品田凜花さん(17歳)はベートーヴェンの『ヴァイオリン・ソナタ第5番』を、「ヤマハマスタークラス」で室内楽を指導しているヴァイオリニストの漆原啓子さんと共演しました。
広く知られたテーマに始まりヴァイオリンと対話するように展開していく第1楽章、ゆったりとしたメロディから中間部の転調が印象的な第2楽章と、いずれもヴァイオリンと息を合わせたアンサンブルが続きます。軽やかなスタッカートが特徴の第3楽章は強弱やニュアンスが細やかに表現され、曲の魅力がいっそう引き立ちました。多彩な曲想の変化が心地よい第4楽章はシンコペーションのリズムが快活に響きわたり、華やかに締めくくられました。
後半は、島村崇弘さん(15歳)のプロコフィエフの『ソナタ第2番』から。心を揺さぶるような激しさと繊細さを併せ持ったプロコフィエフの感情が伝わってくる第1楽章、スタッカートと重厚なハーモニーが特徴の第2楽章と、さまざまな奏法が網羅された各楽章を表情豊かにたっぷりと聴かせていきます。悲哀に満ちたハーモニーの中に浮かび上がるメロディの静謐さが印象的な第3楽章に続き、先へ先へとスピーディーに進んでいく激しい展開が特徴の第4楽章ではひとつひとつの音を入念に、そしてダイナミックに響かせ、プロコフィエフの熱を帯びた心情を見事に表現しました。
最後に、小嶋早恵さん(16歳)がチャイコフスキー(編曲:プレトニョフ)の『眠れる森の美女』から7曲を演奏しました。大胆なアプローチから始まる「プロローグ」、同音連打が特徴の「情景」、鳥のさえずりと羽根の動きのようなフレーズが楽しい「歌うカナリアの精」、強弱の変化がスリリングな「赤ずきんちゃんと狼」など、小嶋さんの確かなテクニックによってチャイコフスキーの音楽の魅力とともに物語の楽しさが伝わってきました。最終曲の「フィナーレ」ではバレエ曲らしい軽快なリズムと重厚なハーモニーが会場いっぱいに響き渡り、コンサートのフィナーレを華麗に飾りました。
漆原啓子さんのコメント
ピアノを専門的に学習している人にとって、ソロ演奏だけではなく、仲間とアンサンブルすることは大変重要です。生楽器とのアンサンブルは、その楽器の特徴を知り、共演者と一緒に一つの音楽を作り上げていくとても貴重な機会です。
今回レッスンをさせていただくにあたり、一人一人個性も違い、またすごく若い方もいらっしゃる中で、アンサンブルがきちんとできるかなと当初少し不安な部分もありました。でも、さすがに若いだけあってすごく吸収が早く、その時に出来なくても次のレッスンには出来ている、もちろんそれぞれの音楽作品による得手不得手があり、完璧と言うわけではありませんが・・・。 今回、皆さんが着実に成長していく姿を見ることができて楽しかったです。将来、色々な人や楽器と共演する機会があると思いますが、今回の経験をぜひ役立てて欲しいと思います。今日のベートーヴェン(品田凜花さんのピアノとの共演)では、レッスンでの成果を存分に発揮していただき、素晴らしい演奏だったと思います。