第3回 ヤマハジュニアピアノコンクール

審査員コメント

青柳 晋(ピアニスト、東京藝術大学音楽学部准教授)

今日のみなさんの演奏は、表現が大人びていたり、楽器の鳴らし方が上手だったりして、とても感心しました。
感じたことを一つだけ申し上げますと、3曲を続けて演奏する際に、曲間が少し短すぎる人がいました。これだけ響きのすばらしいホールで弾く場合は特に、曲の雰囲気というものが弾き終わってもまだ空間に漂っているものです。それが消えるのを聴いて、次の雰囲気を作ってから2曲目を弾き始めるように、音が無い瞬間も大事にしていってください。その他は何も言うことはないくらい、楽しませていただきました。

今峰 由香(ピアニスト、ミュンヘン国立音楽大学教授)

これからみなさんが大人に成長していく上でのアドバイスを一つさせていただくとすると、ピアノを弾く以外にも、すばらしい音楽をたくさん聴いていただきたいと思います。例えば、モーツァルトの曲を弾くためには、モーツァルトのオペラを知ることも大切ですし、ハイドンやベートーヴェンの交響曲や弦楽四重奏曲などを知ることが、みなさんのファンタジーやインスピレーションに必ずつながっていくことになると思います。また、クラシック音楽はヨーロッパの伝統的な音楽ですから、ピアノを弾くことと並行して、ヨーロッパの文化や歴史を勉強したり、また作曲家が書いた手記などをたくさん読んだりして、芸術性を高めていって欲しいと思います。みなさんのこれからの成長を、心より願っています。

上原 彩子(ピアニスト、 東京藝術大学音楽学部早期教育リサーチセンター准教授)

みなさんの若い才能、それが醸し出すすさまじいエネルギーと緊張感に、聴いていて圧倒されましたし、大きな刺激を受けました。本当に素晴らしかったですが、せっかくなので一つ感じたことをお話しさせていただきます。
今日みなさんが演奏された曲は、子どものために作られたものではなく、大人が弾くのを想定して作られた曲です。それをみなさんの年齢で弾くということは、やはり想像力を本当に逞しくして、いろいろなものを楽譜から読み取りながら弾いていくということが大切になってくるのではないかと、改めて思いました。しかも、外国の文化をもつ人がとても昔の時代に作った曲ですから、それを理解して弾くのは、やはり相当な難しさがあります。ですので、楽譜の裏側を読むということに気をつけながら、これからも楽しんで勉強していってもらえたらと思います。

パスカル・ドゥヴァイヨン(ピアニスト、英国王立音楽院客員教授)

コンクールの日が近づいてくると、それがとても大きなものに思えてきて、世界で一番大切な瞬間を迎えるような気持ちになり、そして翌日には自分の人生が変わってしまうような気がするものです。しかし実際には、今日の自分と明日の自分はさほど変わりません。ただ、コンクールを経験して、いろいろな発見をしていくことが、もっと後になって、とても大きな変化につながっていくのです。
今から2500年くらい前にギリシャで生まれた、ソクラテスという哲学者が、こんな言葉を残しています。
「私は、とても節度のある人間です。なぜなら、何も知らないということを知っているからです。」
つまり、生きるというのは学び続けることです。いい音楽家になるためには、音楽を愛する、勉強するだけではなく、好奇心を持ち続け、何でも受け入れられるように心をオープンにして、音楽をたくさん聴き、本もたくさん読んで、自分のまわりで起きていることに目を向けて欲しいと思います。みなさんも、まだ知らないことがたくさんあるんだと自覚できる、賢明な人になっていってください。

松居 慶子(ピアニスト、作曲家)

みなさんの大変頼もしい演奏を聴かせてもらい、思わず笑顔になってしまったり、これからの将来が恐ろしいなぁと思ってしまうくらいの可能性をたくさん感じました。ただ弾くだけでも難しい曲もありましたが、自分の気持ちや感情、またその曲の世界観を味わいながら、楽しんで弾いていることがこちらに伝わってくると、音がより立体的に響いてきたように思いました。
これだけの演奏力を今すでにお持ちのみなさんですから、これからがますます楽しみです。それぞれの曲の世界観を楽しみながら、どうぞこれからも鍛錬なさってください。

山田武彦(ピアニスト、作編曲家、洗足学園音楽大学教授)

毎日毎日、ピアノに打ち込んで練習を積んでこられた出場者のみなさん、また、その練習ができる環境を心から支えておられる保護者の皆様、ご指導されている先生方が今日ここに集い、このすばらしい演奏を聴くことができたことに、とても感謝しています。
今日のこの機会を、単なる一つのステップとは思わないで、こういった特別な機会に恵まれてこの舞台に立ったということを、ぜひずっと憶えていてください。また、次にこのような機会があったら、舞台に上がったことだけでなく、それまでの準備をがんばった過程も含めて心に留めておくようにしてください。そのようにして、これからも大好きな音楽に一つひとつ取り組んでいっていただけたらと思います。

ラルフ・ナットケンパー(ピアニスト、ハンブルク音楽大学教授)

一つだけ気になったことは、みなさん、20歳も年上の人のようにものすごく真面目な顔をして演奏していましたね。もちろん、これだけの大きなホールでお客様の前で演奏したことは、きっと忘れられない思い出になったことと思います。私がみなさんにお願いしたいのは、もちろん楽譜を正確に演奏することはとても大切ですが、もう少し音楽を楽しんで弾けるようになって欲しいと思います。音楽で自分の感情を表現するわけですから、もっと感情豊かに、楽しく弾ける努力をして欲しいと思います。音楽は確かに勉強ですが、でもそれが自分でも楽しく、また聴いてくれる人にも喜びを伝えられるようなものであって欲しいと思います。

  • 五十音順、敬称略

左から 青柳晋、今峰由香、上原彩子、パスカル・ドゥヴァイヨン、松居慶子、山田武彦、ラルフ・ナットケンパー