産学官連携による認知症予防を目的とした共同研究「御浜・紀宝プロジェクト」において論文「The Effects of Physical Exercise with Music on Cognitive Function of Elderly People: Mihama-Kiho Project」が医学系オンラインジャーナル「PLOS ONE」に掲載されました

2014年06月05日 研究発表

三重大学大学院医学研究科、三重県御浜町、同紀宝町、ヤマハ音楽研究所の4者で行った健常高齢者対象の音楽体操活用研究「御浜・紀宝プロジェクト」において、適切な運動と音楽を組み合わせることで認知機能の維持・改善により効果があることが証明され、4月25日(金)に国際的に権威のある医学系オンラインジャーナル「PLOS ONE」に論文が掲載されました。

同プロジェクトでは、御浜町、紀宝町の65歳以上の健常高齢者に対し、音楽と運動を組み合わせたエクササイズを行う群(音楽体操群:40名)、運動のみを行う群(体操群:40名)、脳検査のみを行う群(脳検査群:39名)のグループに分け、1年間にわたってプログラムを実施し、その前後で検査を行いました。音楽と運動を組み合わせたエクササイズは、ヤマハ音楽振興会が開発し、“ヤマハ大人の音楽レッスン”の講座の一つであるヤマハウェルネスプログラム『健康と音楽』を用いました。

今回の実証実験の結果、視空間認知や全般性知能、精神運動速度など複数の項目で、音楽と運動を組み合わせた音楽体操群の方が、体操群あるいは脳検査群よりも、健常高齢者の認知機能の維持・改善に有効であることが分かりました。これは、認知機能への改善効果が、既に証明されている運動に適切な音楽伴奏が加わったことにより、さらに高まったことを示しています。

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プロジェクトリーダーの佐藤正之准教授は、「今回の実験で注目すべき点は、音楽に合わせてリズムを取りながら体を動かす音楽体操群、運動のみの体操群、検査のみの脳検査群の間での分析の結果、音楽体操群で、視空間認知が有意に改善していたことです。実験に活用したヤマハのプログラム『健康と音楽』は、体操の内容と音楽伴奏が一体化した非常に良いコンテンツです。認知症患者の増加は、国家の喫緊の問題です。治療とともに予防が大切であることは論をまちません。“○○をすれば認知症が防げる”といった根拠に基づかないキャッチフレーズが巷に溢れる昨今、医学的・科学的にみて妥当な方法を市民に伝えることは、われわれ医師の務めでもあります。そのひとつの有効な手段として、体操と音楽との組み合わせに今後も注目していきたいと思います」と述べています。

今後この研究の成果が、厚生労働省により推進されている介護(認知症)予防の地域支援事業に貢献することを期待しています。