活動リポート:小嶋 早恵(ピアノ)
2025年度、2026年度の支援対象者で、現在、東京藝術大学大学院に在籍されている小嶋早恵さんにお話しを伺いました。
現在勉強していること
現在、東京藝術大学大学院博士後期課程ピアノ専攻2年に在籍しています。セルゲイ・プロコフィエフのピアノ作品を研究テーマとしながら、演奏家としてのピアノ実技の向上にも取り組んでいます。ピアノ専攻の博士課程では、研究と実技の双方が重要な柱であり、その両面から音楽を深く学んでいます。
師事している有森博先生は、ご自身もロシアで研鑽を積まれたご経験をお持ちで、ロシア音楽に大変精通していらっしゃいます。プロコフィエフの作品についても、レッスンを通して演奏上の課題だけでなく、作品の背景や様式理解にまで踏み込んでご指導くださり、毎回多くの学びを得ています。ロシアでしか入手しにくいプロコフィエフ関連の書籍をご紹介いただくこともあり、研究面でも大きな助けとなっています。また、プロコフィエフと関わりのある作曲家の作品を、先生とご一緒に演奏する機会も設けてくださり、演奏を通して多くのことを学んでいます。
有森博先生と
大好きな通学路、上野公園
また、博士課程では研究だけでなく、実技の向上も非常に重要です。そのため、レッスンではプロコフィエフの作品に限らず、さまざまな時代・様式の作品に多く取り組んでいます。さらに、有森先生はクラスコンサートとして試演会をたびたび開いてくださり、そこでクラスの仲間と互いに演奏を聴き合う機会もあります。
有森先生は長年第一線で活躍されてきたピアニストでもあり、その音楽づくりや演奏家としての姿勢を間近で学べることは、私にとって大きな財産です。演奏技術のみならず、音楽と向き合う姿勢そのものについても多くの示唆をいただいています。
クラスコンサート後、先生のお誕生日祝い
クラスの友人たちとお散歩
音楽を始めたきっかけ
幼い頃、バレエ、日本舞踊、絵画や水泳など、ほかにもさまざまな習い事をしていました。ピアノもその中の一つとして始めました。
母は、学校だけではなく学校の外にも居場所や楽しみを持ち、また自分の好きなことを多く知ることで人生を豊かにしてほしいと考えてくれていたようで、多くの経験をさせてくれました。
そうした中で、自然と長く続いたのがピアノで、今でも弾き続けています。
コンサートでの様子
お気に入りの楽譜屋さん
印象に残った経験・レッスン
これまでを振り返ると、初めての演奏会、初めてのヨーロッパ、初めて海外のオーケストラを現地のホールで聴いた経験など、「初めて」の出来事はどれも強く印象に残っています。その中でも特に忘れられないのが、ヤマハマスタークラスで浦壁信二先生のレッスンを初めて受けたときの経験です。中学3年生の春でした。私のピアノ人生において、大きなターニングポイントだったと言っても過言ではありません。
レッスンを受けたときのことを振り返ると、「ショックだった」という言葉で表すのが一番近いかもしれません。それまでにも多くの先生方からご指導をいただいてきましたが、浦壁先生のレッスンでは、楽譜に書かれている音をどのように読み取り、どのように音楽として表現していくのかを、あらためて一から学んだような感覚がありました。
浦壁信二先生とのレッスン、ドイツ エトリンゲンにて
アーティキュレーションや強弱、楽譜に書かれた細かな記号や指示の読み取り方、その意味の読み取り方、そして指示と意味を結びつけ音として表すための音質の選び方、さらにそれらをもとにどのように音楽を構成していくのか。どれも音楽を学ぶうえでは当たり前のことであるにもかかわらず、私はそのとき初めて、それらが演奏を形づくる大切な基礎であり、根幹であることを身をもって実感しました。
今まで何をしてきたのだろうという悔しさ、呆然とする思い、恥ずかしさがありました。同時に、ずっと知りたかったはずの「何か」に初めて触れたような感覚もありました。これまで感覚的には不足を感じていながら、それが何なのかをはっきりとは捉えられずにいたものが、ようやく見えてきたような気がしたのです。喉から手が出るほど知りたかったのに、ずっと分からなかったことに初めて触れられたような、痒いところに手が届いたような感覚でした。ただ、すぐには実現できないもどかしさもありました。一方で、新しいことを知る喜びや、もっと知りたい、もっと上手くなりたいという期待や楽しみも強く感じました。そして、この先どれほど長い道のりになるのだろうという焦りや不安もありました。そうしたさまざまな気持ちが一度に押し寄せてきた、初めての経験でした。
当時は緊張感と期待を抱きながらレッスンに通っていましたが、そのときにいただいた言葉は、今でも折に触れて思い出します。練習や本番を重ねる中で、何年も経ってようやく「あのとき言ってくださったことはこういうことだったのか」と理解できる瞬間もあります。音楽は終わりのない学びの世界ですが、少しずつできるようになっていく小さな喜びの積み重ねが、今の私を支えているように思います。諦めずに時間をかけてでも、もっと良い音楽家になりたいと思える原動力は、こうした積み重ねから生まれているのではないかと感じています。
仲間と作るコンサート、開演前のホール
弦楽器同期と、演奏会後
今後の目標
まず最も近い目標としては、目の前の本番一つひとつでより良い演奏ができるよう日々勉強と準備を重ねていくこと、数年後には博士論文を完成させ、学位を取得することです。
また、コンクールやセミナーへの参加、欧州留学などを通じて海外での経験を積み、さまざまな音楽や文化に触れながら視野を広げていくことも、近い将来の目標の一つと考えています。
将来的に何を軸に活動していくかは、まだ完全には決めていません。日々の学びや経験を積み重ねながら、自分がどこまでできるのかを試していきたいと思っています。その先にどのような未来が待っているのか、どのような音楽家になっているのかを楽しみにしながら、研鑽を積んでいきたいと思います。
リハーサルの様子
コンサート終演後、みなとみらいホール近くの観覧車にて
小嶋 早恵(SAE KOJIMA)さん プロフィール
1999年 大阪府生まれ、6歳よりピアノと作曲を始める
2018年 ヤマハ音楽院ヤマハマスタークラス特別コース修了
2022年 東京藝術大学音楽学部器楽科、2024年同大学大学院修士課程をいずれも首席で卒業・修了
クロイツァー賞、藝大クラヴィーア大賞などを受賞
2022年 第91回日本音楽コンクールピアノ部門第1位。併せてアルゲリッチ芸術振興財団賞
三宅賞、井口賞、野村賞、河合賞を受賞
国内主要音楽祭に出演するほか、新日本フィルハーモニー交響楽団、藝大フィルハーモニア
管弦楽団、東京フィルハーモニー交響楽団と共演
現在、東京藝術大学大学院博士後期課程ピアノ専攻2年に在籍
有森博、浦壁信二の両氏に師事
- 小嶋 早恵(ピアノ)
- 松本 拓也(ファゴット)
- 児玉 隼人(トランペット)
- 古澤 香理(ヴァイオリン)
- 今井 理子(ピアノ)
- 竹本 百合子(ヴァイオリン)
- 山影 頼楓(ヴァイオリン)
- 大谷 恵理架(クラシックギター)
- 水野 魁政(ピアノ)
- 郡司 菜月(ヴァイオリン)
- 嘉屋 翔太(ピアノ)
- 水越 菜生(ヴァイオリン)
- 森本 隼太(ピアノ)
- 平井 菜々子(ハープ)
- 島方 瞭(ヴァイオリン)
- 佐藤 桂菜(チェロ)
- 片岡 友紀(クラリネット)
- 井上 陽南子(ピアノ)
- 宇野 由樹子(ヴァイオリン)
- 森田 啓佑(チェロ)
- 荒井 里桜(ヴァイオリン)
- 柴田 花音(チェロ)
- 藤原 秀章(チェロ)
- 新田 吏央(マリンバ)