自治体関係者および医療関係者を対象に、2018年9月12日(水)~14日(金)幕張メッセ(千葉県千葉市)で開催された「地域包括ケアEXPO東京」(リードエグジビジョンジャパン主催)に、ヤマハの音楽体操「まちかどエクササイズ」が出展しました。
社会課題解決への貢献を目指して
「まちかどエクササイズ」は、音楽とやさしい運動の組み合わせで脳機能を健全に保ちながら、日常生活に支障のない身体機能を維持することを目的とした新たなプログラムで、自治体および高齢者施設で展開しています。
2011年、当ソフトの素材を使用した産学官(三重大学、三重県御浜町・紀宝町、ヤマハ音楽研究所)による研究で、認知症予防となる認知機能の維持改善に効果があることが実証され、医学系プレスリリース他マスコミにも紹介されました。受講者、主催者からも好評を得ており、実験終了後も多くの方が受講を続けられています。
人口減・高齢化が進む中で健康寿命の促進、介護予防は、国や自治体の重要課題であり各界が注目しています。「まちかどエクササイズ」の取り組みが広がることで、そういった社会課題の解決に貢献できればと考えています。
音楽とやさしい運動を組み合わせた新しいプログラム
65歳以上の健常な方を対象に、1クラス20名程度で1回60分、週1回行います。
・歩く動作を基本に音楽に合わせてリズミカルに動き、心肺機能に刺激を与える「リズムウォーク」
・講師がたたくリズムを真似して手や足でリズムを取り、集中力や反応力を強化する「リズムエクササイズ」
・下半身に適度な抵抗を加え、太ももの筋肉を中心に増強する「レジスタンスエクササイズ」
・音楽に合わせた呼吸、発声トレーニングで表情筋や呼吸筋を鍛え、口腔機能の向上を目指す「ブレスコントロール」
など、10項目のやさしい音楽体操を続けることで「心肺・口腔機能」「運動機能」「認知機能」を総合的に鍛え、維持向上を目指します。
実証実験により認知機能の維持・改善を証明
約3年間にわたる共同研究では、健康な65歳以上の高齢者を「音楽体操群(運動+音楽)」「体操群(運動のみ)」「脳検査群(検査のみ)」の3グループに分け、それぞれプログラム実施前後に検査を実施。
その結果、記憶力や計算力、頭の回転の速さなど複数の項目で、音楽と運動を組み合わせた音楽体操群の方が、体操群・脳検査群よりも、健常高齢者の認知機能の維持・改善に有効である事がわかりました。これは、認知機能への改善効果が、既に証明されている運動に適切な音楽伴奏が加わったことにより、いっそう高まったことを示しています。研究結果は、国際的に権威ある医学系ジャーナル「PLOS ONE」に掲載されたほか、新聞など各種メディアにも取り上げられました。
健常者から、軽~中度の認知症患者まで有効性を確立
地域包括ケアEXPO東京では、共同研究者の佐藤正之准教授(三重大学認知症医療学講座)によるセミナーが約30分にわたり行われました(13日)。
認知症の殆どの病気には今のところ根本治療薬が無く、生活の欧米化や運動不足などからくる認知症へのリスク管理をいかに行うかが重要との現状を紹介。
「運動は体と脳に良く、音楽がついた運動は更に脳に良い」ことが明らかとなった研究結果について、適切な音楽がつくと運動しやすくなり、運動の効果を高めたのではないか。また、リズムやテンポを分析し、それにあわせて動き、実際にあっているかどうか確認し、違っていたら調節するということを無意識に同時に行っている。実はこれが、複雑な認知課題訓練として働いたのではないか、と詳しく解説されました。
予定人数を超える多くの方が参加され、メモを取りながら熱心に聞く姿も見受けられるなど、関心の高さがうかがえました。