国際的クラリネット奏者・武田忠善氏とエレクトーンプレイヤー・渡辺睦樹の共演が、2018年12月18日（火）ヤマハホール（東京都中央区）にて行われます。武田氏は演奏家としてはもちろんのこと、教育者としても国立音楽大学学長として優秀な演奏家を数多く育てられており、一方の渡辺は、エレクトーンによるクラシック演奏第一人者として活躍中で、その演奏表現力と作品解釈は常に高い評価を得ています。「エレクトーンと奏でるクラリネット協奏曲の夕べ」と題して行われるコンサートについて、お2人にお話を伺いました。
今回の企画のきっかけは、ヴァイオリンの徳永二男、フルートの工藤重典、両氏がヤマハホールでエレクトーンとのコンチェルト共演を成功に収めた話を、武田が聞いたことからだった
武田：ヴァイオリン、フルートときたら次はクラリネットじゃないかというお話をいただき、大変光栄に思いお引き受けしました。始めは正直エレクトーンでコンチェルトというイメージが全くできませんでしたが、徳永さんと渡辺さんのコンチェルトの映像を拝見してびっくりしたんです。目を瞑ったら本物のオーケストラのようでした。こんなにエレクトーンは進化しているんですね。もちろんそれは渡辺さんの技術とサウンド作りのセンスによるものなんでしょう。
渡辺：クラリネットは、音域や機動性の広さがありとても器用な楽器ですよね。今回ちゃんとクラリネットソロのCDを聞いて、柔らかい音から硬い音へ一瞬の間に変化する、とても弾力性のある楽器だと改めて思いました。
1部はフランスもの、2部はガラリと変わりモーツァルトというプログラムですが、共演において楽しみにしていることは？
武田：クラリネットは、相手が表現するものに対して逆をいったり、混ざったり、柔軟性がある楽器です。ドビュッシーは、「自然」や「空気」といったものを取り入れ、日本的な細かいニュアンスが含まれます。オケ版では印象派の絵の中の一部分をクラリネットが受け持っているという感じです。これを渡辺さんのアイデアで書かれた絵に寄り添い一緒に色彩を作ることが楽しみです。モーツァルトは一音たりとも手を抜くとすぐに分かってしまうほどシンプルな曲で、生涯かけて演奏するべき曲だと思っています。特に2楽章は本番のステージでしか表現できないような尊い音楽です。
渡辺：モーツァルトは、CDを繰り返し聞くと、こんなところでクラリネットを手伝ってるとか、オケが一番上の声部を取っていて主役のようだけど、その後のクラリネットの出だしを誘導しているんだなとか、そういう絶妙な絡みの新発見が多かったんです。うまく駆け引き、会話しながらできればいいなと思います。ドビュッシーに関しては、サウンドはオケですが、ピアノ伴奏的ないろいろな自由度の高さを持って演奏できたらいいなと思っています。
今回の共演で特に意識して工夫している点はありますか？
渡辺：クラリネットに限定するわけではないのですが、単旋律を出す楽器と共演する時、その音の出し方や音を伸ばしている間、伴奏はどう持っていったら次の音に移りやすいか、考えながら演奏しなくてはなりません。人間の呼吸とアクションで音楽の流れができている、ということを経験するのはエレクトーンに限らず鍵盤を弾く人にとってはすごく重要かなと思っていて。
武田：それはすごく大事なことだと思います。押せば音が鳴る鍵盤楽器と、息を使ってリードを振動させて音を出す我々が、お互い同じイメージを持って瞬間的に音楽を作っていかなければならないのですから。
コンサートの見どころ、聞きどころを教えてください
武田：今日の話をお聞きすると、自分の演奏に渡辺さんのエレクトーンがどう重なってくるのかによって、自分の音の作り方が変わってくるような気がします。オーケストラになかったものをやってくださると思うので、エレクトーンと一緒にというよりも、渡辺さんと一緒に作っていくのがとても楽しみです。
渡辺：エレクトーンを普段演奏されている方にとっては、エレクトーンを聞くことはもちろん、わりと身近なクラリネットだからこそその新たな発見をしてもらえたらいいかなと。また、クラリネットを演奏される方には、室内楽的な呼吸間でこのサウンドが実現するというのが、クラシックを演奏する上でのエレクトーンの特性のひとつかなと思うので、エレクトーンと演奏したいっていう人がたくさん増えたらいいなと思います。
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