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研究活動支援対象者の活動レポート

文化的・身体的差異を超えた音楽経験の人類学的研究一橋大学大学院社会学研究科 古川優貴 特別研究員 インタビュー2012年11月27日 取材

一橋大学大学院社会学研究科・特別研究員として、文化人類学の領域で研究を進めている古川優貴特別研究員(以下、古川研究員)。そんな古川研究員の研究「文化的・身体的差異を超えた音楽経験の人類学的研究」が2011年度研究活動支援の対象になりました。今回はその内容について、東京都国立市にある一橋大学国立キャンパスで古川研究員にお話をお聞きしました。

耳の聞こえない子どもたちが、どのように音楽を経験しているのか

かねてより、メディアを通して見聞きした「障害者像」に疑問を持ち、「障害者」とされる方が日常生活の中で何をどのように経験しているかということを明らかにするため、ボランティア活動やインタビューを通じて調査・研究を行ってきた古川研究員。日本国内で活動を続けていく中で「障害者」とされる人にインタビューをすると、どうしても「障害」にフォーカスした内容になってしまったり、「言わずもがな」の部分が存在したりすることで、「障害」以外のことにスポットライトを当てた話が聞けないという困難にぶつかりました。そこで、日本を飛び出し、生活習慣も考え方も大きく異なる地域でフィールドワークを行うことにしたのです。

古川: 行くのであれば日本から遠い場所にしようと考えて、ケニアをフィールドワークの地に決めました。2003年に初めてケニアに行ってからこれまで継続的に長期のフィールドワークを行ってきました。

寄宿制のろう学校の敷地内に住み込ませてもらっていたのですが、休み時間に子どもたち数人が何かの拍子で踊り始めたのを偶然目撃しました。1人の子どもが始めたダンスが徐々に周囲を巻き込み、他の子どもたちの体の動きも徐々にタイミングが合ってきて、最終的にはみんなのダンスがぴったり合っていったのです。

古川優貴 研究員

打楽器などの音がありその音の振動に意図的に合わせていたのではなく、また、他の子を見ながら動きを合わせていたわけでもありません。それにもかかわらずタイミングはぴったり合っていく。それは何とも不思議な光景でした。私は、このことに衝撃を受け、なぜ耳の聞こえない子どもたちがタイミングを合わせて踊ることができるのか、研究してみたいと考えたのです。

一般的に音楽経験は、楽譜の読み方を学ぶ、ダンスの振り付けを覚えるなどの約束事を学ぶことが必要だと考えられています。それは、身体的な差異によって約束事を学べない人が存在することを意味していました。しかし、ケニアのろうの子どもたちが自由に踊り楽しむさまは、そうした前提条件を覆すものでした。

古川: 彼らの音楽経験がどのように起きているかを研究することで、音楽自体をより広がりがあるものとしてとらえることができ、身体的な差異を超えてより多くの人が音楽を楽しめるようになるだろうと考えました。そこで、Webサイトを見て知った「ヤマハ音楽支援制度」に応募して資金的な援助を仰ぐことにしたのです。

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