研究活動支援対象者の活動レポート

神経成長因子からみた楽器演奏が脳機能に与える影響北翔大学生涯スポーツ学部スポーツ教育学科 沖田孝一 教授 インタビュー2012年07月04日 取材

北翔大学生涯スポーツ学部スポーツ教育学科で、健康スポーツ科学・運動生理学を研究するかたわら、市民を対象とした運動療法も行っている沖田孝一教授(以下、沖田教授)。そんな沖田教授の研究「神経成長因子からみた楽器演奏が脳機能に与える影響」が、2011年度研究活動支援の対象になりました。今回はその内容について、北海道札幌市中央区にある北翔大学北方圏学術情報センターPORTOで、沖田教授にお話をお聞きしました。

音楽演奏という複合的運動とBDNF産生の関連性を解明したい

循環器学における運動療法・スポーツ療法をメインの研究テーマとし、市民数千人の運動療法に携わってきた医学博士でもある沖田教授。自らの研究を進めていく上で以前から着目していたのが、神経成長因子の一つであり、運動によって骨格筋や脳で産生される脳由来神経栄養因子(BDNF:Brain-derived neurotrophic factor)でした。

沖田孝一 教授

沖田: 最近になって、運動中に、脳の大脳皮質・海馬でBDNFが最も多く産生され、循環血液中に放出されることも分かりました。また、学習・記憶などの脳機能にも深く関連していて、認知症患者やうつ病患者のBDNFは一般者の平均よりも低くなっていることが報告されています。そのため、運動がこれらの病状を改善する機序の1つとして、BDNFへの注目は高まっているのです。

しかし、海外の、運動とBDNFについて書かれたさまざまな論文を調べると、運動時のBDNFは上昇傾向にあるものの、一定の結果が得られていないようでした。そこで私たちは、過去の研究で行われてきた単一的な運動から視点を変えて、被験者が頭を使うような高次の複合的な運動を行うことで、より効果的にBDNFが産生されるのではないかと考えたのです。

頭を使いながら身体を動かすという複合的な運動として、音楽を採用することにした沖田教授。単純に音楽を聴くのではなく、自ら楽器を練習して演奏することで、学習・記憶といった脳の働き、得られる精神的な満足感などと、BDNF産生の関連性を解明できるのではないかと考えました。

そうした研究を思い描いていたとき、インターネットで偶然見つけたのが、この「ヤマハ音楽支援制度」だったそうです。

沖田: 研究者支援制度を紹介するWebサイトを見ていたときに、この「ヤマハ音楽支援制度」を知りました。今回の研究では、音楽の楽しさを取り入れた複合的なエクササイズをテーマにしたいと考えていたので、こちらの制度に応募させていただきました。