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健常者と障がい者が共に音楽を楽しめる「共遊楽器」を生み出す金箱淳一さんの活動を紹介する連載。第3回では、今後の展望について伺います。 (聞き手:藤村美千穂)
連載
音の垣根をなくす「共遊楽器」-金箱淳一さんの取り組み-

「共遊楽器」のこれから

現場での交歓を大切に

藤村:今後はどういったものを作りたいとお考えですか。

金箱:僕のスタンスとしては、「これを作りたい」という明確なものが最初からあるわけではありません。

 

まずは自分の作品が展示されている現場に行き、使う人を見て、どんな風に自分の楽器が使われているかを見たり意見を聞いたりして、次の一手を決める。出会う人が変わればそれだけ作品のバリエーションが増えるというのが理想です。

そういう意味では、教育機関という場所は適しているかもしれません。修士だと2年おきに学生さんが入れ替わっていき、常に新しい人と出会うことが出来ます。研究に関する対話の中で、新しいインスピレーションも浮かんできます。

 

この先出会っていく人と、お互いに良い影響を受けて新しいものを作りたい。そうすればアイディアが枯渇することはないと思います。誰かに「この先作り続けますか?」と聞かれても、「作り続けます」と自信を持って答えられます。

“感覚特性・身体特性”を超えて

金箱:現在、聴覚障がいを持つ方や、通常の楽器では演奏が難しい肢体不自由の方とも一緒に楽器を作る取り組みをしていますが、“障がい”というよりは“感覚特性・身体特性”という捉え方をしています。これまでの価値観とは全く違う、新しいものの捉え方、感じ方があると思っています。

 

そう考えるようになったきっかけは「タッチ・ザ・サウンド・ピクニック」にありました。参加した子どもの一人が、イヤーマフを取った瞬間「新しい音が聞こえた」と言ったのです。

普段はどうしても聴覚が優勢になって音を感じていますが、イヤーマフで音が遮断された時に、肌で音を聞くことを少しトレーニングできるようになります。すると今度は、イヤーマフを取った後にも肌で音を聞く感覚が残ります。その触覚と聴覚が合わさった時に、“新しい音が聞こえた”という感覚になるのではないでしょうか。

 

このように、私達の感覚特性も道具や環境によって変わっていく可能性があるし、振動で音を「利く」ことをトレーニングすれば音楽をより能動的に聴くことができる気がします。

 

音楽は非言語なので国を簡単に超えられるし、感覚特性・身体特性による差も意識することは少ない。差が出てくるとしたら、その人しか持ちえない個人的な能力として立ち現れてくると考えています。

 

現在、アクセシビリティと音楽に関する研究グループ「Drake Music」と接していますが、彼らの拠点はイギリスで、障がいは個人的な特性と環境要因で成立すると考えられており、環境のほうをどう変えていけるか、という考え方をします。このイギリスの社会モデルをそのまま日本に適用するのは難しいかもしれませんが、音楽や楽器は皆の意識を変えるきっかけを作れるはずなので、「共遊楽器」の研究においてはそこに重点を置いて取り組んでいきたいです。

 

※「タッチ・ザ・サウンド・ピクニック」についての詳細はこちら

 

藤村:確かに、実際に「共遊楽器」に触れてみると、音を聴くことの面白さに改めて気付かされました。この夏もイベントが目白押しだったそうですね。

 

金箱:一つは、8月1日から九州で開かれたイベントで「pitapat」という新作を展示しました。これまでの楽器とは設計を少し変えて、行動を誘導するデザインを意識して“思わず○○しちゃう”というエッセンスを入れました。

 

※「pitapat」についての詳細はこちら

 

8月25日に川崎市で行われた「かわパラ2018」では、マウンテンギター、ビブラションカホン、タッチ・ザ・サウンド・ピクニックのほか、義手と楽器を組み合わせた「義手楽器」なども展示しました。

さらに、8月31日に行われたヤマハ音楽研究所が主催したイベント「子育て×音楽-音楽でより深まる親子のきずな-」で「ratatap(ラタタップ)」を展示しました。

これは音が目に見えたら楽しい、という発想から作ったもので、楽器を鳴らすとその場所から「オトダマくん」というキャラクターが飛び出す仕組みです。これも、子どもたちには楽しい体験になったと思います。

※「子育て×音楽-音楽でより深まる親子のきずな-」についての詳細はこちら

※「ラタタップ」についての詳細はこちら

藤村:今後も金箱さんの「共遊楽器」に触れられる機会が多くあることを期待しています!貴重なお話をありがとうございました。

*****

誰でもすぐに演奏できる「共遊楽器」の性質そのままに、金箱さんも他人との間に垣根を作らず、とてもフレキシブルな姿勢で研究されていることがよくわかりました。“音が聞こえるとは何か?”という当初の疑問を解決するヒントもたくさんいただいたように思います。

まだまっさらな感性を持つ娘を「共遊楽器」の世界に触れさせてみたい。そんなことを思わされたインタビューでした。

 

 (インタビュー・文 藤村美千穂)

<おわり>

≪10月からの出展予定≫

 

・国際福祉機器展(10月10日~12日)

概要はこちら

※ratatap、Vibracion Cajonを展示します。

 

・超福祉展(11月7日~13日)

概要はこちら

※タッチ・ザ・サウンド・ピクニック、クラップライトなどを出展予定です。

 

・藝大21 藝大アーツ・スペシャル2018 障がいとアーツ 第1日 ワークショップ(12月1日)

概要はこちら

※タッチ・ザ・サウンド・ピクニックのワークショップを行います。

◇プロフィール

金箱 淳一(かねばこ じゅんいち)

1984年長野県北佐久郡浅科村(現:佐久市)生まれの楽器インタフェース研究者 / 博士(感性科学)。情報科学芸術大学院大学(IAMAS)修了後、玩具会社の企画、女子美術大学助手、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科研究員を経て、産業技術大学院大学創造技術専攻助教、現在に至る。障害の有無にかかわらず、共に音楽を楽しむためのインタフェース「共遊楽器(造語)」を研究している。

http://www.kanejun.com/

藤村 美千穂(ふじむら みちほ)

1976年4月9日、大阪府生まれ。大阪大学文学部卒。
小説や脚本などジャンルに囚われない執筆活動を行っている。
既刊の著書は『マトリガール』『ニーナの羅針盤』(ポプラ文庫)。
http://www.bright-write.com/

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