ヤマハ音楽教室OBでプロのオーケストラの金管楽器奏者として活躍されている3名の方にお話を伺う企画の第3弾。今回は音楽家としての活動についてのお話に加え、ヤマハに通っている生徒さんや保護者の方、これから音楽を始めようと思っている皆さんへのメッセージもいただきました。
進行:元田健太郎 [ヤマハ音楽振興会 教育指導本部]
オーケストラ団員の仕事について
元田:
コンサートの当日はどのように過ごされるのですか?
長谷川さん:
やはり本番のステージにフォーカスして、そこから逆算して朝からそのモードで過ごしますね。この仕事をしていると、苦しいときもあるのですが、仲間と音を重ねるときの素晴らしさ、楽しさもあって・・・だから感動があると思います。苦しさと楽しさのどちらかだけだと仕事として続かないと思うんです。両方あるからこそ、続けていくうちに自分も成長できて・・・。
鳥塚さん:
「楽しいからやっています」だけではすまない部分もやっぱりありますよね。
岸上さん:
僕は、日本の音楽大学を卒業してドイツに留学していた頃に、現地の歌劇場の契約団員をしていたことがあるのですが、毎日違った演目を演奏するので、どうしても自分にとって経験の浅い曲もありました。リハーサルなしで本番を迎えることが多かったのですが、そんな時は、演奏している曲が、次にどう展開していくのか、自分の中でいくつかの選択肢を想定し、綱渡りのようなスリルの中で演奏が進んでいくんです。そして例えば自分の想定が裏切られるような曲の進行だった時、「あぁ、なんておもしろい曲なんだ」と感じたり・・・記憶も飛んでしまうほどものすごく集中しているのですが(笑)、そんな感動が忘れられず、今の仕事に繋がっています。
元田:
そういえば鳥塚さんは、2016年に開催された「ヤマハ・ガラ・コンサート」で、ヤマハ音楽教室のテキスト収載曲『コミカル・トレイン(作曲:渡辺睦樹)』が演奏された際、オーケストラとして共演されていましたね。
オーケストラ以外の音楽活動について
鳥塚:
演奏することで楽しくないことは何もないですね(笑)。アンサンブルも、レコーディングも、指導も楽しいですね。
長谷川:
確かに教えることも楽しいですね。指導していると「自分がどうやって音楽を好きになっていったのか」ということに向き合うことになるんです。振り返ると、自分にとってもやっぱり「楽しい」ということがとても重要だったと・・・。
岸上:
確かに・・・。僕も指導するときはそこを一番大切にしていると思います。
長谷川:
自分が経験を重ねてきたことを、次の世代に伝えていくことも大切だと感じ始めています。「自分の役割」とか大げさなことではなく、自分も楽しんでここまで来たから、「やってみたら?絶対面白いから!」という「おせっかい」のような気持ちなんです(笑)。
保護者としてお子さんへの思い
元田:
鳥塚さんと岸上さんは、小さなお子さんのお父さんでもありますが、お子さんにはどのように音楽と接してほしいと思いますか?
岸上:
最近私の母が、孫の教育に張りきりだしているんです(笑)。鳥塚さんはママ雑誌をのぞいたりします?習い事が特集されたりしていて、「情操教育とか大切なのかな?」と思ったり(笑)。
鳥塚:
そうですね。でもやっぱりまず子どもにも自分と同じように音楽を好きになってほしいと思います。
岸上:
そこは僕も同じです。楽しんでほしい。うちの子はまだ小さくて、ピアノを「ふく」と言っているのですが(笑)。「ぴあのふく~」と言いながら楽器にさわりたがるんです。「イヤイヤ期」の子どもでも、一生懸命楽器に触ろうとしているのを見ると、やはり音楽は自然と人間が興味を持てるものなんだな、と。そして将来子どもが音楽を続けていくなかで、専門的な方向に進みたいということになれば、サポートしてあげられる親でありたいです。
読者の皆さまへのメッセージ
元田:
最後に、生徒・保護者の方や、これから音楽を習おうと考えている皆さんにメッセージをお願いします!
鳥塚:
あまり気負わず、気長にやった方が楽しいですよ、ということでしょうか(笑)。
岸上:
そうですね。やはりまず音楽を好きな気持ちを大切にしてほしいと思います。音楽の中で感じたものが、日々の生活の中で人と話す時の喜怒哀楽に繋がってきたりすることもありますし。
あと、何かに取り組んでいると、苦手なことも出てきますが、僕自身その中で選択肢を見つけられたことで、進んでいけたと思っています。苦手なことが、そのままキライなことにならないようにしてあげてほしいと思います。
長谷川:
僕の場合は、日常に音楽がある環境だったことだけでとてもありがたかったと感じているので、保護者の方に音楽経験がなくても、ためらわないで始めてほしいと思いますね。生活の中に自然に音楽がある人が、たくさん増えるといいな、と思っています。
以上3回にわたって掲載いたしました。第1回、第2回の記事はこちらからご覧ください。
※第2回でも紹介した、ヤマハ音楽教室のテキスト収載曲『めんどりとひよっこ』を3名に演奏していただいた動画を再掲いたします。