研究活動支援対象者の活動レポート

超絶技巧を生み出す運動技能の解明上智大学 理工学部 古屋晋一 准教授 インタビュー2016年08月01日 取材

発見した相関関係を基に、因果関係の有無を明らかにしたい

今回の研究では、さまざまなデータを取得することでいくつかの相関関係を見ることができました。古屋准教授は、次にその原因と結果、つまり因果関係を明らかにするための研究を進めています。

古屋:今回、研究を支援していただき、いくつかの相関関係を明らかにできたおかげで、次の因果関係の研究に進めます。20項目の因果関係をすべて調べることはできませんから、相関関係を絞り込むことができたことは大変有意義でした。因果関係の研究については、結果がもう少しそろってくると、どのような練習をしたらどのような成果が得られるかという話ができると思います。速く弾くための練習方法や練習曲、意識の向け方なども教えられるようになります。

また、古屋准教授は今回の研究を進める中で、温めていたもう1つの研究テーマもしっかり進めるべきだと考えたそうです。それが、個人内の技術の差です。同じピアニストの演奏で、上手くいくときといかないときは何が違うのかを明らかにすることで、演奏の安定性を高められないか、という可能性を探しています。

古屋:ピアニストは調子の悪い時期とコンクールなどの本番を絶対に重ねないよう、頭を悩ませるものです。そこで、好調時と不調時の身体の動きの違いをデータとして取得し、データサイエンスの手法を使って解析したいと考えました。演奏が上手くいくときといかないときの身体の動きを明らかにして、調子による身体の動きのバラつきを意識的に抑えていきたい、ということが目的です。

古屋晋一 准教授

この一連の研究が進めば、どのような練習をすれば良いか、どのように弾けば良いかなど、ピアニストにとって非常に役に立つ知識となるはずです。さらに、古屋准教授は研究室に在籍しているメンバーと一緒に、さまざまな研究に取り組んでいます。

古屋:1つ目は初見演奏です。初めて楽譜を見た曲を演奏する技術を向上させる練習法、トレーニング法を開発しています。2つ目は緊張です。緊張のメカニズムを解明することで、緊張の克服方法などを探っています。3つ目は暗譜です。超一流のピアニストでも「覚えた楽譜が本番で飛んでしまうのが怖い」という方が多いです。そこで、暗譜のメカニズムと覚えた楽譜が本番で飛ばない方法の解明を進めています。こうした研究を通じて、ピアニストの役に立つ成果が得られればと考えています。

支援対象者プロフィール(取材時)

古屋晋一 准教授

上智大学 理工学部

支援対象研究

課題名
超絶技巧を生み出す運動技能の解明
研究期間
平成27年4月~平成28年3月