ヤマハ音楽支援制度は、優れた音楽能力を有し、将来音楽分野で活躍が期待される若手音楽家への支援として「音楽奨学支援」(13歳以上~25歳以下)を実施しています。
今回は2018年度の支援対象者で、現在、バークリー音楽大学 ピアノ演奏科・ジャズ作編曲科5年に在学中の 垣本拓海さんにお話を伺いました。
プロフィール:垣本拓海(カキモト タクミ):1994年、兵庫県姫路市生まれ
バークリー音楽大学 ピアノ演奏科・ジャズ作編曲科5年に在学中。ヤマハ音楽教室出身。6歳よりピアノを習い始める。
高校生のときにテレビで偶然耳にしたジャズに魅了され、独学でジャズを学び始める。
その後、ジャズピアニスト小曽根実氏に師事。
2014年にバークリー音楽大学より授業料全額免除の奨学金を受賞し入学。
現在はジャズ作編曲科と演奏科の2つを専攻し、タイガー大越、Ayn Inserto、Greg Hopkins、Alla Cohen、Jeff Covellの各氏に師事。
これまでにProvincetown Jazz Festivalに初の日本人ピアニストとして出演するほか、バークリー音楽大学と上海音楽院主催の中国5都市をまわるコンサートツアーにピアニストとして参加するなど精力的に演奏活動を行っている。
作編曲家としての活動にも力を入れており、ASCAP Herb Alpert Young Jazz Composer Awardsをはじめとする多数の作曲コンクールで受賞、また国内外からの作編曲依頼にも取り組んでいる。
音楽を始めたきっかけ
幼い頃から楽器に触れるのが好きで、当時通っていた保育園ではいつもさまざまな打楽器を演奏していました。その時の先生の歌の伴奏がとても好きで、自分もこんなふうにピアノを弾いてみたいと思ったことから、クラシックを中心にピアノを専門に習い始めました。その後もピアノを続けながら、小・中学校では吹奏楽部に在籍し打楽器を担当していました。クラシック以外の音楽に対する強い興味を持つようになったのは、中学生の時に偶然テレビでピアニスト上原ひろみさんの演奏を聴いたことがきっかけでした。
その後、上原さんが影響を受けたジャズの巨匠、オスカー・ピーターソンの音楽を聴き始め、そのスイングの楽しさに夢中になりジャズを学び始めました。
印象に残った経験・先生・レッスン
小学3年生から中学3年生までの6年間、学校の吹奏楽部に所属していましたが、中学校の顧問の先生が部のモットーとしていた言葉が「素晴らしいプレイヤーになる前に素晴らしい人になろう」でした。その言葉は今でも私が音楽家として最も大切にしたいと考えていることのひとつです。
影響を受けた音楽家・好きな音楽
これまでに影響を受けた音楽家は、Chick Corea、Oscar Peterson、Joe Henderson、Bob Brookmeyer、Ayn Inserto、Maurice Ravel、Walter Pistonなど、数え上げるときりがありませんが、最近の私の作品の多くは、師事しているAyn Inserto氏の音楽に大きな影響を受けていると思います。普段はジャズ・クラシックを聴くことが多いのですが、音楽を聴くときに特にジャンルを意識したことはありません。ジャンルに縛られていろいろな音楽を知る可能性を狭めたくないので、常に新しい音楽や自分の知らない音楽を聴くようにしています。複雑に考えるよりもまず聴いて、好きか好きでないかという純粋な反応を大切にしています。自分の好きな音楽は本当に多種多様なため、私のiTunesを見て驚く人も多いです。
今後取り組んでいきたい音楽
音楽を心から愛するひとりの音楽家として、常に自分に正直に、ジャンルに縛られず自分が本当に好きだと思う音楽をつくり出していきたいです。しかしそれは決して独りよがりな音楽ということではありません。自分の音楽を通して人と共感し合える瞬間、人が笑顔になる瞬間、その時々のたまらない感動を味わうときに音楽をやっていてよかったと感じるからです。ただ「どんな人でも全員が好きな音楽」というのは存在しないと思うので、聴衆に迎合するということは決してしないまでも常に謙虚に周りの意見に耳を傾け、その中から自分らしさを残しつつ、自身の音楽がより良くなるために必要なものを慎重に選びとることが大切だと思っています。そうすることで、結果として「誰かがいつも楽しみにしていてくれる垣本拓海の音楽」というものを生みだしていければと思います。
今後チャレンジしたいこと、将来の夢など
今後もバークリー音楽大学では作曲・演奏に関するさらに高度な内容の授業を履修し、2019年夏に卒業する予定です。卒業後1年間はOPT(Optional Practical Training)期間を使ってアメリカに残り、Ayn Inserto氏のもとで作編曲について学び続ける予定です。その後は、アメリカの大学院で作編曲の修士課程に進むことも考えています。これまでは小編成の作品を書くことが多かったのですが、これからはジャズオーケストラなど大編成の作品も積極的に書きたいと思っています。将来は自身が率いるジャズオーケストラを設立し、自分にしか創れない個性ある新しい音楽を世界に向けて発表していきたいです。