ムスティスラフ・L・ロストロポーヴィチ氏による
ヤマハマスタークラス特別レッスンが実現!

 去る12月2日、ヤマハ音楽振興会のレッスン室で、ムスティスラフ・L・ロストロポーヴィチ氏による「ヤマハマスタークラス」の特別レッスンが行われた。「ヤマハマスタークラス」は、ヤマハ音楽教室で学ぶ生徒の中から特に優秀な子どもを対象に行われるクラスで、チェリスト、指揮者、そして教育者としても世界の尊敬を集めるロストロポーヴィチ氏の提唱によって1988年に開設された。
 ロストロポーヴィチ氏は、親交のあったショスタコーヴィチの生誕100年を記念した演奏会を世界で行っている最中の来日。彼は、サンクトペテルブルグにあるショスタコーヴィチの住まいを私財を投じて買い取って記念館を作り、サンクトペテルブルグ市に寄付したという。そのショスタコーヴィチの作品を新日本フィルハーモニー交響楽団の演奏会で指揮するために来日した彼は、忙しいスケジュールの中を縫うようにしてのレッスンだった。
 にこやかな表情で部屋に現れた彼は、生徒たちをはじめ、付き添いの親御さん、ヤマハ関係者だけでなく、記者やカメラマンにも手を差し伸べて固い握手をかわしてくれた。そんな和やかな雰囲気の中、レッスンが始まった。

 この日レッスンを受けたのは、古我久良々さん(10歳)、中村翔さん(11歳)、八木康徳さん(14歳)、そして菊地美涼さん(17歳)の4名。バッハ、ショパン、グリーグ、シャブリエの作品をロストロポーヴィチ氏の前で披露した。それぞれの演奏を聴き、4人ともに「才能を持って生まれたことにおめでとう」とほめた後、的確なアドバイスをしていく。「皆さんよく練習していて、とても上手に弾けているけれど、与えられた課題を弾いているように聴こえてしまう。自分が作曲家になったつもりで、今、この場で新しい曲を書いているように弾いて欲しいのです。もっと広いダイナミクス(デュナーミク)で演奏してください。フォルテシモとピアニシモの間には少なくとも4つの段階がありますよね、それをもっと意識して。さらに、音の大小だけでなく、音の表情についても考えてください。小さい音でも、耳もとで囁くものと、遠くで鳴っている音では違いますよね。また大きな音でもズンと重い音もあれば、爆発するような音もある。これからの勉強として、伝記などを読んで作曲家の人間性や、その人が生きた時代についても知って欲しいと思います」

 この日は3人がショパンを選んでいた。「特にショパンのようなロマン派の作曲家の作品を弾く時には、自分で感じたことをもっと自由に表現していいんですよ。自分がどう弾きたいかをちゃんと考えて、さらに聴いている人が飽きてしまわないように、さまざまに変化させながら。それが演奏家の個性となるのです。その個性がなければ、演奏する意味がありません。最近の演奏家の中には、技術はあっても個性のない人がたくさんいます。
個性を作るといってもまだ皆さんは若いから、これから、ということですけれども。でも、好きな男の子や女の子のために弾いてあげたいと思ったら、今ここで弾いたのとは違ってくるんじゃないかな」
 最後には部屋にいるすべての人に向けてメッセージをくれた。「音楽は言葉の壁を超えて、思いを伝えられるもの。音楽に感動することで、世界がひとつになれる。音楽は、誰にでもわかる『言葉』なんです」
 そして「このレッスンを実現させてくれた先生方と関係者の皆さんに感謝します。愛する日本から、素晴らしい演奏家がたくさん生まれることを祈ります」と締めくくった。提唱者であるロストロポーヴィチ氏からの暖かい励ましにより、今後のヤマハマスタークラスの更なる充実が期待される貴重な機会となった。

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