に願っています。
今回エントリーされた皆さんの今後のご活躍を心から期待しています!

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