研究活動支援対象者の活動レポート

金管楽器の吹奏における声道の音響的役割について九州大学大学院 芸術工学研究院 鏑木時彦 准教授 インタビュー2007年10月02日 取材

2003年10月に九州芸術工科大学と九州大学との統合を経て、新しく誕生した九州大学大学院芸術工学研究院では、芸術と工学にまたがる幅広い研究活動が多数展開されています。その中で、2006年度研究活動支援の対象になったのが、鏑木時彦准教授(以下鏑木准教授)による管楽器に関する研究。福岡県福岡市の閑静な住宅街の中にあるキャンパスの研究室で、鏑木准教授にお話しいただきました。

トランペットの音程を変えるときに口の形を変える理由を知りたい

鏑木准教授の専門は、音声に関する音響学。人間がどうやって音声を出すかという、発声の仕組みを約20年間にわたって研究しています。これまで取り組んでいなかった管楽器に関する研究を始めたのには、あるきっかけがあったといいます。

鏑木: ヤマハ研究支援制度に応募する一年前に研究室に配属された学生が、管楽器について研究をしたいと希望したのが始まりです。その学生はユーフォニウムを演奏するのですが、音程を変えるときに口の形を変えるように指導されている、と。その理由がどんなものなのか、科学的な裏付けを試みたいということでした。それを実現するためには、金管楽器そのものではなく、金管楽器を吹いているときの口の中を調べる必要があります。それは私が長年取り組んできた専門領域の話に近いんですね。そこから研究がスタートしました。

トランペットを吹く際に、音程によって口の形を変える理由について、考えられる可能性を鏑木准教授は次のように予測しています。

鏑木時彦 准教授

鏑木: いくつか考えられるのですが、最も可能性が高いのは、口の形を変えることによって、口内の共鳴特性を変え、音程を調節しているという仮説です。たとえば、「a」「i」「u」「e」「o」という母音を発音する際に、口の形が変わるのはもちろんですが、口内の共鳴特性が変わるということがわかっています。同様にトランペット奏者が音程を変えるときにも、口の形を変えるのと同時に口内の共鳴特性を変えているのではないかと私たちは考えています。その仮説を確かめるのが、今回支援の対象になった研究の主な目的です。