ON-KEN SCOPE 音楽×研究ON-KEN SCOPE 音楽×研究 https://www.yamaha-mf.or.jp/onkenscope Thu, 26 Nov 2020 04:10:13 0 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=4.9.12 教育が変わる=指導が変わる https://www.yamaha-mf.or.jp/onkenscope/iwatatekyoko1_chapter3/ Thu, 05 Nov 2020 17:43:15 0 河瀬 諭(かわせ さとし) 神戸学院大学心理学部准教授/ヤマハ音楽研究所研究員/感性アナリティカ 代表 https://www.yamaha-mf.or.jp/onkenscope/?p=6577

コンサートや体育のダンスなどで、みんなで音楽に合わせて動いたとき、一体感や高揚感を感じた経験はありませんか?今回は、集団でする音楽にスポットライトを当てて、音楽と身体の動きのつながりの関係や意義をみてきた本シリーズを締めくくります。

集団で音楽に合わせて動くと絆が生まれる

音楽に合わせてグループで身体を動かす意義は、人の進化的な観点も含めて研究が進んでいます※1。このような意義の一つとして他者との絆づくりがあげられます。ブラジルの高校生を対象にした研究では、音楽に合わせて一緒にダンスすることで仲間どうしの親密感や信頼感も増えていました※2。その際に、社会的な絆に関連するといわれるエンドルフィンが増加したとも示唆されています。

写真提供:stockfoto

なお、この研究では、親密感や仲間と同じである感覚は、全身でダンスしているときの方が座って手を動かしているときよりも顕著にみられました。行事や儀式で音楽に合わせてみんなで踊る理由には、こういった仲間どうしの絆やコミュニティ維持の役割もあるかもしれません。

 

音楽に合わせた動きが社会性に及ぼす影響は、幼児にさえ見られる非常に原初的なものともいわれています。1歳児が大人に抱えられた状態でビートルズの曲に合わせて上下に動いた研究があります(実験の様子は下記の動画です)※3 ※4

 

このとき、大人も目の前で子どもに合わせて/合わせないで動きます。その後この子どもは、この大人がものを落とすなどの困っている場面に遭遇します。すると、一緒に合わせて動いたときの方が、より大人を助ける行動をとりました。つまり、音楽に合わせて一緒に動くことが、幼児と大人の絆の醸成に役立っていたのです。

 

一緒に音楽することの意義

誰かと一緒に音楽することは、ほかの協働的活動とは違うのでしょうか。4歳児が対象の実験では、一方のグループは、打楽器を叩きながら池を模したセットの周りをぐるぐる歩きまわるごっこ遊びをしました。もう一方のグループは、同じごっこ遊びですが、打楽器や音楽を伴わずに池のセットを周りました。この活動後に仲間が助けを必要とする状況に陥ったとき、打楽器を使った子どもの方が仲間を助ける行動が多かったのです※5。この結果から、音楽的な活動の方が他者への思いやりをより強く感じたのがみてとれます。

 

このように共に音楽をすることが絆を深めるのはなぜでしょうか。その要因の一つに、音楽演奏や歌唱に伴う身体の動きも考えられます。

 

271名(4-6歳)のヤマハ音楽教室のレッスン生を分析したわれわれの研究でも、幼少期における音楽のグループレッスンと後年の共感性やコミュニケーション行動が関連していました※6。音楽レッスンで一緒に楽器を弾いたり歌ったりするときには身体の動きが自然と同じになりやすいでしょう。また身体の動きは、他の人と演奏を合わせる手がかりとして重要になります※7。音楽活動に伴うさまざまな要素に加えて、このような身体の動きの同調が、他者への共感や一体感につながるのでしょう。

以上の知見をふまえれば、みんなでリズムに合わせて一緒に音楽したり踊ったりすると、無理なく多くの人と絆を感じられるかもしれません。合唱が素早く親密感を醸成した研究のように※8、音楽は初めて会う人どうしが自然に打ち解け合えるきっかけにもなりえます。

したがって、音楽と動きを誰かと分かち合うのは、もしかすると言葉によるコミュニケーションとは別の意味で、人が社会で紐帯(ちゅうたい)を感じながら生きていくヒントをもたらしてくれるのかもしれません※9

 

本シリーズでは4回にわたり、音楽と身体の動きのつながりの意味を科学的な研究に照らして考えてきました。その中でみえてきたのは、音楽とは感情を揺さぶるだけでなく、身体の動きまでも引き起こす強い力をもっているということでした。

写真提供:iStock

そして、グルーヴがある、ノリがいい、この曲をかけると速く走れそう、みんなで踊ると楽しいなどと何気なく口にしている現象も、音楽と身体の動きのかかわりの中で科学的に研究されているのです。これは裏返せば、音楽と身体の動きのつながりをめぐる知見は日常生活に応用できる可能性に満ちているともいえます。

今後はより詳細に音楽と身体の関わりが明らかにされていくでしょう。私もさらに広い分野の方々と連携し、ワクワクする新しい研究をご報告できるよう活動してまいります。

 

  • ※1 Richter, J., & Ostovar, R. (2016). “It don’t mean a thing if it ain’t got that swing”–an alternative concept for understanding the evolution of dance and music in human beings. Frontiers in human neuroscience10, 485.
  • ※2 Tarr, B., Launay, J., Cohen, E., & Dunbar, R. (2015). Synchrony and exertion during dance independently raise pain threshold and encourage social bonding. Biology letters, 11, 20150767.
  • ※3 Laura Cirelli (2014, July 3). Interpersonal Synchrony Increases Prosocial Behavior in Infants – Video Abstract. Retrieved from https://www.youtube.com/watch?v=IaqWehfDm7c
  • ※4 Cirelli, L. K., Einarson, K. M., & Trainor, L. J. (2014). Interpersonal synchrony increases prosocial behavior in infants. Developmental science17, 1003-1011.
  • ※5 Kirschner, S., & Tomasello, M. (2010). Joint music making promotes prosocial behavior in 4-year-old children. Evolution and Human Behavior31, 354-364.
  • ※6 Kawase, S., Ogawa, J. I., Obata, S., & Hirano, T. (2018). An investigation into the relationship between onset age of musical lessons and levels of sociability in childhood. Frontiers in Psychology9, 2244.
  • ※7 河瀬諭. (2014). 合奏における演奏者間コミュニケーション. 心理学評論57, 495-510.
  • ※8 Pearce, E., Launay, J., & Dunbar, R. I. (2015). The ice-breaker effect: Singing mediates fast social bonding. Royal Society Open Science2, 150221.
  • ※9 Trehub, S. E., Becker, J., & Morley, I. (2015). Cross-cultural perspectives on music and musicality. Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences370, 20140096.
]]>
認知と非認知の連動 https://www.yamaha-mf.or.jp/onkenscope/iwatatekyoko1_chapter2/ Thu, 05 Nov 2020 17:14:48 0 河瀬 諭(かわせ さとし) 神戸学院大学心理学部准教授/ヤマハ音楽研究所研究員/感性アナリティカ 代表 https://www.yamaha-mf.or.jp/onkenscope/?p=6571

コンサートや体育のダンスなどで、みんなで音楽に合わせて動いたとき、一体感や高揚感を感じた経験はありませんか?今回は、集団でする音楽にスポットライトを当てて、音楽と身体の動きのつながりの関係や意義をみてきた本シリーズを締めくくります。

集団で音楽に合わせて動くと絆が生まれる

音楽に合わせてグループで身体を動かす意義は、人の進化的な観点も含めて研究が進んでいます※1。このような意義の一つとして他者との絆づくりがあげられます。ブラジルの高校生を対象にした研究では、音楽に合わせて一緒にダンスすることで仲間どうしの親密感や信頼感も増えていました※2。その際に、社会的な絆に関連するといわれるエンドルフィンが増加したとも示唆されています。

写真提供:stockfoto

なお、この研究では、親密感や仲間と同じである感覚は、全身でダンスしているときの方が座って手を動かしているときよりも顕著にみられました。行事や儀式で音楽に合わせてみんなで踊る理由には、こういった仲間どうしの絆やコミュニティ維持の役割もあるかもしれません。

 

音楽に合わせた動きが社会性に及ぼす影響は、幼児にさえ見られる非常に原初的なものともいわれています。1歳児が大人に抱えられた状態でビートルズの曲に合わせて上下に動いた研究があります(実験の様子は下記の動画です)※3 ※4

 

このとき、大人も目の前で子どもに合わせて/合わせないで動きます。その後この子どもは、この大人がものを落とすなどの困っている場面に遭遇します。すると、一緒に合わせて動いたときの方が、より大人を助ける行動をとりました。つまり、音楽に合わせて一緒に動くことが、幼児と大人の絆の醸成に役立っていたのです。

 

一緒に音楽することの意義

誰かと一緒に音楽することは、ほかの協働的活動とは違うのでしょうか。4歳児が対象の実験では、一方のグループは、打楽器を叩きながら池を模したセットの周りをぐるぐる歩きまわるごっこ遊びをしました。もう一方のグループは、同じごっこ遊びですが、打楽器や音楽を伴わずに池のセットを周りました。この活動後に仲間が助けを必要とする状況に陥ったとき、打楽器を使った子どもの方が仲間を助ける行動が多かったのです※5。この結果から、音楽的な活動の方が他者への思いやりをより強く感じたのがみてとれます。

 

このように共に音楽をすることが絆を深めるのはなぜでしょうか。その要因の一つに、音楽演奏や歌唱に伴う身体の動きも考えられます。

 

271名(4-6歳)のヤマハ音楽教室のレッスン生を分析したわれわれの研究でも、幼少期における音楽のグループレッスンと後年の共感性やコミュニケーション行動が関連していました※6。音楽レッスンで一緒に楽器を弾いたり歌ったりするときには身体の動きが自然と同じになりやすいでしょう。また身体の動きは、他の人と演奏を合わせる手がかりとして重要になります※7。音楽活動に伴うさまざまな要素に加えて、このような身体の動きの同調が、他者への共感や一体感につながるのでしょう。

以上の知見をふまえれば、みんなでリズムに合わせて一緒に音楽したり踊ったりすると、無理なく多くの人と絆を感じられるかもしれません。合唱が素早く親密感を醸成した研究のように※8、音楽は初めて会う人どうしが自然に打ち解け合えるきっかけにもなりえます。

したがって、音楽と動きを誰かと分かち合うのは、もしかすると言葉によるコミュニケーションとは別の意味で、人が社会で紐帯(ちゅうたい)を感じながら生きていくヒントをもたらしてくれるのかもしれません※9

 

本シリーズでは4回にわたり、音楽と身体の動きのつながりの意味を科学的な研究に照らして考えてきました。その中でみえてきたのは、音楽とは感情を揺さぶるだけでなく、身体の動きまでも引き起こす強い力をもっているということでした。

写真提供:iStock

そして、グルーヴがある、ノリがいい、この曲をかけると速く走れそう、みんなで踊ると楽しいなどと何気なく口にしている現象も、音楽と身体の動きのかかわりの中で科学的に研究されているのです。これは裏返せば、音楽と身体の動きのつながりをめぐる知見は日常生活に応用できる可能性に満ちているともいえます。

今後はより詳細に音楽と身体の関わりが明らかにされていくでしょう。私もさらに広い分野の方々と連携し、ワクワクする新しい研究をご報告できるよう活動してまいります。

 

  • ※1 Richter, J., & Ostovar, R. (2016). “It don’t mean a thing if it ain’t got that swing”–an alternative concept for understanding the evolution of dance and music in human beings. Frontiers in human neuroscience10, 485.
  • ※2 Tarr, B., Launay, J., Cohen, E., & Dunbar, R. (2015). Synchrony and exertion during dance independently raise pain threshold and encourage social bonding. Biology letters, 11, 20150767.
  • ※3 Laura Cirelli (2014, July 3). Interpersonal Synchrony Increases Prosocial Behavior in Infants – Video Abstract. Retrieved from https://www.youtube.com/watch?v=IaqWehfDm7c
  • ※4 Cirelli, L. K., Einarson, K. M., & Trainor, L. J. (2014). Interpersonal synchrony increases prosocial behavior in infants. Developmental science17, 1003-1011.
  • ※5 Kirschner, S., & Tomasello, M. (2010). Joint music making promotes prosocial behavior in 4-year-old children. Evolution and Human Behavior31, 354-364.
  • ※6 Kawase, S., Ogawa, J. I., Obata, S., & Hirano, T. (2018). An investigation into the relationship between onset age of musical lessons and levels of sociability in childhood. Frontiers in Psychology9, 2244.
  • ※7 河瀬諭. (2014). 合奏における演奏者間コミュニケーション. 心理学評論57, 495-510.
  • ※8 Pearce, E., Launay, J., & Dunbar, R. I. (2015). The ice-breaker effect: Singing mediates fast social bonding. Royal Society Open Science2, 150221.
  • ※9 Trehub, S. E., Becker, J., & Morley, I. (2015). Cross-cultural perspectives on music and musicality. Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences370, 20140096.
]]>
今日の幼児教育の目指すもの https://www.yamaha-mf.or.jp/onkenscope/iwadatekyoko1_chapter1/ Wed, 28 Oct 2020 18:04:15 0 河瀬 諭(かわせ さとし) 神戸学院大学心理学部准教授/ヤマハ音楽研究所研究員/感性アナリティカ 代表 https://www.yamaha-mf.or.jp/onkenscope/?p=6540

コンサートや体育のダンスなどで、みんなで音楽に合わせて動いたとき、一体感や高揚感を感じた経験はありませんか?今回は、集団でする音楽にスポットライトを当てて、音楽と身体の動きのつながりの関係や意義をみてきた本シリーズを締めくくります。

集団で音楽に合わせて動くと絆が生まれる

音楽に合わせてグループで身体を動かす意義は、人の進化的な観点も含めて研究が進んでいます※1。このような意義の一つとして他者との絆づくりがあげられます。ブラジルの高校生を対象にした研究では、音楽に合わせて一緒にダンスすることで仲間どうしの親密感や信頼感も増えていました※2。その際に、社会的な絆に関連するといわれるエンドルフィンが増加したとも示唆されています。

写真提供:stockfoto

なお、この研究では、親密感や仲間と同じである感覚は、全身でダンスしているときの方が座って手を動かしているときよりも顕著にみられました。行事や儀式で音楽に合わせてみんなで踊る理由には、こういった仲間どうしの絆やコミュニティ維持の役割もあるかもしれません。

 

音楽に合わせた動きが社会性に及ぼす影響は、幼児にさえ見られる非常に原初的なものともいわれています。1歳児が大人に抱えられた状態でビートルズの曲に合わせて上下に動いた研究があります(実験の様子は下記の動画です)※3 ※4

 

このとき、大人も目の前で子どもに合わせて/合わせないで動きます。その後この子どもは、この大人がものを落とすなどの困っている場面に遭遇します。すると、一緒に合わせて動いたときの方が、より大人を助ける行動をとりました。つまり、音楽に合わせて一緒に動くことが、幼児と大人の絆の醸成に役立っていたのです。

 

一緒に音楽することの意義

誰かと一緒に音楽することは、ほかの協働的活動とは違うのでしょうか。4歳児が対象の実験では、一方のグループは、打楽器を叩きながら池を模したセットの周りをぐるぐる歩きまわるごっこ遊びをしました。もう一方のグループは、同じごっこ遊びですが、打楽器や音楽を伴わずに池のセットを周りました。この活動後に仲間が助けを必要とする状況に陥ったとき、打楽器を使った子どもの方が仲間を助ける行動が多かったのです※5。この結果から、音楽的な活動の方が他者への思いやりをより強く感じたのがみてとれます。

 

このように共に音楽をすることが絆を深めるのはなぜでしょうか。その要因の一つに、音楽演奏や歌唱に伴う身体の動きも考えられます。

 

271名(4-6歳)のヤマハ音楽教室のレッスン生を分析したわれわれの研究でも、幼少期における音楽のグループレッスンと後年の共感性やコミュニケーション行動が関連していました※6。音楽レッスンで一緒に楽器を弾いたり歌ったりするときには身体の動きが自然と同じになりやすいでしょう。また身体の動きは、他の人と演奏を合わせる手がかりとして重要になります※7。音楽活動に伴うさまざまな要素に加えて、このような身体の動きの同調が、他者への共感や一体感につながるのでしょう。

以上の知見をふまえれば、みんなでリズムに合わせて一緒に音楽したり踊ったりすると、無理なく多くの人と絆を感じられるかもしれません。合唱が素早く親密感を醸成した研究のように※8、音楽は初めて会う人どうしが自然に打ち解け合えるきっかけにもなりえます。

したがって、音楽と動きを誰かと分かち合うのは、もしかすると言葉によるコミュニケーションとは別の意味で、人が社会で紐帯(ちゅうたい)を感じながら生きていくヒントをもたらしてくれるのかもしれません※9

 

本シリーズでは4回にわたり、音楽と身体の動きのつながりの意味を科学的な研究に照らして考えてきました。その中でみえてきたのは、音楽とは感情を揺さぶるだけでなく、身体の動きまでも引き起こす強い力をもっているということでした。

写真提供:iStock

そして、グルーヴがある、ノリがいい、この曲をかけると速く走れそう、みんなで踊ると楽しいなどと何気なく口にしている現象も、音楽と身体の動きのかかわりの中で科学的に研究されているのです。これは裏返せば、音楽と身体の動きのつながりをめぐる知見は日常生活に応用できる可能性に満ちているともいえます。

今後はより詳細に音楽と身体の関わりが明らかにされていくでしょう。私もさらに広い分野の方々と連携し、ワクワクする新しい研究をご報告できるよう活動してまいります。

 

  • ※1 Richter, J., & Ostovar, R. (2016). “It don’t mean a thing if it ain’t got that swing”–an alternative concept for understanding the evolution of dance and music in human beings. Frontiers in human neuroscience10, 485.
  • ※2 Tarr, B., Launay, J., Cohen, E., & Dunbar, R. (2015). Synchrony and exertion during dance independently raise pain threshold and encourage social bonding. Biology letters, 11, 20150767.
  • ※3 Laura Cirelli (2014, July 3). Interpersonal Synchrony Increases Prosocial Behavior in Infants – Video Abstract. Retrieved from https://www.youtube.com/watch?v=IaqWehfDm7c
  • ※4 Cirelli, L. K., Einarson, K. M., & Trainor, L. J. (2014). Interpersonal synchrony increases prosocial behavior in infants. Developmental science17, 1003-1011.
  • ※5 Kirschner, S., & Tomasello, M. (2010). Joint music making promotes prosocial behavior in 4-year-old children. Evolution and Human Behavior31, 354-364.
  • ※6 Kawase, S., Ogawa, J. I., Obata, S., & Hirano, T. (2018). An investigation into the relationship between onset age of musical lessons and levels of sociability in childhood. Frontiers in Psychology9, 2244.
  • ※7 河瀬諭. (2014). 合奏における演奏者間コミュニケーション. 心理学評論57, 495-510.
  • ※8 Pearce, E., Launay, J., & Dunbar, R. I. (2015). The ice-breaker effect: Singing mediates fast social bonding. Royal Society Open Science2, 150221.
  • ※9 Trehub, S. E., Becker, J., & Morley, I. (2015). Cross-cultural perspectives on music and musicality. Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences370, 20140096.
]]>
乳幼児の「遊び」は「学び」 https://www.yamaha-mf.or.jp/onkenscope/endotoshihiko1_chapter4/ Tue, 20 Oct 2020 14:25:17 0 河瀬 諭(かわせ さとし) 神戸学院大学心理学部准教授/ヤマハ音楽研究所研究員/感性アナリティカ 代表 https://www.yamaha-mf.or.jp/onkenscope/?p=6510

コンサートや体育のダンスなどで、みんなで音楽に合わせて動いたとき、一体感や高揚感を感じた経験はありませんか?今回は、集団でする音楽にスポットライトを当てて、音楽と身体の動きのつながりの関係や意義をみてきた本シリーズを締めくくります。

集団で音楽に合わせて動くと絆が生まれる

音楽に合わせてグループで身体を動かす意義は、人の進化的な観点も含めて研究が進んでいます※1。このような意義の一つとして他者との絆づくりがあげられます。ブラジルの高校生を対象にした研究では、音楽に合わせて一緒にダンスすることで仲間どうしの親密感や信頼感も増えていました※2。その際に、社会的な絆に関連するといわれるエンドルフィンが増加したとも示唆されています。

写真提供:stockfoto

なお、この研究では、親密感や仲間と同じである感覚は、全身でダンスしているときの方が座って手を動かしているときよりも顕著にみられました。行事や儀式で音楽に合わせてみんなで踊る理由には、こういった仲間どうしの絆やコミュニティ維持の役割もあるかもしれません。

 

音楽に合わせた動きが社会性に及ぼす影響は、幼児にさえ見られる非常に原初的なものともいわれています。1歳児が大人に抱えられた状態でビートルズの曲に合わせて上下に動いた研究があります(実験の様子は下記の動画です)※3 ※4

 

このとき、大人も目の前で子どもに合わせて/合わせないで動きます。その後この子どもは、この大人がものを落とすなどの困っている場面に遭遇します。すると、一緒に合わせて動いたときの方が、より大人を助ける行動をとりました。つまり、音楽に合わせて一緒に動くことが、幼児と大人の絆の醸成に役立っていたのです。

 

一緒に音楽することの意義

誰かと一緒に音楽することは、ほかの協働的活動とは違うのでしょうか。4歳児が対象の実験では、一方のグループは、打楽器を叩きながら池を模したセットの周りをぐるぐる歩きまわるごっこ遊びをしました。もう一方のグループは、同じごっこ遊びですが、打楽器や音楽を伴わずに池のセットを周りました。この活動後に仲間が助けを必要とする状況に陥ったとき、打楽器を使った子どもの方が仲間を助ける行動が多かったのです※5。この結果から、音楽的な活動の方が他者への思いやりをより強く感じたのがみてとれます。

 

このように共に音楽をすることが絆を深めるのはなぜでしょうか。その要因の一つに、音楽演奏や歌唱に伴う身体の動きも考えられます。

 

271名(4-6歳)のヤマハ音楽教室のレッスン生を分析したわれわれの研究でも、幼少期における音楽のグループレッスンと後年の共感性やコミュニケーション行動が関連していました※6。音楽レッスンで一緒に楽器を弾いたり歌ったりするときには身体の動きが自然と同じになりやすいでしょう。また身体の動きは、他の人と演奏を合わせる手がかりとして重要になります※7。音楽活動に伴うさまざまな要素に加えて、このような身体の動きの同調が、他者への共感や一体感につながるのでしょう。

以上の知見をふまえれば、みんなでリズムに合わせて一緒に音楽したり踊ったりすると、無理なく多くの人と絆を感じられるかもしれません。合唱が素早く親密感を醸成した研究のように※8、音楽は初めて会う人どうしが自然に打ち解け合えるきっかけにもなりえます。

したがって、音楽と動きを誰かと分かち合うのは、もしかすると言葉によるコミュニケーションとは別の意味で、人が社会で紐帯(ちゅうたい)を感じながら生きていくヒントをもたらしてくれるのかもしれません※9

 

本シリーズでは4回にわたり、音楽と身体の動きのつながりの意味を科学的な研究に照らして考えてきました。その中でみえてきたのは、音楽とは感情を揺さぶるだけでなく、身体の動きまでも引き起こす強い力をもっているということでした。

写真提供:iStock

そして、グルーヴがある、ノリがいい、この曲をかけると速く走れそう、みんなで踊ると楽しいなどと何気なく口にしている現象も、音楽と身体の動きのかかわりの中で科学的に研究されているのです。これは裏返せば、音楽と身体の動きのつながりをめぐる知見は日常生活に応用できる可能性に満ちているともいえます。

今後はより詳細に音楽と身体の関わりが明らかにされていくでしょう。私もさらに広い分野の方々と連携し、ワクワクする新しい研究をご報告できるよう活動してまいります。

 

  • ※1 Richter, J., & Ostovar, R. (2016). “It don’t mean a thing if it ain’t got that swing”–an alternative concept for understanding the evolution of dance and music in human beings. Frontiers in human neuroscience10, 485.
  • ※2 Tarr, B., Launay, J., Cohen, E., & Dunbar, R. (2015). Synchrony and exertion during dance independently raise pain threshold and encourage social bonding. Biology letters, 11, 20150767.
  • ※3 Laura Cirelli (2014, July 3). Interpersonal Synchrony Increases Prosocial Behavior in Infants – Video Abstract. Retrieved from https://www.youtube.com/watch?v=IaqWehfDm7c
  • ※4 Cirelli, L. K., Einarson, K. M., & Trainor, L. J. (2014). Interpersonal synchrony increases prosocial behavior in infants. Developmental science17, 1003-1011.
  • ※5 Kirschner, S., & Tomasello, M. (2010). Joint music making promotes prosocial behavior in 4-year-old children. Evolution and Human Behavior31, 354-364.
  • ※6 Kawase, S., Ogawa, J. I., Obata, S., & Hirano, T. (2018). An investigation into the relationship between onset age of musical lessons and levels of sociability in childhood. Frontiers in Psychology9, 2244.
  • ※7 河瀬諭. (2014). 合奏における演奏者間コミュニケーション. 心理学評論57, 495-510.
  • ※8 Pearce, E., Launay, J., & Dunbar, R. I. (2015). The ice-breaker effect: Singing mediates fast social bonding. Royal Society Open Science2, 150221.
  • ※9 Trehub, S. E., Becker, J., & Morley, I. (2015). Cross-cultural perspectives on music and musicality. Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences370, 20140096.
]]>
アタッチメントと心の発達 https://www.yamaha-mf.or.jp/onkenscope/endotoshihiko1_chapter3/ Thu, 08 Oct 2020 18:30:26 0 河瀬 諭(かわせ さとし) 神戸学院大学心理学部准教授/ヤマハ音楽研究所研究員/感性アナリティカ 代表 https://www.yamaha-mf.or.jp/onkenscope/?p=6472

コンサートや体育のダンスなどで、みんなで音楽に合わせて動いたとき、一体感や高揚感を感じた経験はありませんか?今回は、集団でする音楽にスポットライトを当てて、音楽と身体の動きのつながりの関係や意義をみてきた本シリーズを締めくくります。

集団で音楽に合わせて動くと絆が生まれる

音楽に合わせてグループで身体を動かす意義は、人の進化的な観点も含めて研究が進んでいます※1。このような意義の一つとして他者との絆づくりがあげられます。ブラジルの高校生を対象にした研究では、音楽に合わせて一緒にダンスすることで仲間どうしの親密感や信頼感も増えていました※2。その際に、社会的な絆に関連するといわれるエンドルフィンが増加したとも示唆されています。

写真提供:stockfoto

なお、この研究では、親密感や仲間と同じである感覚は、全身でダンスしているときの方が座って手を動かしているときよりも顕著にみられました。行事や儀式で音楽に合わせてみんなで踊る理由には、こういった仲間どうしの絆やコミュニティ維持の役割もあるかもしれません。

 

音楽に合わせた動きが社会性に及ぼす影響は、幼児にさえ見られる非常に原初的なものともいわれています。1歳児が大人に抱えられた状態でビートルズの曲に合わせて上下に動いた研究があります(実験の様子は下記の動画です)※3 ※4

 

このとき、大人も目の前で子どもに合わせて/合わせないで動きます。その後この子どもは、この大人がものを落とすなどの困っている場面に遭遇します。すると、一緒に合わせて動いたときの方が、より大人を助ける行動をとりました。つまり、音楽に合わせて一緒に動くことが、幼児と大人の絆の醸成に役立っていたのです。

 

一緒に音楽することの意義

誰かと一緒に音楽することは、ほかの協働的活動とは違うのでしょうか。4歳児が対象の実験では、一方のグループは、打楽器を叩きながら池を模したセットの周りをぐるぐる歩きまわるごっこ遊びをしました。もう一方のグループは、同じごっこ遊びですが、打楽器や音楽を伴わずに池のセットを周りました。この活動後に仲間が助けを必要とする状況に陥ったとき、打楽器を使った子どもの方が仲間を助ける行動が多かったのです※5。この結果から、音楽的な活動の方が他者への思いやりをより強く感じたのがみてとれます。

 

このように共に音楽をすることが絆を深めるのはなぜでしょうか。その要因の一つに、音楽演奏や歌唱に伴う身体の動きも考えられます。

 

271名(4-6歳)のヤマハ音楽教室のレッスン生を分析したわれわれの研究でも、幼少期における音楽のグループレッスンと後年の共感性やコミュニケーション行動が関連していました※6。音楽レッスンで一緒に楽器を弾いたり歌ったりするときには身体の動きが自然と同じになりやすいでしょう。また身体の動きは、他の人と演奏を合わせる手がかりとして重要になります※7。音楽活動に伴うさまざまな要素に加えて、このような身体の動きの同調が、他者への共感や一体感につながるのでしょう。

以上の知見をふまえれば、みんなでリズムに合わせて一緒に音楽したり踊ったりすると、無理なく多くの人と絆を感じられるかもしれません。合唱が素早く親密感を醸成した研究のように※8、音楽は初めて会う人どうしが自然に打ち解け合えるきっかけにもなりえます。

したがって、音楽と動きを誰かと分かち合うのは、もしかすると言葉によるコミュニケーションとは別の意味で、人が社会で紐帯(ちゅうたい)を感じながら生きていくヒントをもたらしてくれるのかもしれません※9

 

本シリーズでは4回にわたり、音楽と身体の動きのつながりの意味を科学的な研究に照らして考えてきました。その中でみえてきたのは、音楽とは感情を揺さぶるだけでなく、身体の動きまでも引き起こす強い力をもっているということでした。

写真提供:iStock

そして、グルーヴがある、ノリがいい、この曲をかけると速く走れそう、みんなで踊ると楽しいなどと何気なく口にしている現象も、音楽と身体の動きのかかわりの中で科学的に研究されているのです。これは裏返せば、音楽と身体の動きのつながりをめぐる知見は日常生活に応用できる可能性に満ちているともいえます。

今後はより詳細に音楽と身体の関わりが明らかにされていくでしょう。私もさらに広い分野の方々と連携し、ワクワクする新しい研究をご報告できるよう活動してまいります。

 

  • ※1 Richter, J., & Ostovar, R. (2016). “It don’t mean a thing if it ain’t got that swing”–an alternative concept for understanding the evolution of dance and music in human beings. Frontiers in human neuroscience10, 485.
  • ※2 Tarr, B., Launay, J., Cohen, E., & Dunbar, R. (2015). Synchrony and exertion during dance independently raise pain threshold and encourage social bonding. Biology letters, 11, 20150767.
  • ※3 Laura Cirelli (2014, July 3). Interpersonal Synchrony Increases Prosocial Behavior in Infants – Video Abstract. Retrieved from https://www.youtube.com/watch?v=IaqWehfDm7c
  • ※4 Cirelli, L. K., Einarson, K. M., & Trainor, L. J. (2014). Interpersonal synchrony increases prosocial behavior in infants. Developmental science17, 1003-1011.
  • ※5 Kirschner, S., & Tomasello, M. (2010). Joint music making promotes prosocial behavior in 4-year-old children. Evolution and Human Behavior31, 354-364.
  • ※6 Kawase, S., Ogawa, J. I., Obata, S., & Hirano, T. (2018). An investigation into the relationship between onset age of musical lessons and levels of sociability in childhood. Frontiers in Psychology9, 2244.
  • ※7 河瀬諭. (2014). 合奏における演奏者間コミュニケーション. 心理学評論57, 495-510.
  • ※8 Pearce, E., Launay, J., & Dunbar, R. I. (2015). The ice-breaker effect: Singing mediates fast social bonding. Royal Society Open Science2, 150221.
  • ※9 Trehub, S. E., Becker, J., & Morley, I. (2015). Cross-cultural perspectives on music and musicality. Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences370, 20140096.
]]>
VUCAな時代を生きてゆく子どもたち https://www.yamaha-mf.or.jp/onkenscope/endotoshihiko1_chapter2/ Thu, 17 Sep 2020 16:22:45 0 河瀬 諭(かわせ さとし) 神戸学院大学心理学部准教授/ヤマハ音楽研究所研究員/感性アナリティカ 代表 https://www.yamaha-mf.or.jp/onkenscope/?p=6414

コンサートや体育のダンスなどで、みんなで音楽に合わせて動いたとき、一体感や高揚感を感じた経験はありませんか?今回は、集団でする音楽にスポットライトを当てて、音楽と身体の動きのつながりの関係や意義をみてきた本シリーズを締めくくります。

集団で音楽に合わせて動くと絆が生まれる

音楽に合わせてグループで身体を動かす意義は、人の進化的な観点も含めて研究が進んでいます※1。このような意義の一つとして他者との絆づくりがあげられます。ブラジルの高校生を対象にした研究では、音楽に合わせて一緒にダンスすることで仲間どうしの親密感や信頼感も増えていました※2。その際に、社会的な絆に関連するといわれるエンドルフィンが増加したとも示唆されています。

写真提供:stockfoto

なお、この研究では、親密感や仲間と同じである感覚は、全身でダンスしているときの方が座って手を動かしているときよりも顕著にみられました。行事や儀式で音楽に合わせてみんなで踊る理由には、こういった仲間どうしの絆やコミュニティ維持の役割もあるかもしれません。

 

音楽に合わせた動きが社会性に及ぼす影響は、幼児にさえ見られる非常に原初的なものともいわれています。1歳児が大人に抱えられた状態でビートルズの曲に合わせて上下に動いた研究があります(実験の様子は下記の動画です)※3 ※4

 

このとき、大人も目の前で子どもに合わせて/合わせないで動きます。その後この子どもは、この大人がものを落とすなどの困っている場面に遭遇します。すると、一緒に合わせて動いたときの方が、より大人を助ける行動をとりました。つまり、音楽に合わせて一緒に動くことが、幼児と大人の絆の醸成に役立っていたのです。

 

一緒に音楽することの意義

誰かと一緒に音楽することは、ほかの協働的活動とは違うのでしょうか。4歳児が対象の実験では、一方のグループは、打楽器を叩きながら池を模したセットの周りをぐるぐる歩きまわるごっこ遊びをしました。もう一方のグループは、同じごっこ遊びですが、打楽器や音楽を伴わずに池のセットを周りました。この活動後に仲間が助けを必要とする状況に陥ったとき、打楽器を使った子どもの方が仲間を助ける行動が多かったのです※5。この結果から、音楽的な活動の方が他者への思いやりをより強く感じたのがみてとれます。

 

このように共に音楽をすることが絆を深めるのはなぜでしょうか。その要因の一つに、音楽演奏や歌唱に伴う身体の動きも考えられます。

 

271名(4-6歳)のヤマハ音楽教室のレッスン生を分析したわれわれの研究でも、幼少期における音楽のグループレッスンと後年の共感性やコミュニケーション行動が関連していました※6。音楽レッスンで一緒に楽器を弾いたり歌ったりするときには身体の動きが自然と同じになりやすいでしょう。また身体の動きは、他の人と演奏を合わせる手がかりとして重要になります※7。音楽活動に伴うさまざまな要素に加えて、このような身体の動きの同調が、他者への共感や一体感につながるのでしょう。

以上の知見をふまえれば、みんなでリズムに合わせて一緒に音楽したり踊ったりすると、無理なく多くの人と絆を感じられるかもしれません。合唱が素早く親密感を醸成した研究のように※8、音楽は初めて会う人どうしが自然に打ち解け合えるきっかけにもなりえます。

したがって、音楽と動きを誰かと分かち合うのは、もしかすると言葉によるコミュニケーションとは別の意味で、人が社会で紐帯(ちゅうたい)を感じながら生きていくヒントをもたらしてくれるのかもしれません※9

 

本シリーズでは4回にわたり、音楽と身体の動きのつながりの意味を科学的な研究に照らして考えてきました。その中でみえてきたのは、音楽とは感情を揺さぶるだけでなく、身体の動きまでも引き起こす強い力をもっているということでした。

写真提供:iStock

そして、グルーヴがある、ノリがいい、この曲をかけると速く走れそう、みんなで踊ると楽しいなどと何気なく口にしている現象も、音楽と身体の動きのかかわりの中で科学的に研究されているのです。これは裏返せば、音楽と身体の動きのつながりをめぐる知見は日常生活に応用できる可能性に満ちているともいえます。

今後はより詳細に音楽と身体の関わりが明らかにされていくでしょう。私もさらに広い分野の方々と連携し、ワクワクする新しい研究をご報告できるよう活動してまいります。

 

  • ※1 Richter, J., & Ostovar, R. (2016). “It don’t mean a thing if it ain’t got that swing”–an alternative concept for understanding the evolution of dance and music in human beings. Frontiers in human neuroscience10, 485.
  • ※2 Tarr, B., Launay, J., Cohen, E., & Dunbar, R. (2015). Synchrony and exertion during dance independently raise pain threshold and encourage social bonding. Biology letters, 11, 20150767.
  • ※3 Laura Cirelli (2014, July 3). Interpersonal Synchrony Increases Prosocial Behavior in Infants – Video Abstract. Retrieved from https://www.youtube.com/watch?v=IaqWehfDm7c
  • ※4 Cirelli, L. K., Einarson, K. M., & Trainor, L. J. (2014). Interpersonal synchrony increases prosocial behavior in infants. Developmental science17, 1003-1011.
  • ※5 Kirschner, S., & Tomasello, M. (2010). Joint music making promotes prosocial behavior in 4-year-old children. Evolution and Human Behavior31, 354-364.
  • ※6 Kawase, S., Ogawa, J. I., Obata, S., & Hirano, T. (2018). An investigation into the relationship between onset age of musical lessons and levels of sociability in childhood. Frontiers in Psychology9, 2244.
  • ※7 河瀬諭. (2014). 合奏における演奏者間コミュニケーション. 心理学評論57, 495-510.
  • ※8 Pearce, E., Launay, J., & Dunbar, R. I. (2015). The ice-breaker effect: Singing mediates fast social bonding. Royal Society Open Science2, 150221.
  • ※9 Trehub, S. E., Becker, J., & Morley, I. (2015). Cross-cultural perspectives on music and musicality. Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences370, 20140096.
]]>
「非認知能力」とは? https://www.yamaha-mf.or.jp/onkenscope/endotoshihiko1_chapter1/ Wed, 16 Sep 2020 18:00:32 0 河瀬 諭(かわせ さとし) 神戸学院大学心理学部准教授/ヤマハ音楽研究所研究員/感性アナリティカ 代表 https://www.yamaha-mf.or.jp/onkenscope/?p=6387

コンサートや体育のダンスなどで、みんなで音楽に合わせて動いたとき、一体感や高揚感を感じた経験はありませんか?今回は、集団でする音楽にスポットライトを当てて、音楽と身体の動きのつながりの関係や意義をみてきた本シリーズを締めくくります。

集団で音楽に合わせて動くと絆が生まれる

音楽に合わせてグループで身体を動かす意義は、人の進化的な観点も含めて研究が進んでいます※1。このような意義の一つとして他者との絆づくりがあげられます。ブラジルの高校生を対象にした研究では、音楽に合わせて一緒にダンスすることで仲間どうしの親密感や信頼感も増えていました※2。その際に、社会的な絆に関連するといわれるエンドルフィンが増加したとも示唆されています。

写真提供:stockfoto

なお、この研究では、親密感や仲間と同じである感覚は、全身でダンスしているときの方が座って手を動かしているときよりも顕著にみられました。行事や儀式で音楽に合わせてみんなで踊る理由には、こういった仲間どうしの絆やコミュニティ維持の役割もあるかもしれません。

 

音楽に合わせた動きが社会性に及ぼす影響は、幼児にさえ見られる非常に原初的なものともいわれています。1歳児が大人に抱えられた状態でビートルズの曲に合わせて上下に動いた研究があります(実験の様子は下記の動画です)※3 ※4

 

このとき、大人も目の前で子どもに合わせて/合わせないで動きます。その後この子どもは、この大人がものを落とすなどの困っている場面に遭遇します。すると、一緒に合わせて動いたときの方が、より大人を助ける行動をとりました。つまり、音楽に合わせて一緒に動くことが、幼児と大人の絆の醸成に役立っていたのです。

 

一緒に音楽することの意義

誰かと一緒に音楽することは、ほかの協働的活動とは違うのでしょうか。4歳児が対象の実験では、一方のグループは、打楽器を叩きながら池を模したセットの周りをぐるぐる歩きまわるごっこ遊びをしました。もう一方のグループは、同じごっこ遊びですが、打楽器や音楽を伴わずに池のセットを周りました。この活動後に仲間が助けを必要とする状況に陥ったとき、打楽器を使った子どもの方が仲間を助ける行動が多かったのです※5。この結果から、音楽的な活動の方が他者への思いやりをより強く感じたのがみてとれます。

 

このように共に音楽をすることが絆を深めるのはなぜでしょうか。その要因の一つに、音楽演奏や歌唱に伴う身体の動きも考えられます。

 

271名(4-6歳)のヤマハ音楽教室のレッスン生を分析したわれわれの研究でも、幼少期における音楽のグループレッスンと後年の共感性やコミュニケーション行動が関連していました※6。音楽レッスンで一緒に楽器を弾いたり歌ったりするときには身体の動きが自然と同じになりやすいでしょう。また身体の動きは、他の人と演奏を合わせる手がかりとして重要になります※7。音楽活動に伴うさまざまな要素に加えて、このような身体の動きの同調が、他者への共感や一体感につながるのでしょう。

以上の知見をふまえれば、みんなでリズムに合わせて一緒に音楽したり踊ったりすると、無理なく多くの人と絆を感じられるかもしれません。合唱が素早く親密感を醸成した研究のように※8、音楽は初めて会う人どうしが自然に打ち解け合えるきっかけにもなりえます。

したがって、音楽と動きを誰かと分かち合うのは、もしかすると言葉によるコミュニケーションとは別の意味で、人が社会で紐帯(ちゅうたい)を感じながら生きていくヒントをもたらしてくれるのかもしれません※9

 

本シリーズでは4回にわたり、音楽と身体の動きのつながりの意味を科学的な研究に照らして考えてきました。その中でみえてきたのは、音楽とは感情を揺さぶるだけでなく、身体の動きまでも引き起こす強い力をもっているということでした。

写真提供:iStock

そして、グルーヴがある、ノリがいい、この曲をかけると速く走れそう、みんなで踊ると楽しいなどと何気なく口にしている現象も、音楽と身体の動きのかかわりの中で科学的に研究されているのです。これは裏返せば、音楽と身体の動きのつながりをめぐる知見は日常生活に応用できる可能性に満ちているともいえます。

今後はより詳細に音楽と身体の関わりが明らかにされていくでしょう。私もさらに広い分野の方々と連携し、ワクワクする新しい研究をご報告できるよう活動してまいります。

 

  • ※1 Richter, J., & Ostovar, R. (2016). “It don’t mean a thing if it ain’t got that swing”–an alternative concept for understanding the evolution of dance and music in human beings. Frontiers in human neuroscience10, 485.
  • ※2 Tarr, B., Launay, J., Cohen, E., & Dunbar, R. (2015). Synchrony and exertion during dance independently raise pain threshold and encourage social bonding. Biology letters, 11, 20150767.
  • ※3 Laura Cirelli (2014, July 3). Interpersonal Synchrony Increases Prosocial Behavior in Infants – Video Abstract. Retrieved from https://www.youtube.com/watch?v=IaqWehfDm7c
  • ※4 Cirelli, L. K., Einarson, K. M., & Trainor, L. J. (2014). Interpersonal synchrony increases prosocial behavior in infants. Developmental science17, 1003-1011.
  • ※5 Kirschner, S., & Tomasello, M. (2010). Joint music making promotes prosocial behavior in 4-year-old children. Evolution and Human Behavior31, 354-364.
  • ※6 Kawase, S., Ogawa, J. I., Obata, S., & Hirano, T. (2018). An investigation into the relationship between onset age of musical lessons and levels of sociability in childhood. Frontiers in Psychology9, 2244.
  • ※7 河瀬諭. (2014). 合奏における演奏者間コミュニケーション. 心理学評論57, 495-510.
  • ※8 Pearce, E., Launay, J., & Dunbar, R. I. (2015). The ice-breaker effect: Singing mediates fast social bonding. Royal Society Open Science2, 150221.
  • ※9 Trehub, S. E., Becker, J., & Morley, I. (2015). Cross-cultural perspectives on music and musicality. Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences370, 20140096.
]]>
研究への思い https://www.yamaha-mf.or.jp/onkenscope/mugitaniryouko2_chapter3/ Tue, 01 Sep 2020 13:26:23 0 https://www.yamaha-mf.or.jp/onkenscope/?p=6333 音楽に合わせてみんなで身体を動かすことの意義 https://www.yamaha-mf.or.jp/onkenscope/kawasesatoshi3_chapter4/ Wed, 19 Aug 2020 14:07:07 0 河瀬 諭(かわせ さとし) 神戸学院大学心理学部准教授/ヤマハ音楽研究所研究員/感性アナリティカ 代表 https://www.yamaha-mf.or.jp/onkenscope/?p=6343

コンサートや体育のダンスなどで、みんなで音楽に合わせて動いたとき、一体感や高揚感を感じた経験はありませんか?今回は、集団でする音楽にスポットライトを当てて、音楽と身体の動きのつながりの関係や意義をみてきた本シリーズを締めくくります。

集団で音楽に合わせて動くと絆が生まれる

音楽に合わせてグループで身体を動かす意義は、人の進化的な観点も含めて研究が進んでいます※1。このような意義の一つとして他者との絆づくりがあげられます。ブラジルの高校生を対象にした研究では、音楽に合わせて一緒にダンスすることで仲間どうしの親密感や信頼感も増えていました※2。その際に、社会的な絆に関連するといわれるエンドルフィンが増加したとも示唆されています。

写真提供:stockfoto

なお、この研究では、親密感や仲間と同じである感覚は、全身でダンスしているときの方が座って手を動かしているときよりも顕著にみられました。行事や儀式で音楽に合わせてみんなで踊る理由には、こういった仲間どうしの絆やコミュニティ維持の役割もあるかもしれません。

 

音楽に合わせた動きが社会性に及ぼす影響は、幼児にさえ見られる非常に原初的なものともいわれています。1歳児が大人に抱えられた状態でビートルズの曲に合わせて上下に動いた研究があります(実験の様子は下記の動画です)※3 ※4

 

このとき、大人も目の前で子どもに合わせて/合わせないで動きます。その後この子どもは、この大人がものを落とすなどの困っている場面に遭遇します。すると、一緒に合わせて動いたときの方が、より大人を助ける行動をとりました。つまり、音楽に合わせて一緒に動くことが、幼児と大人の絆の醸成に役立っていたのです。

 

一緒に音楽することの意義

誰かと一緒に音楽することは、ほかの協働的活動とは違うのでしょうか。4歳児が対象の実験では、一方のグループは、打楽器を叩きながら池を模したセットの周りをぐるぐる歩きまわるごっこ遊びをしました。もう一方のグループは、同じごっこ遊びですが、打楽器や音楽を伴わずに池のセットを周りました。この活動後に仲間が助けを必要とする状況に陥ったとき、打楽器を使った子どもの方が仲間を助ける行動が多かったのです※5。この結果から、音楽的な活動の方が他者への思いやりをより強く感じたのがみてとれます。

 

このように共に音楽をすることが絆を深めるのはなぜでしょうか。その要因の一つに、音楽演奏や歌唱に伴う身体の動きも考えられます。

 

271名(4-6歳)のヤマハ音楽教室のレッスン生を分析したわれわれの研究でも、幼少期における音楽のグループレッスンと後年の共感性やコミュニケーション行動が関連していました※6。音楽レッスンで一緒に楽器を弾いたり歌ったりするときには身体の動きが自然と同じになりやすいでしょう。また身体の動きは、他の人と演奏を合わせる手がかりとして重要になります※7。音楽活動に伴うさまざまな要素に加えて、このような身体の動きの同調が、他者への共感や一体感につながるのでしょう。

以上の知見をふまえれば、みんなでリズムに合わせて一緒に音楽したり踊ったりすると、無理なく多くの人と絆を感じられるかもしれません。合唱が素早く親密感を醸成した研究のように※8、音楽は初めて会う人どうしが自然に打ち解け合えるきっかけにもなりえます。

したがって、音楽と動きを誰かと分かち合うのは、もしかすると言葉によるコミュニケーションとは別の意味で、人が社会で紐帯(ちゅうたい)を感じながら生きていくヒントをもたらしてくれるのかもしれません※9

 

本シリーズでは4回にわたり、音楽と身体の動きのつながりの意味を科学的な研究に照らして考えてきました。その中でみえてきたのは、音楽とは感情を揺さぶるだけでなく、身体の動きまでも引き起こす強い力をもっているということでした。

写真提供:iStock

そして、グルーヴがある、ノリがいい、この曲をかけると速く走れそう、みんなで踊ると楽しいなどと何気なく口にしている現象も、音楽と身体の動きのかかわりの中で科学的に研究されているのです。これは裏返せば、音楽と身体の動きのつながりをめぐる知見は日常生活に応用できる可能性に満ちているともいえます。

今後はより詳細に音楽と身体の関わりが明らかにされていくでしょう。私もさらに広い分野の方々と連携し、ワクワクする新しい研究をご報告できるよう活動してまいります。

 

  • ※1 Richter, J., & Ostovar, R. (2016). “It don’t mean a thing if it ain’t got that swing”–an alternative concept for understanding the evolution of dance and music in human beings. Frontiers in human neuroscience10, 485.
  • ※2 Tarr, B., Launay, J., Cohen, E., & Dunbar, R. (2015). Synchrony and exertion during dance independently raise pain threshold and encourage social bonding. Biology letters, 11, 20150767.
  • ※3 Laura Cirelli (2014, July 3). Interpersonal Synchrony Increases Prosocial Behavior in Infants – Video Abstract. Retrieved from https://www.youtube.com/watch?v=IaqWehfDm7c
  • ※4 Cirelli, L. K., Einarson, K. M., & Trainor, L. J. (2014). Interpersonal synchrony increases prosocial behavior in infants. Developmental science17, 1003-1011.
  • ※5 Kirschner, S., & Tomasello, M. (2010). Joint music making promotes prosocial behavior in 4-year-old children. Evolution and Human Behavior31, 354-364.
  • ※6 Kawase, S., Ogawa, J. I., Obata, S., & Hirano, T. (2018). An investigation into the relationship between onset age of musical lessons and levels of sociability in childhood. Frontiers in Psychology9, 2244.
  • ※7 河瀬諭. (2014). 合奏における演奏者間コミュニケーション. 心理学評論57, 495-510.
  • ※8 Pearce, E., Launay, J., & Dunbar, R. I. (2015). The ice-breaker effect: Singing mediates fast social bonding. Royal Society Open Science2, 150221.
  • ※9 Trehub, S. E., Becker, J., & Morley, I. (2015). Cross-cultural perspectives on music and musicality. Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences370, 20140096.
]]>
研究から見えてきたもの https://www.yamaha-mf.or.jp/onkenscope/mugitaniryouko2_chapter2/ Thu, 30 Jul 2020 11:37:08 0 https://www.yamaha-mf.or.jp/onkenscope/?p=6016