ヤマハ音楽支援制度は、優れた音楽能力を有し、将来音楽分野で活躍が期待される若手音楽家への支援として「音楽奨学支援」(13歳以上~25歳以下)を実施しています。
今回は2018年度の支援対象者で、現在、ベルギーのブリュッセル王立音楽院学士課程3年で、サクソフォンを専攻されている、小川結子さんにお話を伺いました。
プロフィール:小川結子1994年1月30日生まれ
2011年8月 横浜国際音楽コンクール3位
2012年3月 洗足学園高等学校音楽科卒業
2014年6月 ドール音楽院卒業DEM取得(フランス国家音楽学業修了)
2016年6月 リヨン音楽院修了
2016年9月 ブリュッセル王立音楽院入学
これまでに、サクソフォンを服部吉之、ローラン・ブランシャール、ジャンドニ・ミッシャ、アラン・クレバン、シモン・ディリックの各氏に師事
ヨーロッパの中心都市、ベルギーの首都ブリュッセルに拠点を移して、もうすぐ2年が経ちます。現在在籍しているブリュッセル王立音楽院では、オランダ語・英語・フランス語の他にも世界中の言葉を耳にしながら、エネルギーに満ち溢れた先生方や仲間に囲まれて過ごす日々。私の専攻楽器、サクソフォンの発明者であるアドルフ・サックス氏の生まれ故郷であるこの国での留学生活は本当に贅沢と言って良い毎日です。
この街へ来ることを決めた一番のきっかけは、現在師事しているシモン・ディリック先生との出会いでした。初めてのレッスンから、先生の音楽への果てしない探究心、および音楽そのものと、それを取り巻く人やものへの温かいまなざし、そしてそれらを尊敬する姿勢に、私は今でも変わらず圧倒され続けています。
ブリュッセル・フィルハーモニー管弦楽団をはじめとしたさまざまな演奏会は、チケットがとても安価で、気軽に演奏会に出かけられる素晴らしい環境です。先生方や友人とのたくさんの素晴らしい出会いがあって、尊敬するミュージシャンは数えきれないほどいるのですが、昨年念願かなってチェチーリア・バルトリのコンサートに行くことができました。それ以来、以前にも増して彼女に憧れるようになりました。彼女が舞台に上がった瞬間から、あの壮大なボザールのホールの空気が変わって、客席の人が息を飲んでおり、彼女の姿は、音楽家というよりまるで女神のようでした。
洗足学園高等学校音楽科でお世話になり、留学を進言してくださった、服部吉之先生のアドヴァイスで始めた声楽の勉強はこちらでも続けています。身体の使い方、管楽器奏法の基礎である呼吸法を磨くこと、そして何より音楽の基本要素である歌を学ぶことに、音楽とより真摯に向き合う力をもらっています。現在お世話になっているアレクサンダーテクニックの教師でもある声楽家のジェラルディヌ・ノス先生、それから小澤征爾氏をはじめとする世界的な音楽家のサポートをされているキネシオロジーのジョゼフ・クワドゥバック先生とのレッスンは毎回おもしろい発見の連続で、私は彼らのことをマジシャンと呼びたいくらいです。自分自身の身体と心に向き合うことで得られる新しい世界を常に見させていただいています。
こうした恵まれた環境で勉強するうちに学士課程修了後、サクソフォンと人間の声をテーマに修士課程でも勉強を続けたいと思うようになりました。今回こうして奨学生に選んでいただけたおかげでその夢が叶うようになり、本当に感激しています。
私自身、音楽家の家庭に生まれたわけではなく、幼稚園の頃に仲の良かった友達がピアノを弾いている姿に憧れて音楽を始めました。でも小さい頃は本当に練習をしない子で、お恥ずかしい話ですが、レッスンでは初見で演奏したこともあったくらいです。
中学校入学時にサクソフォンと出会ったことで音楽との距離が一気に近くなり、それ以来ずっと、音楽と、音楽をきっかけに出会うことのできた方々に助けられ、今日の私があります。恩返しといったら大げさかもしれませんが、たくさんの人が音楽を通じて私に与えてくださったように、私も誰かに何かを与えてあげられるような人になりたいです。
やりたいプロジェクトがたくさんありすぎて、常に自分自身を落ち着かせつつも、今日は何が出来るだろうと毎朝跳び起きる、ここブリュッセルでの日々を全力で駆け抜けていきたいと思います。