研究活動支援対象者の活動レポート

異なる音色間で出現するピッチ知覚エラー(ピッチの錯覚)に関する実験的研究愛知教育大学 教育学部 新山王政和 准教授 インタビュー2008年2月29日 取材

2音のピッチ差をどの時点で感じるか、2種の音色で測定

今回の研究は、基準となる音(1)と対象となる音(2)を連続して流し、音(1)と音(2)のピッチ差を少しずつ広げていき、どこの時点で気が付くか、という方法で進められました。音楽専攻の学生を対象に、150~160人が参加し、同じ条件で実験に臨みました。

新山王: 当初、「音楽専攻の学生だから、そんなに差が出ないのでは?」と考えていたのですが、しっかり差が出ましたね。最終的には半音の半分くらいまで離れるのですけども、それでも分からない学生もいました。違うのは分かったけども、高く外れているのか、低く外れているのかを間違ってしまう学生もいました。もちろん、「今は高く外れた、次は低く外れた」と分かる学生もいました。その3つの反応が出てきたのです。

また、この測定はピアノの音と人の声という2種の音色でおこなわれ、この2種の音色間で違いが出てくるのかということも調べられました。結果、ピアノの音は高い方より低い方へ外れていても気付きにくい傾向があり、逆に人の声の場合は高い方へのズレに気付きにくい傾向があったそうです。

新山王: 逆に自分から合わせていくとどうなるか、ということも調べました。たとえばA=440という基準音を聴いて声を出したり、楽器を使ったりして合わせていく、という実験もおこなったのです。すると、声のときは自然と低くなってしまう傾向があるようです。声を高く聴くセンサーが鈍いせいか、自分は低く歌ってしまうのかもしれません。

なお、この実験はコダーイ指導者の伊藤直美氏の協力のもと、ハンガリーでもおこなわれました。そこでは、ピアノの音は日本と同じく低い方の聴き取りが難しかったものの、人の声の場合は上方にも下方にも統計的に著しい差は出なかったそうです。

新山王: これはピアノでやったときも同じでした。この結果がどういうことを意味しているのかはまだ分かりません。これは音や音色に「慣れ」といいますか、経験の中で積み重ねきたものの違いが、認知のところにも表れているのではないか、と私は思っています。

ピッチが異なることを正しく識別できたピッチ差

自分からピッチ差を合わせた例

下記リンクよりテスト音源をお聞きいただけます。

  • ピアノのテスト用音声
  • 声のテスト用音声

音程の変化がわかるでしょうか?
※答えは次のページです。