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学び・教養
「ホルン演奏を科学して”音楽教育の未来”を切り開く」最終回では、平野先生と溝根先生に今後のホルン研究の方向性や、ホルン愛好者の方々へのメッセージを語っていただきました。
連載

今後のホルン研究について

緊張状態での楽器演奏

司会:平野先生は、今後どのような研究に取り組まれるのでしょうか?

平野:唇周りの筋肉の活動とマウスピースを唇に押し付ける力の研究については、溝根先生にもご協力いただき一定の成果が出てきています。
そこで、今後はコンクールなど緊張が高まるステージ上での演奏中に、これら「筋肉の活動」や「力」にどのような変化がみられるか実際に計測する研究を行ってみたいと考えています。
 
溝根:お客さんがいる前で演奏すると、練習とは違う緊張を感じてプロ奏者でもミスしたりしますからね。

平野:そうですよね。ミスはどうして起きてしまうのか?「緊張しているから」とメンタルの問題として片づけてしまうこともできますが、そこからもう一歩踏み込んで、緊張状態では「筋肉の活動」や「力」がどんな状態になっているのか実際に計測してみたい。こうした研究は本当に少なくて、特に金管楽器演奏では見たことがありません。
コンクールなど高い緊張状態でホルン奏者が演奏しているときの「筋肉の活動」や「力」を調べることで、「本番で力を発揮できない奏者は、こんな兆候がある」とか「この時間帯にミスが現れやすい」ということがわかってくれば、それに対処するための具体的な方法を提案できるかもしれない。
また逆に「本番に強い人」も中にはいて、緊張が高い状態でその人の「筋肉の活動」や「力」の状態がどうなっているか、私はとても興味があります。これも同時に調べてみたいですね。
 
溝根:興味深いですね。私もぜひ知りたい。
 
司会:壮大な実験ですね。平野先生のこうした研究の発想はどこから湧いてくるのですか?
 
平野:私は現在、大学の教員として研究を行っていますが、ホルン奏者としての視点も忘れないようにしようと普段から心がけています。例えば、今度行う研究では「緊張」がテーマになってきますが、この「緊張」を身をもって体験するためにアマチュアオーケストラや吹奏楽団の演奏会に出演したり、ホルンのソロコンクールに出場したり、さらに自身のホルンリサイタルを開催して演奏したりして、緊張の度合いの違いを肌で感じてきました。

中でも審査されるコンクールは、特に緊張しましたね。「次こそは緊張に負けないで演奏したい!」そんな思いが強くなって、次回はこのような研究をやってみようと思いました。
 
溝根:そこが平野先生のすごいところですよね。ご自身のコンクールやリサイタルの体験を基に研究を考えていらっしゃる。研究者と奏者の両方の視点を持って研究に取り組まれていることには、本当に感心します。

平野:ありがとうございます。
 
司会:実験が成功すると良いですね。研究成果が出ましたらぜひ教えてください。
 
平野:もちろんです。
 

楽器演奏を楽しもう

司会:最後にホルン愛好者の方々へメッセージをお願いします。
 
溝根:もし練習をしていて辛いと感じることがあったら、一度立ち止まって「なぜ自分は楽器を演奏しているのだろう」と自分に問いかけてみてください。

最初は「楽器を楽しく吹きたい」だけだったのに、いつの間にか「上手に吹けないとダメだ」とか「これじゃあコンクールで優勝できない」など、目的がすり替わってしまっているかもしれません。
 
そんなときは原点に立ち返って「そうか、自分は楽しむために楽器をはじめたんだよなぁ」と思って、楽器演奏をまた楽しんでほしいなと思います。

平野:練習のやりすぎには注意してほしいと思います。過度な練習は怪我のみならず、心の健康を害する恐れがあります。また前にも紹介したように、ジストニアなど治療方法が確立されていない病気にかかってしまうリスクも高くなります。
こうした危険性があることを演奏者、指導者、そして演奏をサポートする人たちで共有していただきたいですし、もし現状に問題があれば皆で話し合って解決にあたってほしいと思います。
 
身体にも心にも気を配りながら楽器演奏を行っていただき、一人でも多くの人が楽しくそして長く音楽活動を続けてほしいと願っています。
 

(おわり)

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◇プロフィール

平野 剛(ひらの たけし)
桜美林大学 芸術文化学群 助教
専門:運動制御学、神経生理学、バイオメカニクス
URL:http://takeshi-hirano.com/

溝根 伸吾(みぞね しんご)
東京藝術大学卒業及び同大学院修士課程修了仙台フィルハーモニー管弦楽団ホルン奏者
宮城学院女子大学非常勤講師
Twitter:@mizone_s

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