研究活動支援対象者の活動レポート

金管楽器の吹奏における声道の音響的役割について九州大学大学院 芸術工学研究院 鏑木時彦 准教授 インタビュー2007年10月02日 取材

演奏者と楽器を含む音響モデルを確立する

この研究の最終的な到達点は、どういったところにあるのでしょうか。鏑木准教授は次のように語ります。

鏑木: トランペットを吹く際に音程によって口の形を変えている理由が、口内の共鳴特性などの詳細な科学的裏付けによって明確になれば、演奏指導に活かせるのではないかということ。これは、ヤマハの研究支援制度に応募する理由にもなった研究目的の一つです。楽器演奏に関する研究を対象にした支援制度はなかなかないということもあり、ヤマハの研究支援制度の主旨は私たちの研究目的によく合致していました。

また、演奏指導のみならず、その先にはさらに大きな研究ビジョンがあるといいます。

鏑木: 楽器そのものの音響特性はかなりのところまでわかっていますが、私たちの研究はさらにその先を視野に入れたもので、演奏者の身体を含めた音響モデルの確立を目指しています。それを確立できれば、物理原則に基づいたより詳細なシミュレーションが可能になり、さらにリアルな楽器音の合成が可能になるでしょう。将来的には、人間が行っているのにより近い形で、ロボットに管楽器を演奏させるといったこともできるかもしれません。そうしたことを視野に入れ、演奏者の状態をさらに正確に把握しパラメータ化する研究手法を試しているところです。

鏑木准教授の研究は、世界的に見ても類例のない独自性の高いものです。演奏に関するさまざまな応用を期待できる大きな可能性を秘めた貴重な研究といえるでしょう。

支援対象者プロフィール

鏑木時彦 准教授

九州大学 大学院芸術工学研究院

支援対象研究

課題名
金管楽器の吹奏における声道の音響的役割について
研究期間
平成18年4月~平成19年3月
ホームページ
http://speech.ad.design.kyushu-u.ac.jp/kabu/新しいウィンドウで開く