GALA CONCERT 2012 〜ヤマハ音楽教室から生まれ育つ、若き音楽家たちの祭典〜

指揮者 広上淳一さんインタビュー

ヤマハ・ガラ・コンサート2014では、第二部に広上淳一さん指揮による新日本フィルハーモニー交響楽団を迎えての共演がありました。
終演後、共演した感想や音楽との向き合い方について、広上さんにお話しをお伺いしました。

-- 本日のコンサート、若い二人の演奏家と共演されたご感想はいかがでしたか?

お二人ともみずみずしく、若々しく、そして謙虚で、オーケストラも気持ちよく演奏させていただきました。きけば彼らはまだ高校生ということですが、僕があれくらいの年齢の時にはとてもあんなことはできませんでした(笑)。もちろんこれからのことは努力と環境次第ですが、非常に才能があると思います。濱田さんは将来指揮者になりたいとかで、僕が教えている音大においでと言ったんだけど(笑)。お二人とも将来とても楽しみですね。

-- 1部にはエレクトーンの演奏もありましたが、この楽器についての率直なお考えをお聞かせ下さい。

エレクトーンについて様々な意見がありますが、僕はむしろエレクトーンでもこんなに素晴らしいことができるんだ、十分感情を表現できる楽器なんだということを、もっと啓蒙していってほしい。重要なのは、楽器の仕組みや性能ではなく、あくまでもそれを操っている人間がどういう心を持ってそれを演奏しているかなんです。ただ、1つ言いたいのは、今のお子さんたちは小さいうちから電子音でできた音楽を日常的に耳にしていますが、それだけが音楽だとは思わないでほしいということ。たとえばヨーロッパの古い電車が走る音と、日本の駅の電子音の発車ベル。どちらが良い悪いではなく、そのどちらもきちんと受け入れられる感性を育てていってほしいと思います。

-- ヤマハに期待されることはありますか。

まずは、長い歴史を積み重ね、今日出演したような子どもたちを育てる優秀なシステムを作ってこられたヤマハに敬意を表したいと思います。ただ僕は、音楽を学んでいる子どもたちがみんな音大に行ってプロの音楽家になる必要はないと思っています。普通大学にいってもいいし専門学校にいってもいい。また働いてもいい。けれど、自分が学んできた音楽を使ってなにかをする、曲を書くでも演奏するでも歌うでもなんでもいい、音楽と楽しみながら関わっていける、そういう子どもたちをヤマハにはこれからも育てていただきたいと願っています。

-- 今音楽を学んでいる人たちへのメッセージをいただけますか。

これはプロをめざす人にも言えることです。プロをめざす過程では、いやプロになってからも、音楽の世界にはどうしてもコンクールなどの競争、勝負が入り込みがちなのですが、本来音楽は勝負事ではありません。もちろん一等賞をめざす努力は大切だし尊い。けれど一等賞になれなかったから意味がないかというと、絶対にそんなことはありません。ソチ・オリンピックの浅田真央さんは、金メダルこそ取れませんでしたが、それをめざして積み重ねてきた努力はあんなに輝いた。大事なのは目標に向かってどれだけ頑張ってきたか、その過程なんです。たしかに努力は苦しいものです。しかしそれが、競争に勝つということのためではなく、聴いてくれる人を喜ばせるためのものなら、そしてそれをすることで自分がハッピーになれるのであれば、苦しみも楽しみとして受け入れられるはずです。プロの音楽家をめざす方には、そのことを忘れないでほしいと思います。