研究活動支援対象者の活動レポート

乳児の音声インタラクションにみる音楽の発達的分岐京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科 嶋田容子 研究員 インタビュー2012年01月31日 取材

発声行動と音楽性の関係を明確にし、音楽教育の発展に貢献したい

嶋田研究員は、さらに次の段階として、京都大学の実験室に18カ月の乳児とその母親を招き、母子のやり取りをビデオで撮影。今回は、乳児や幼児が発声した瞬間に、母親にすかさず追随して声を重ねてもらうようにしました。

嶋田: 約20組の母子にご協力いただきました。このときは、実験条件として、母親から子どもの発声に合わせてもらうようにお願いしたので、大半の母子で重複率が約30%を超えました。こうして声が重なる時間が増えると、子どもの発声に「たたたたた」といった繰り返し発声が多く見られるようになり、あたかも楽しげにリズムを刻んでいるような行動が見られました。

このような「声の重なり」がどのような感情に基づいて行なわれるのか、どのような意味があるのか、そして音楽的な発達とどのような関係性があるのか。これらを解明するために、嶋田研究員は、声を重ねるときのメロディーやピッチの分析を現在も続けておられます。また、今回の実験結果やデータを音楽教育のさらなる発展に向けて役立てていく方針です。

嶋田容子研究員とお嬢様

嶋田: 新しい実験の中でリズムという要素が見えてきました。今後も研究を続けて、「声の重なり」と音楽性との関係をより確実に定義できるようにしたいと思います。そして、テクニックだけではなくモチベーションも重視した音楽教育を確立するために、今回の実験で得た結果やデータを還元していきたいと考えています。また歌についての人類学の研究データとも照らし合わせて、人にとっての「歌うこと」の意味を研究していきたいですね。

今回は、8カ月になる嶋田研究員のお嬢様も取材に参加してくださり、「声の重なり」について実践してくれました。今後も母子関係の縦断的研究がさらに進展することを期待しています。

支援対象者プロフィール(取材時)

嶋田容子 研究員

京都大学 アジア・アフリカ地域研究研究科 アフリカ専攻非常勤研究員

支援対象研究

課題名
乳児の音声インタラクションにみる音楽の発達的分岐
研究期間
平成22年4月~平成23年3月