研究活動支援対象者の活動レポート

音響特性を制御できるユニークな材料の創製豊橋技術科学大学生産システム工学系 戸田裕之 教授 インタビュー2009年01月23日 取材

豊橋技術科学大学の生産システム工学系に所属し、材料工学の金属分野について研究を進めながら、「21世紀のものづくり」を担う学生に対して教鞭を振るっておられる戸田裕之教授(以下、戸田教授)。そんな戸田教授の研究「音響特性を制御できるユニークな材料の創製」が、2007年度研究活動支援の対象になりました。今回はその内容について、愛知県豊橋市にある豊橋技術科学大学の一室で、戸田教授にお話しいただきました。

機能性を持った先端材料の創製を目指して

以前はある企業で、主に自動車や航空機などに使用される材料の研究に取り組んでいたという戸田教授。金属の中にセラミックスなどを混ぜ合わせて、より高性能な材料を作製するという領域で、数多くの成果を上げてきました。そして、戸田教授にはその当時から取り組み続けている、1つの理想とする思いがあるといいます。

戸田裕之 教授

戸田: それは、混ぜ合わせる材料や作るプロセスが安くて標準的でも、良質な材料が作れないかということです。

私が企業に在籍していた当時は、一般的に金属に混ぜる複合材料としてセラミックスが採用されていました。しかし、アルミニウムは1kgあたり数百円、鉄ならば1kgあたり数十円であるのに対して、セラミックスの添加材は1kgあたり数万円か数十万円もするのです。そこで、アルミニウムに混ぜる複合材料をセラミックスではなく、低コストな別の金属に置き換えて、同じ強度レベルになる材料を作ろうと考えました。

戸田教授はこれまで、アルミニウムの約2倍の強度を持つ材料を作製しましたが、コスト面の問題で実用化に至っていません。また、鉄やアルミニウムの削り屑を混ぜることで同様の材料を作り、特許も取得しましたが、こちらはプロセス面の問題で実用化が進んでいません。そこで、戸田教授は強度をはじめとする材料の性能だけではなく、材料の機能性にも着目することにしたのです。

戸田: 「高い強度の材料作製が技術的に可能なのだから、何かに使えないか」と模索していた矢先に、オーディオショップで偶然、鋳鉄でできた「インシュレーター」を見かけたのです。そのとき、ありふれている材料でも、音という機能性によって大きな価値を付加できることを発見しました。

そこで、同じような研究をしている知り合いに協力を仰ぎ、試しに音響実験をしてみたのですが、音楽に関する見識が少ない私たちが聞いても、普通の材料と金属では耳で聞いて分かる違いがありました。そこで3年前から本格的に研究をはじめたのです。