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連載第4回では、平野先生と溝根先生にホルン演奏を学ぶ学習者の方々へのアドバイスをいただきました。「理想の音のイメージ」「信頼できる指導者」そして「適切な練習」が上達へのポイントであると言えそうです。

学習者へのアドバイス

自分の理想の音のイメージを

司会:上達に向けて学習者の方々へのアドバイスがありましたらお願いします。

溝根:「こんな演奏をしたい」とか「こんな音を出したい」など、イメージが鮮明だと上達が早くなると思います。実際に受け身ではなくて、自分の理想の音をもってレッスンを受けてくれる生徒は上達が早いです。

 

平野:音楽大学のレッスンでは、まさにそれが求められます。中学生や高校生の方も、まずは「自分が表現したい音楽、音はどんなものか?」を考えてもらいたい。そうすれば、溝根先生のおっしゃったとおり、上達が早くなると思います。

 

信頼できる指導者

溝根:それから、自分の才能を伸ばしてくれる信頼できる先生につくことは、上達を促す上でも音楽を続けていく上でも重要なことだと思います。私はこれまで7人の先生にホルンを教わりましたが、皆素晴らしい先生です。

 

平野:私も先生にレッスンを受けることは、とても大切なことだと思います。ある研究では、初心者とプロ奏者では音の感じ方が違うという報告があって、プロ奏者のほうが音の違いをよく聞き分けられるそうです。これをレッスン場面に置き換えると、例えばプロ奏者が「良い音」と感じていても、初心者は「良い音なのかどうかわからない」という、なんとももどかしい状況が生まれてしまうことも考えられます。

 

司会:そういう生徒さんはいらっしゃいましたか?

 

溝根:実際にいましたね。「良い音だったよ」と伝えても、特に初心者の中にはピンときていない子もいましたね。

 

平野:やはり、そうなんですね。つまり習いはじめのときに自分で良し悪しを判断してしまうと、実は間違った方向に練習が進んでいってしまう可能性もありうるのです。こうした観点からも、溝根先生がおっしゃったように、信頼できる先生についてレッスンを受けることは大切なことだと思います。

 

適切な練習が肝要

司会:この他にもアドバイスはあるでしょうか?

 

平野:練習のやりすぎには、注意してほしいですね。よく中学生や高校生が部活動で毎日長時間休みなく楽器演奏をしていると耳にします。スポーツや勉強にも言えることですが、音楽もやりすぎは良くない。休憩をとりながら適切な時間の長さで練習をしていないと、心と身体の健康を害する恐れがあります。

 

音楽を好きではじめたはずなのに練習がつらくて辞めてしまう生徒がいるという話も聞いたことがありますが、これでは本末転倒ですよね。そうならないように、指導者や周りの大人が生徒の心と身体の両方をケアしながら音楽活動を行ってほしいですね。

溝根:同感ですね。

 

司会:金管楽器演奏では、無理して長時間練習をすると具体的にどのような怪我をしてしまうのでしょうか?

 

平野:唇を切ってしまったり、歯並びが悪くなってしまったり、顎関節症のリスクが高くなったりすることが報告されています。他にもジストニアという病気になる可能性もあります。これは演奏しようとすると、自分の意志に反して身体が勝手に動いてしまい思い通りのパフォーマンスできなくなってしまう病気です。私はジストニア研究の専門家ではありませんが、例えば金管楽器奏者の場合はある特定の音を演奏するときに、唇が勝手に震えてしまって音が真っすぐ出せなかったりするそうです。

 

ジストニアという病気

平野:ジストニアは未だ原因がはっきりわかっておらず、そのため根本的な治療方法が確立されていません。論文によるとこのジストニアの発症は、練習のやりすぎが一つの要因と考えられています。練習をやりすぎてしまうと疲れが溜まりミスを犯しやすくなりますが、このミスを何度も繰り返しているうちに脳がそのミスをする身体の使い方を記憶してしまい、それが積み重なってある日自分の意志に反して身体が勝手に動いてしまうというメカニズムが考えられています。

 

溝根:ジストニアは、やっかいな病気ですね。私の知り合いにも海外の著名な先生を招いて講習会を主催されている方がいます。

 

平野:特にプロ奏者にとっては、重大な病気だと思います。

 

溝根:加えて、ジストニアの存在自体を知らない人も多いなと感じています。このことも問題だと思います。

 

平野:大学の講義でジストニアのことを取り上げると、音楽を専門に学ぶ学生でもほとんどの人が知らない。私もこのことは本当に問題だと思いますし、大学などの教育機関がもっと伝えていく責任があると感じています。

 

司会:ぜひ多くの方に知っていただいて、適切な練習を心掛けてほしいですね。

 

(司会:ヤマハ音楽研究所)

 

「5.音楽を科学するということ」に続く(全6回連載予定)

 

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◇プロフィール

平野 剛(ひらの たけし)
桜美林大学 芸術文化学群 助教
専門:運動制御学、神経生理学、バイオメカニクス

URL:http://takeshi-hirano.com/

溝根 伸吾(みぞね しんご)

東京藝術大学卒業及び同大学院修士課程修了仙台フィルハーモニー管弦楽団ホルン奏者

宮城学院女子大学非常勤講師

Twitter:@mizone_s

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