第4回 ヤマハジュニアピアノコンクール

審査員コメント

青柳 晋(ピアニスト、東京藝術大学音楽学部教授)

本日はご出場おめでとうございます。今日のために、練習と編曲と、それから本番中の集中力と、ものすごい意気込みが感じられ、とても感銘を受けました。(つづけて出場者に向けて個別講評をお話いただきました)

今峰 由香(ピアニスト、ミュンヘン国立音楽大学教授)

まだ若いみなさんですが、プロのピアニストが弾くような、技術的にも内容的にも難しい曲を演奏なさっていました。きっとたくさんの時間を費やして練習されてきたことと思います。
みなさんは何のために練習なさっていますか?おそらく、指がしっかり動くようにとか、フレーズをどう作っていくかとか、先生と一緒に、細やかにたくさんのことを学び、練習されていることと思います。
今はもう亡くなってしまっている作曲家の昔の作品を、楽譜を手掛かりに、ピアノを弾くというテクニックと感情を通して、作曲家の伝えたかった思いを舞台の上で表現し、それをお客様に伝える、そしてお客様と一体となって分かち合う、それが音楽のすばらしさだと思います。
作曲家の思いを研究するには、コンクールの曲だけをさらっているのでは足りません。他の作品を聴いたり、彼らが残した手記を読んだりすることも、これからとても大切になってくることと思います。この先の長い音楽人生を想像しながらこれからも歩んでいってください。素晴らしい才能が豊かな人生とともに開花していくことを願っています。

上原 彩子(ピアニスト、東京藝術大学音楽学部早期教育リサーチセンター准教授)

みなさんの演奏は、私たち大人には演奏できない、心から素直に出てくる、みずみずしくて新鮮で、聴いていて心が洗われるような演奏で、本当に幸せなひと時を過ごさせていただきました。
これからみなさんにすくすくと伸びていってもらいたいな、と思いますが、そのために私がひとつみなさんに望むのは、これから、自分の頭で考えて演奏をしていってもらいたいということです。自分の頭で考えて、というのは、自分の好きなように演奏する、ということではなくて、楽譜を見てこの作曲家はなぜこの音を書いたのかな、とか、なぜここにクレッシェンドがあるのかな、とか、それを自分の頭で考え、想像しながら音楽を作っていくというのが、成長につながっていくのではないかと思います。もしそれが間違っていたら、先生が教えてくれますので、失敗を恐れず、どんどんいろいろな想像を膨らませながら、素敵な音楽を演奏していってもらえたらと思っています。

パスカル・ドゥヴァイヨン(ピアニスト、英国王立音楽院客員教授)

上手に弾く、うまく弾くというのはどういうことでしょうか?もしかしたら、ミスタッチをせず強弱記号に従って正確に弾くこと、と思われるかもしれません。しかしそれだけでは何かが足りないんですね。
必要なのは、作曲家はどんな音楽を求めていたのかを考えてみることです。しかしもう亡くなってしまった作曲家の場合、実際のところはもう誰にもわからないですね。
しかしいろいろなものを読んだり、聴いたりすることで、どんな人だったのか、何を求めていたのかを知ることはできます。そしてその上で、みなさんのファンタジーが必要になるのです。学んだことを通して、きっとこんなことを求めていたんだ、と自分なりの想像力を働かせる必要があります。自分はこうしたい、という理想がはっきり定まってから練習に入り、その理想像にできるだけ近づけるように練習していってほしいと思います。
ですから、ピアノの前に座ったら、うまく弾こうとは思わないでください。音楽をうまく語らせよう、と思うようにしてください。みなさん素晴らしい演奏でした。

松居 慶子(ピアニスト、作曲家)

今日は素晴らしい演奏をありがとうございました。課題編曲を楽しく聴かせていただきました。みなさんにとっては、きっとクラシック曲のレッスンがメインになっているので課題編曲は新鮮なジャンルだったかなと思いますが、みなさんそれぞれにチャレンジされていて、とても嬉しく思いました。
音楽に国境がないように、音楽のジャンルにも国境はないと日頃から思っています。私は自分のコンサートツアーでオリジナル曲をメインに演奏していますが、1曲だけ既成の曲を弾くことがあります。自分の世界観、自分らしさが表現できるようにアレンジするのですが、今日のみなさんの演奏も、楽しんで演奏しているのが音に跳ね返って伝わってきました。
音楽というのは鏡のような存在で、曲に対する愛情やその時の自分は、やはり音に出てしまうものです。みなさん基本はしっかりと弾けていますので、その上に自分の思いが乗っていくと、音の輪郭がはっきりしたり、きらきら輝きはじめたりします。そんなことも意識しながら、これからも楽しんで精進されたら素晴らしいと思います。

山田 武彦(ピアニスト、作編曲家、洗足学園音楽大学教授)

このコンクールには課題編曲の項目がありますが、事務局から提示された楽譜に自分なりの解釈でこの音をつけ足してみよう、こんな風に変えてみよう、とアイデアを膨らませて演奏された方も多くいらっしゃいました。
私はピアノをソロで演奏する以外に、弦楽器、管楽器や声楽の方と一緒にアンサンブルで演奏する機会が多くあります。その時にいつも考えるのは、ここでメロディーが歌われる、というときに、メロディー以外の人たちはどんな風にしてあげたらメロディーを支えることができるだろう、ということです。そうすると、作曲家はメロディーを最優先にして、まわりの音はそれにフィットして盛り立てるように作ったのだな、ということがよくわかるのです。
これはピアノをひとりで弾くときも同じですね。右手にメロディーがあれば、それに対して左手は何をしてあげられるのか、と考えることによって右手が引き立つ、つまりそれは作曲家が一番最初に思いついたものにすごく近いのではないか、と私は考えています。
そのように、いろいろと工夫しながら、いまここで生まれる音楽、というものをこれからもどんどん作っていっていただけたらと思います。

ラルフ・ナットケンパー(ピアニスト、ハンブルク音楽大学教授)

舞台には立たないけれど、その裏で多大な努力をされてきた先生方に、まずは御礼を申し上げたいです。素晴らしい仕事をしてくださいました。それからもちろん、出場者のみなさんとそのご家族にも。ご家族の方は、お子さんの練習を何時間も耳にするのは大変でしたよね。
みなさんは、正しく弾かなければならない、ということに努力されていると思います。しかし、これぞ正しい、という絶対的なテンポや強弱はありません。ホールの大きさも関係しますし、どんなことを表現したいかという作曲家の気持ちも関係してきますし、いろいろな要素に左右されます。
例えばp(ピアノ)は、ここにpと書いてあるからpで弾く、ではなく、悲しいpなのか、夢見るようなpなのか、どんなpなのかによって弾き方が変わってきますね。
最後に、ピアノは歌のような楽器ですから、歌わなくてはなりません。レガートがとても大事です。レガートについて気を配ってみましょう。

  • 五十音順、敬称略

左から 青柳晋、今峰由香、上原彩子、パスカル・ドゥヴァイヨン、松居慶子、山田武彦、ラルフ・ナットケンパー