活動リポート:島方瞭さん(ヴァイオリン)

2021年度の支援対象者で、現在ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団アカデミーに在籍されている島方瞭さんにお話しを伺いました。

音楽との出会い

幼い頃から、音楽がすぐに手の届くところにあったことを覚えています。
父はオーケストラのホルン奏者、母が自宅でピアノ指導をしていたことで、家では毎日当たり前のように音楽が鳴り響いていました。兄もピアノを弾いていたので、音楽を始めることに抵抗も無く、興味を持つことがすごく自然な環境でした。両親いわく、4歳だった頃に私はテレビに映っていたヴァイオリンに興味深々で、1年間もヴァイオリンを始めたいと言い続け、最初はおもちゃのヴァイオリンを買い与えられましたが、それでも懲りずに習いたいと願い続けた後にやっと始めさせてもらえたようです。今となってはその環境に育ったことが全ての始まりですし、高校入学までの10年間ご指導くださった富岡雅美先生、そして自分たちとは異なる楽器を選んでしまい戸惑いつつもサポートしてくれた両親に感謝が尽きません。自然に溢れた大地、北海道での幼少期は私の原点であり、今でも大切な時間です。

ピアノをたたいて遊んでいます(1歳)

2017年3月 円光寺雅彦指揮、札幌交響楽団とドヴォルザークのヴァイオリン協奏曲を演奏

アンサンブルでの喜びとドイツ留学

桐朋の音楽高校に進学し本格的な勉強をし始めた頃から、人と一緒に演奏すること(室内楽)に大きな喜びと魅力を感じるようになりました。特にリハーサルでは、それぞれのアイディアをこれでもかと時間をかけ共有し創っていく過程は、私が最もワクワクする瞬間でありこれ以上無い音楽的時間に溢れています。一つの作品を、顕微鏡を使って研究するような作業を経て現れるその美しさに心から感動してしまうようです。その頃からアンサンブルを続けていくことが私の大きな目標になっています。

大好きな仲間たちとカルテットの演奏会(名古屋・宗次ホール)

スイスのマスタークラスにて、ブラームスのピアノ三重奏曲第1番を勉強しました

2018年秋、憧れていたヨーロッパで勉強するために来たミュンヘンでの留学も、4年の月日が経とうとしています。もともとはもっと短い期間で帰国するつもりでいましたが、周囲のサポートもあり現在も充実した学びを続けることが出来ています。留学したばかりの頃は語学の壁、文化の違い、音楽の学びにおいても予想していなかった多くのギャップがあり、慣れるためにたくさんの時間が必要でした。ただそんな時も、師匠であるマルクス・ヴォルフ先生の熱心なご指導や、毎週のように行われる素晴らしい演奏会を聴いたり、大好きな音楽に没頭することでだんだんとこちらでの生活が好きになっていきました。ミュンヘンはとても大きな町で、著名な演奏家が毎日のように公演しています。中でも一番衝撃を受けたのは、ゲルギエフ指揮でミュンヘン・フィルのブルックナーの交響曲第5番の演奏会、定期公演3日間の初日に最前列の席で鑑賞しました。圧倒的な音楽のパワーとロマンチックな音色に衝撃が走り、終演後数分間は動けなくなるほどの素晴らしい演奏でした。私はその3日間は全ての公演を聴きに行くほど釘付けで、その後幾度となくミュンヘン・フィルの演奏会に通うようになりました。まさかこのオーケストラで学ぶことになるとは、当時は全く思ってもいませんでした。

スイス・チューリヒで行われたノラ・チャステイン先生のマスタークラス。素晴らしいレッスンで、その後プライベートでもレッスンに通っています

ドイツ・ミュンヘンの旧市庁舎、ここに来ると留学したばかりの頃を思い出します

憧れのオーケストラでの経験

2021年秋から現在にかけて、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団という、夢にまで見たオーケストラで勉強しています。ドイツへ来る一つの理由が「オーケストラを学びたい」でしたので、世界有数のオーケストラが幾つもあるこの国で、とりわけ大好きなミュンヘン・フィルで演奏している事が本当に幸せです。またオーケストラアカデミーという環境の中で、自分を成長させるのにまたとないチャンスだと感じています。
私が在籍しているオーケストラアカデミーでは、月に1、2回の定期公演(1プロジェクト3公演)や月に数回アカデミー生との演奏会に参加し、プロフェッショナルな現場で多くの経験を積むことが出来、数えると1年間で約40回以上の公演に出演させていただきました。演奏会ごとに学びがありますが、ましてや90人を超える規模の大アンサンブルです。指揮者、コンマス、隣の団員さん、他のセクションの皆さんからの目まぐるしい情報や刺激的な瞬間の連続で、終演後はいつも頭がいっぱいになります。

ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団での1月の演奏会(入場制限で25%しか入場出来なかった頃)

先日行われた、シーズンを締め括るオープンエアのコンサートの様子

個人的に影響を受けている音楽家が多くいらっしゃるこのオーケストラは、私にとって学びの宝庫です。そんな皆さんから定期的にレッスンも受講させていただいており、オーケストラを学ぶためにこれ以上無い環境が備わっていると感じています。

今後の目標と将来の夢

アカデミーでの経験をきっかけに、オーケストラ作品やオーケストラの中で演奏することにとても興味を持つようになりました。現場で実際に演奏してみて、これをもし一生続けられたら音楽家として本当に幸せだろうと思っています。さらには、コンサートマスターや首席奏者としてアンサンブルを構築することが出来るよう、今後もスキルアップを目指し経験を積んでいきたいと考えています。
また私は今まで、たくさんの素晴らしい同世代の共演者に恵まれ、彼等が自分の成長を大きく助けてくれています。そんな仲間たちと国際的な室内楽音楽祭を開催し、次世代の音楽家に多くの喜びを届けたい、そんな夢を抱きながら今後も活動して参ります。

ミュンヘン近郊のアルプス山脈ツークシュピッツェ、R.シュトラウスはここでアルプス交響曲を作曲しました

演奏会の合間にアカデミーの仲間と

島方瞭(Ryo Shimakata)さん プロフィール

  • 1997年北海道札幌市生まれ
  • 桐朋女子高等学校音楽科(男女共学)ヴァイオリン科を首席で卒業し、同大学ソリストディプロマコースを修了
  • 第69回全日本学生音楽コンクール高校の部全国大会第2位 及びサントリー芸術財団名器特別賞、第39回霧島国際音楽祭賞などを受賞
  • 2018年からドイツに拠点を移し、ミュンヘン演劇音楽大学及びミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団アカデミーに在籍
  • これまでにヴァイオリンを富岡雅美、佐藤郁子、藤原浜雄、マルクス・ヴォルフの各氏に、室内楽を原田幸一郎、徳永二男、漆原啓子、北本秀樹、山崎伸子、磯村和英、藤井一興の各氏に師事
  • マスタークラスではザハール・ブロン、レジス・パスキエ、ピエール・アモイヤル、ノラ・チャステイン、神尾真由子、諏訪内晶子、堀米ゆず子の各氏の指導を受ける
  • ソリストとして札幌交響楽団や桐朋学園オーケストラなどのオーケストラと共演
  • ジャパン・ナショナルオーケストラ・コアメンバー

【最近の演奏会より】
JNO presents リサイタルシリーズ 島方瞭の世界
8月17日東京・浜離宮朝日ホール
8月21日奈良・100年会館