活動リポート:荒井里桜さん(ヴァイオリン)

2020年度の支援対象者で、現在、ローザンヌ高等音楽院バチェラー3年に在籍されている荒井里桜さんにお話しを伺いました。(2021.9.2)

音楽を始めたきっかけ

5歳の時に両親にヴァイオリンを勧められたことがきっかけです。他に水泳やバレエなどもやっていましたが、何となく自分の中でヴァイオリンが一番好きで続けたいと思い、今に至ります。私の場合、小さい頃は自由に弾きたい思考が強かったので、このように弾きなさいというような指示があまり好きではなく、また、練習をすることもあまり好きではなかったので、やめたいと思う時期も無くはありませんでした。しかし、いざやめたときのことを考えると、やはりヴァイオリンを演奏することが大好きでしたし、ヴァイオリンが無くなる自分の生活は想像がつかないと同時に、自分の人生の彩りが一つ欠けてしまう気がして、やめるという選択肢は全く考えられませんでした。

1度目の帰国時に行われたコンサート(1/24東京藝術大学奏楽堂)

ジャニーヌ・ヤンセン先生、スイスでの生活、即興の授業

スイスに来てからまだあまり経っていませんが、今の時点で印象的なことといえば、音楽界の厳しさ、スイスの物価の高さ、学生たちの即興力の高さです。
ジャニーヌ・ヤンセン先生のレッスンでは、レッスンが始まってから終わるまで雑談などは一切なく、2時間近く、とにかく弾き続けるという熱血レッスンなので、毎回終わるころには門下生は皆へとへとになっています。世界を股にかけて第一線で活躍されていることもあり、やはり音楽の構築の仕方や音色へのこだわりなどが本当に緻密で、世界で通用するまでの厳しさを、先生のレッスンを通して改めて痛感しました。と同時に、ポジティブに良い刺激になり、モチベーションや演奏家としての意識が高くなった気がして、自分が居ることができるこの素晴らしい環境にとても幸せを感じています。
スイスは物価が高いことで有名ですが、それは想像以上で、だいたい日本の倍と考えたほうが良さそうです。例えば鶏肉だと日本では300gで300円ほどですが、スイスでは同じ量で700〜800円ほどします。そのため、毎日自炊をしていても、少しでも余分なものを買ってしまうとどんどん高くついてしまうので、気を付けて買うようにしています。

ジャニーヌ・ヤンセン先生とのレッスン風景

試験後に伴奏者やヤンセン先生を囲み、みんなでパーティー!

現在受けている即興の授業では、とにかくたくさんの発見があります。というのも、私は今まで即興の授業というのは受けたことがありませんでしたし、自身で取り組んだ経験もほぼ無かったので、初の経験でした。学生はフランス系の方が多いのですが、7~8割くらいの人が即興の経験があるようで、先生に「このリズムを用いて」や「この形式に基づいて」という大まかなお題を出されるだけで、簡単にその場で曲を作るので最初はとても驚きましたし、自分が当てられた時は焦って頭が真っ白になってしまっていました。技術のレベルなどは全く関係無く、その場の空気感や自分の出したい音などで音楽を作りながら、それを自然に心から楽しんでいる姿はすごく素敵ですし、私も今後、即興のみならずいろいろな場面でそれを体現したいと思いました。
音楽の楽しさや、音楽が世界共通であることをあらためて体感できた経験です。

家から徒歩5分の教会、授業終わりに立ち寄って帰ることもしばしば

学校に行くまでの道は、このように常に山が見えて空気が本当に美味しいです

聴衆が幸せな時間を過ごしてもらえるような演奏家に

今後の近い目標としては、とにかく残りの留学期間で出来るだけ多くのことを吸収し、それを糧に国際コンクールに挑戦をしたいと思っています。ただ結果だけに捉われすぎないように気をつけながら、有意義な経験にするために全力で頑張りたいと思います。その後の目標は、それまでの経験などを生かし、クラシック音楽の魅力、自分にしか作れない音楽を届けること、そしてそれによって聴いてくださっている人たちが幸せな時間を過ごしていただけるような演奏家になりたいです。

音楽院での実技試験後、伴奏者と

家から電車で1時間ほどのイゼルトヴァルトへ、友達と観光しに行きました!

荒井里桜(Rio Arai)さんプロフィール

  • 1999年 東京都出身
  • 2017年 第15回東京音楽コンクール弦楽部門第1位及び聴衆賞
  • 2018年 第87回日本音楽コンクール ヴァイオリン部門第1位、併せてレウカディア賞、鷲見賞、黒柳賞を受賞
  • 2019年 第7回仙台国際音楽コンクール ヴァイオリン部門第6位

東京交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、セントラル愛知交響楽団、仙台フィルハーモニー管弦楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、群馬交響楽団、藝大フィルハーモニア管弦楽団と共演
フェンディが世界展開する「フェンディ ルネサンス–アニマ・ムンディ」プロジェクトのソリストに抜擢
高崎芸術劇場「T-Shotシリーズ」第1弾アーティストとしてリサイタルを行い、同シリーズより2021年1月ソロ・アルバム『RIO ARAI IN CONCERT』をリリース
NHK、Ottavaをはじめ、ラジオやメディアへも多数出演
第17回ベストデビュタント賞受賞

東京藝術大学音楽学部に特待奨学生として在籍、首席卒業するとともに、アカンサス音楽賞及び三菱地所賞受賞、また在学中に福島賞、安宅賞、宮田亮平奨学金を受賞
平成29年度東京藝術大学宗次徳二特待奨学生
現在、ローザンヌ高等音楽院に在籍中
これまでにジェラール・プーレ、永峰高志、澤和樹、山崎貴子、堀正文、玉井菜採の各氏に師事
現在、ジャニーヌ・ヤンセン、パヴェル・ヴェルニコフの両氏に師事

<今後出演予定の演奏会>