Web広報誌ymf – ヤマハ音楽振興会 https://www-yamaha-mf-or-jp.wp.wolken.service.infosys.yamaha.com/webymf Wed, 10 Dec 2025 01:47:40 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=4.9.12 銭湯でまちかどエクササイズ https://www-yamaha-mf-or-jp.wp.wolken.service.infosys.yamaha.com/webymf/topics/25121101/ Wed, 10 Dec 2025 01:00:43 +0000 https://www-yamaha-mf-or-jp.wp.wolken.service.infosys.yamaha.com/webymf/?p=13486
ふれあい銭湯の外観画像

ヤマハ音楽振興会は、三重大学、三重県御浜町と同紀宝町との共同研究を通し、認知症予防を目的とした音楽体操プログラム「まちかどエクササイズ」を開発し、各地で展開しています。
東京都葛飾区では、月1回、区内9銭湯の開店前に、脱衣所等を利用して、簡単な体操や脳トレ、レクリエーションなどを行う「ふれあい銭湯」を開催。この取り組みの1つ「やさしい音楽体操」にて、「まちかどエクササイズ」が活用されています。

今回は、2025年11月20日(木)に、栄湯(東京都葛飾区高砂)で開催された「やさしい音楽体操」の様子に密着しました。

 

エクササイズの様子

銭湯の営業開始前、男湯の脱衣場に男女15名の参加者が集まり、プログラムがスタートしました。まずは座ったままでできる準備運動で、ゆっくりと体をほぐします。体が温まってきたところで、音楽に合わせた約10分間の有酸素運動へ。「歩く」動作を基本に、リズミカルに体を動かしました。続いてリズムエクササイズ。講師の叩くリズムを手足で真似していきます。初めはバラバラだった動きも、回数を重ねるうちに少しずつ揃い、参加者同士の一体感も高まっていきました。両足を中心とした筋力トレーニング・ストレッチを行った後、音楽に合わせた呼吸・発声トレーニングで口腔機能を鍛え、しっかり声を出していきます。発声トレーニングの勢いそのままに、音楽に合わせて体を動かすリズムステップに移行。簡単なダンスステップでストレス発散にもつながります。続くシングアウトでは、簡単な振付を交えて「こげよマイケル」を合唱し、脱衣場には明るい歌声が響き渡りました。最後はストレッチによるクールダウンで、リラックスした雰囲気の中、参加者は心身ともにすっきりとした表情で終了となりました。

 

プログラムを受講した参加者からは「あっという間の1時間で楽しく運動ができた」「1時間の運動で体が軽くなった」「今日やった運動は家でも実施したい」「普段は体を動かす機会がないので、良い体験だった」といった前向きな声が寄せられました。

 

「ふれあい銭湯」を担当されている葛飾区のご担当者にお話を伺いました。

Q.まちかどエクササイズの導入をご検討いただいた理由は?

A.新しいプログラムを導入したいと考えていたところ、シニア活動支援センターでの講座参加者※1が楽しそうに受講している様子を見て興味を持ちました。特に、音楽に合わせたエクササイズで、楽しみながら口腔機能、運動機能、認知機能の維持・向上に総合的にアプローチできる点に魅力を感じました。

Q.本プログラムを通して期待していることは?

A.参加者が楽しみながらエクササイズの効果を実感し、今後もふれあい銭湯に参加するきっかけとなることを期待しています。また、他のプログラムにはない、声を出しながらの運動を通じて、より多くの方に楽しんでいただけることを願っています。

Q.プログラムを実施してみた感想は?

A.様々な健康づくりの要素を含んだエクササイズを終えた参加者が、楽しかったと満足して帰っていく様子を見て、とても嬉しく思いました。運動量はある程度確保されていますが、動き自体はシンプルでわかりやすく、参加者にとって取り組みやすい内容だと感じています。

 

まちかどエクササイズは、介護予防や地域の活性化に役立つ支援事業などに有効にご活用いただけます。
詳細はWebサイトをご覧ください。
まちかどエクササイズ

※1 葛飾区のシニア活動支援センターにて、数年間に渡りまちかどエクササイズを8回講座として実施。

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「ヤマハ・ガラ・コンサート2025」開催 https://www-yamaha-mf-or-jp.wp.wolken.service.infosys.yamaha.com/webymf/concert/25102301/ Tue, 21 Oct 2025 02:00:58 +0000 https://www-yamaha-mf-or-jp.wp.wolken.service.infosys.yamaha.com/webymf/?p=13478 ヤマハ・ガラ・コンサートは、ヤマハが展開する「ジュニアオリジナルコンサート(JOC)」、「ヤマハエレクトーンフェスティバル(YEF)」、「ヤマハジュニアピアノコンクール(YJPC)」、そしてヤマハマスタークラスなどの音楽教育や音楽普及活動で、その才能を育んだ子どもたちや若き音楽家たちによるコンサートとして、2004年にスタートしました。ソロやアンサンブルに加えて、オーケストラを迎えたプログラムも見どころとなっていて、毎回大きな注目を集めています。21回目となる今年のコンサートは、Bunkamuraオーチャードホール(東京都渋谷区)で2025年9月23日(火・祝)に開催され、今回も多くの来場者を迎えました。

 

コンサートは2024年度のJOC参加作品から始まりました。幕開けを飾ったのは石橋莉真さん(12歳)で、いろいろなかたちをした「いのち」をテーマにした『ふしぎな生命』をエレクトーン・ソロで演奏。オーケストラ・サウンドで、繊細な命や雄大な命など、神秘の世界を描き出していきました。

 

ピアノ・ソロの安立ななみさん(12歳)は、大好きなバレエへの想いを込めて『組曲「バレリーナの思い出」』を披露。やさしさあふれる『1.春のおとずれ』から、エネルギッシュな『2.太陽の下で』、哀愁ある風景を思わせる『3.秋のせつなさ』、透明感ある景色が浮かぶ『4.こな雪の踊り』と、四季に乗せた色彩豊かな組曲を楽しませてくれました。

 

徳永奈優さん(10歳)は、お兄さんの徳永響奏さん(14歳)とピアノの連弾で登場です。徳永さんは仲良しの6人きょうだい。演奏曲の『6人きょうだい へんてこ凸凹自転車レース』はきょうだいのみんなで自転車レースを楽しむ様子を表現した作品。山あり谷あり、時には危険も感じさせる景色もありましたが、いろいろな場所を息ぴったりに駆け抜け、無事にゴール!演奏前のコメントもきょうだいみんなの声が聞こえ、家族の温かさも感じられる演奏でした。

 

ピアノのソロで登場したレレイト泰さん(12歳)は、作曲家や楽曲から受けた感銘からインスピレーションを得た『Rhapsody Unbound』を演奏。“解き放たれ自由になる”という意味が込められたタイトルで、クラシカルな表現の中に熱い情熱が感じられました。飛び立つような生き生きとしたフレーズや、はかなく美しいメロディーの中間部など、変化に富んだ作品で、音とステージを心から楽しんでいるような演奏が印象に残ります。

 

次は海外からの参加者の演奏です。ヤマハで学ぶ生徒は全世界で約44万人。ピアノのマイケル・イーサン・フーさん(15歳)は、インドネシア共和国からガラ・コンサートのために来日しました。エレクトーンのスフェトゥラナ・フリツスィ・オンさん(15歳)とのデュオで、コンチェルト風の『Embracing Memories』を演奏。さまざまな風景が展開される、映画を凝縮したようなドラマチックな楽曲で、パフォーマンス性ある演奏スタイルでも惹き付けました。

 

続いて登場した菅原悠心さん(11歳)は、昨年行われた第9回YJPC ジュニア部門(B部門)の第1位受賞者。今回のコンサートではハイドンの『ソナタ ロ短調 Hob.ⅩⅥ-32 第1楽章』、プロコフィエフの『10の小品 作品12より 第7曲「前奏曲(ハープ)」』の2曲を演奏しました。凛々しく端正なハイドンと、ガラッと雰囲気を変えた華やかなプロコフィエフと、幅のある表現力で観客を感嘆させました。

 

YEF2024 小学生高学年部門第1位受賞者である横塚悠季人さん(13歳)は、受賞曲である吹奏楽の大曲、阿部勇一さん作曲の『交響詩「天地創造」』をエレクトーン・ソロで演奏。荘厳な世界観を、1音ずつ大切に紡ぎ作り上げました。気迫ある演奏は多くの観客を惹き付けます。

 

そして第1部最後は再びJOC作品から、林大士朗さん(14歳)の作品がラインアップ。川や潮、過ぎ行く時など、“流れ”からイメージを膨らませた『Flow』を、林さんのエレクトーンと、ベース、ドラムの共演者とのアンサンブルで奏でました。ピアノを中心にデジタルなサウンドも駆使したナンバーで、3人のアンサンブルで激しい流れが生み出されていく様を堪能しました。

 

第2部は、三ツ橋敬子さんが指揮する「新日本フィルハーモニー交響楽団との共演」のステージ。1曲目はJOC作品から大同咲希さん(14歳)で、『Toccata~風の行方~』をピアノ演奏で共演します。清々しい風が吹くような気持ちのよい演奏で、生き生きとしたカデンツァも観客を惹き込みます。オーケストラとの一体感も素晴らしく、客席からは大きな拍手が贈られました。

 

コンサートの最後のプログラムは、ヤマハ音楽教室の卒業生でヤマハマスタークラス出身の小林海都さんが登場です。演奏の前に、小林さんと、同じく卒業生である指揮者の三ツ橋さんも交えてのトークタイムが設けられました。小林さんは「発表会で、エレクトーンで『弦楽セレナード』を弾いたことは良い経験。大変なことがあっても音楽が救ってくれるので、皆さんにもぜひ続けていってほしい」とメッセージ。三ツ橋さんも「エレクトーンを通してオーケストラに触れたことが、興味の第一歩に。音楽に触れていた経験はずっと寄り添ってくれるので、味わうことを忘れずにいてほしい」と話してくれました。

 

演奏曲のショスタコーヴィチの『ピアノ協奏曲 第2番 へ長調 作品102』は、協奏曲としては短い作りながらワクワクが詰まった楽曲。躍動し続けるような第1楽章から、対照的に厳かに響く第2楽章、そして変化に富んだ第3楽章と、素晴らしいテクニックで聴かせてくれました。オーケストラと一緒にいたずらを仕掛けるような、そんなユニークさを感じさせる演奏でコンサートを締めくくり、多くの観客が笑顔で会場を後にしました。

このコンサートの模様は10月26日(日)、11月1日(土)に、BS朝日でテレビ放送の予定です。

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「ヤマハ音楽奨学支援 奨学生コンサート」開催(2/2) https://www-yamaha-mf-or-jp.wp.wolken.service.infosys.yamaha.com/webymf/concert/25100901/ Fri, 10 Oct 2025 06:00:47 +0000 https://www-yamaha-mf-or-jp.wp.wolken.service.infosys.yamaha.com/webymf/?p=13431 2025年8月31日(日)ヤマハホール(東京都中央区)で開催された「ヤマハ音楽奨学支援 奨学生コンサート」。音楽プロデューサーに大井駿さん(2018年度奨学生)を迎え、2022~2024年度に奨学生として選ばれた5名の若手音楽家が出演しました。
第2回では、コンサート中盤に出演者が語った本日のコンサートへの思いや現在の活動について、また音楽プロデューサー大井駿さん(2018年度奨学生)の終演後インタビューをご紹介いたします。

 


 

竹本百合子さん(ヴァイオリン)

「こうして奨学生コンサートに参加できて嬉しいです。2022年からミュンヘンフィルハーモニー管弦楽団のアカデミー生として研鑚し、現在はベルリン芸術大学大学院の修士課程で学んでいます。コロナ禍で活動が思うようにいかない時期もありましたが、むしろその間に自分とじっくり向き合うことができました。将来は日本国内だけでなくドイツでも活動できるようになりたいと思っています」

 

古澤香理さん(ヴァイオリン)

「ベルリンに住んで8年になります。この秋からはコンサートマスター課程に進むことになりました。ベルリン芸術大学では教授のアシスタントも務めています。これからはオーケストラ、学生の指導、そしてソリストとしての演奏、この3つの軸で活動していきたいと考えています。そしてコンクールにもエントリーしたいです」

 

児玉隼人さん(トランペット)

「現在はドイツのカールスルーエ音楽大学で学んでいて、師事しているラインホルト・フリードリヒ先生のアシスタントとしてフランスやスペイン、スイスでの演奏の機会をいただくなど、充実した日々を過ごしています。将来についてはこれから決めたいと考えていますが、バロックから近現代まで幅広く演奏していきたいです。奨学生として支援していただいていることに感謝しています」

 

水野魁政さん(ピアノ)

「小さい頃は空手や書道などたくさん習い事をしていてピアノもそのひとつでした。その中で、一番やめたくないと思ったピアノの道に進むことを決心しました。2020年にハンガリー政府奨学生として留学しリスト音楽院修士課程、ソリスト・ディプロマ課程、室内楽課程を卒業後、日本に帰国して現在は国内で活動しています。日本国内でも、ソリストとしての活動以外にも他の楽器との共演や新曲の初演に引き続き取り組みたいです。それから本格的に指導にも挑戦してみたいです」

 

嘉屋翔太さん(ピアノ)

「ピアノはソロ(独奏)で音楽が成立するので誰かと合わせる機会が少なく孤独になりがちなので、2台ピアノやアンサンブルでの演奏で本日のこの機会をとても嬉しく思っています。現在は日本各地やドイツ、オランダ、ハンガリーなど海外でも活動の場を広げ、また講師としてピアノの指導にも取り組んでいます。『どんな人にも音楽は開けている』ということをモットーに、多くの人に音楽の喜びを伝えています」

 

終演後、プロデューサーの大井駿さんにお話を伺いました。

――――第1部は、演奏者ご自身が選んだ曲によるソロ演奏で、それぞれの個性が光っていましたね。


舞台上で挨拶する大井さん

自分の良さを発揮できる曲は何か、それはやはりご自身が一番わかっていると思い選曲もお任せしました。広く知られている曲から隠れた名曲までいろいろな作品が並びましたが、どの演奏にもお客さまが熱い拍手をくださって、それぞれの熱演がお客さまの心に響いたことを実感しました。

 

――――第2部ではユニークな選曲でいろいろな作品を楽しませていただきました。

第1部はソロ、第2部はアンサンブルと分けましたが、奨学生の演奏会として、ただの「成果発表会」では聴きに来ていただくお客さまには物足りないなと思ったし、僕自身、面白い演奏会にしたい、とにかくお客さまに楽しんでいただきたいという気持ちが強かったのです。たとえば『鏡のカノン』などは奨学生の演奏会向けの曲ではないかもしれない。でも、あんなにユニークな発想で書かれた曲を素晴らしい演奏で聴けたら楽しいじゃないですか。そうした想いをこめてプログラムを構成しました。

 

――――ラストを飾った圧巻のアンサンブル、『ラプソディー・イン・ブルー』についてお聞かせください。

選曲については他にもいくつかアイデアはあったんですけど、やっぱり華のある曲がいいということでこれに決まりました。
ヴァイオリン2名とトランペット、そして2台ピアノ、という編成はとてもレアだと思うんですが、編曲してくださった横山未央子さんの手腕もさることながら、アンサンブルとしての完成度を上げるために演奏する皆さんが自発的に、自由に、ここはこういう風に弾いたらいいんじゃない?とか、ここはピッチカートよりもアルコがいいかな?とか、意見やアイデアを出しあい、そして今回のような形にまとまったという感じです。
ですから、今日を迎えるまでのプロセスも、とても素敵な時間だったんじゃないかなと思います。

 

コンサートリポートはこちら>>「ヤマハ音楽奨学支援 奨学生コンサート」開催(1/2)

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「ヤマハ音楽奨学支援 奨学生コンサート」開催(1/2) https://www-yamaha-mf-or-jp.wp.wolken.service.infosys.yamaha.com/webymf/concert/25100201/ Tue, 30 Sep 2025 02:00:56 +0000 https://www-yamaha-mf-or-jp.wp.wolken.service.infosys.yamaha.com/webymf/?p=13413 ヤマハ音楽支援制度「音楽奨学支援」は、国内外の音楽文化の発展に寄与することを目指して、将来音楽界の第一線で活躍が期待できる方、具体的な目標を持って音楽を学習している方への支援制度です。1999年にスタートし、これまで多くの奨学生の活動や研鑚への支援を続けてきました。2025年8月31日(日)、支援制度開始以降初めてとなる奨学生によるコンサートがヤマハホール(東京都中央区)で行われました。音楽プロデューサーに大井駿さん(2018年度奨学生)を迎え、2022~2024年度に奨学生として選ばれた5名の若手音楽家が出演しました。

 

第1部は各出演者によるソロ演奏です。
各々がどのような楽曲を選び自身の音楽性を表現するのか、その選曲にも大きな興味が寄せられました。

 


 

コンサートは児玉隼人さん(トランペット)、水野魁政さん(ピアノ)のJ.S.バッハ『協奏曲 ニ長調 BWV972』の演奏から始まりました。ファンファーレのような力強く明るい響きで第1楽章が始まり、高らかに響き渡る音色は強弱の変化に富み、流れるようなスラーがとても印象的でした。続く第2楽章では巧みに変化するピアノの和音に寄り添うように、トランペットがやさしく語りかけるような旋律を奏でます。そして迎えた第3楽章はリズミカルで躍動感のある終楽章にふさわしく、軽快なテンポにのせたフレーズの華やかさと繊細さの双方を確かなテクニックで熱演。トランペットの魅力を存分に発揮してコンサートの幕開けを飾りました。

 

竹本百合子さん(ヴァイオリン)は、H.I.F.ビーバーの『パッサカリア ト短調』を選曲。パッサカリアとは低音主題に基づく変奏曲で、この作品はもともと無伴奏で書かれています。「ソ・ファ・ミ♭・レ」という下行する旋律が低音で繰り返され、その憂いを秘めた旋律は聴く人の心に訴えかけるように切なく響きます。変奏が重なるたびにその世界はどんどん広がり、より深く豊かな描写へと変化を続けます。特に印象的だったのはささやくようなハーモニクスを交えた繊細なフレーズ。お客さまは、物語の続きを紡いでいるかのような一音一音を見守るようにじっくりと聴き入り、会場には心地よい緊張感が漂っていました。

 

続いて、古澤香理さん(ヴァイオリン)、嘉屋翔太さん(ピアノ)は、R.シューマンの『ヴァイオリンソナタ 第2番 ニ短調 作品121より 第1楽章』を演奏。冒頭から聴こえてきたのは、険しく情熱的なハーモニー。シューマンがこだわったそれぞれの楽器のバランスや感情の統一性をふまえ、時には互いに激しく主張し、時には溶け合いながらヴァイオリンとピアノがシンクロしてひとつの音楽を創り上げていきます。中間部では長調への転調で雰囲気が変わり、美しいメロディーに寄り添うようなピアノのフレーズが、ふくよかさ、音の広がりを感じさせてくれました。終わりに向かうにつれて躍動感が増し、さらに立体的になっていく息の合ったアンサンブルが見事でした。

 

水野魁政さん(ピアノ)は、B.バルトークの『3つのチーク県の民謡 BB45b』、F.リストの『ハンガリー狂詩曲 S.244 第15番 イ短調 「ラーコーツィ(ラコッツィ)行進曲」』を選曲。『3つのチーク県の民謡 BB45b』は、ハンガリーの民謡をモチーフにした作品で、独特のハーモニーの中で際立つ細やかな旋律が心地よく、美しく澄みきった音色が印象に残りました。民謡独特のテンポの揺れや即興的な装飾など、この曲ならではの民謡の世界観を自由に、そして緻密に描き出しました。
続く、F.リストの作品では、ハンガリー狂詩曲のびやかなオクターブ、水の流れのような細やかなフレーズ、躍動感のある行進曲のリズムなど、さまざまなタッチを駆使しての豊かな音色は聴きごたえたっぷり。ピアノの魔術師と言われたリストが作品に込めた想いが伝わってくるような、熱のこもったダイナミックな演奏でした。

 

第1部最後の演奏は、嘉屋翔太さん(ピアノ)。P.ヒンデミットの『ピアノ・ソナタ 第2番 ト長調』は、1936年に作曲され、大きく変化しようとする当時の時代の空気をそのまま反映するような、近現代音楽特有の存在感を持っています。冒頭から嘉屋さんの精巧な表現によってそれがさらに増幅され、みずみずしい音がホールいっぱいに響き渡りました。目まぐるしく変化するハーモニーが印象的な第2楽章はデリケートなタッチと大胆さが絶妙に交錯し、観客の心を掴みます。
物悲しい雰囲気の導入部から生き生きとしたロンド形式に展開する第3楽章はタッチや強弱のコントロールにこだわった静と動のコントラストが深く心に残りました。

 

第2部は出演者達がさまざまな組み合わせで演奏するアンサンブル。
この日ならではの選曲、そして普段はなかなか聴くことのできないスペシャルな編成でのプログラムに会場全体の期待が高まります。

 

第2部1曲目は、古澤香理さん(ヴァイオリン)、竹本百合子(ヴァイオリン)さん、大井駿さん(ピアノ)による、B.マルティヌーの『2本のヴァイオリンとピアノのためのソナタ H.213』。ヴァイオリンが軽やかな旋律を奏で、ピアノと掛け合いながらリズミカルな展開でスタート。それぞれが独立した声部を自由に謳歌する場面と、ふとした瞬間に見せるアンサンブルならではの息の合った一体感、そのコントラストが見事です。言葉を交わすような2体のヴァイオリンのフレーズにピアノもスタッカートや繊細なパッセージで応え、休みなく観客を魅了し続けました。それぞれが激しく主張し合いながらも溶け合うスリリングな演奏を堪能したお客さまにとっては、アンサンブルの深い魅力を発見する機会となったことでしょう。

 

続いて、竹本百合子さん(ヴァイオリン)、古澤香理さん(ヴァイオリン)による、W.A.モーツァルトの『2本のヴァイオリンのための4つの鏡のカノン KV Anh.C10.16より 第1番』。「鏡のカノン」とは、1曲の楽譜を1人は通常のように冒頭から、もう1人は楽譜を逆さまにして曲の終わりから読んで2人で同時に演奏する、という遊び心にあふれた小品です。偽作と言われている作品ですが幼い頃から音楽とともにあったモーツァルトのこと、きっと実際にこのような流行の遊びに興じていたことでしょう。普段の演奏会ではなかなかお目にかかれない貴重な選曲とあってプログラムに掲載された楽譜を眺めながら演奏に聴き入るお客さまの姿も見られました。穏やかで優雅な音色に会場全体が和み、笑顔にあふれました。

 

続いて、嘉屋翔太さん(ピアノ)、水野魁政さん(ピアノ)によるアンサンブル。向かい合わせに並べられた2台のフルコンサートピアノで、M.ラヴェルの『ラ・ヴァルス』を演奏しました。重厚な低温の響きがホールを満たし、その中にウィンナ・ワルツのような美しい旋律やリズムが浮かび上がります。切ないメロディーに近代的なハーモニーが重なって新鮮に響き、ソリストとオーケストラが掛け合うコンチェルトのように大胆なアンサンブルが繰り広げられました。ヤマハホールの良質な音響もあいまって、軽快でありながら繊細なニュアンスの心地よさに自然と肩を揺らしながら聴くお客さまもいらっしゃいました。

 

コンサートの大詰めは奨学生5人の全員によるG.ガーシュウィンの『ラプソディー・イン・ブルー』。今回のために特別にヤマハ音楽支援制度奨学生OGの横山未央子さんが編曲を担当したスペシャルバージョンです。大井さんの「肩の力を抜いて楽しんでください」という言葉に会場の期待も高まります。

 

オーケストラ版ではクラリネットの音色が印象的な冒頭のあの旋律を、ミュートを使って音色を変化させたトランペットが濃厚に奏でて始まりました。続いてのフォルティッシモでのトゥッティ(全員が一緒に演奏する)は呼吸をピッタリと合わせ、こちらに迫ってくるようにパワフルです。中間部の(本来の)ピアノソロはヴァイオリンが美しいハーモニーを響かせるなどアレンジの意外性でも大いに観客を楽しませ、アレンジャー横山さんの卓越した手腕が光ります。ホ長調への転調後のゆったりとしたメロディーもヴァイオリンが表情豊かに歌い上げ、トランペットがガーシュウィン独特の半音進行を担います。それを包み込むようなピアノの重厚なサウンドが壮大なエンディングへと導き、感動的なクライマックスとなりました。

次回は、コンサート中盤のトークコーナー、終演後の大井駿さんのインタビューをお伝えします。

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「ヤマハマスタークラス ピアノ特別コース Piano Concert」開催 https://www-yamaha-mf-or-jp.wp.wolken.service.infosys.yamaha.com/webymf/concert/25051501/ Wed, 14 May 2025 03:00:48 +0000 https://www-yamaha-mf-or-jp.wp.wolken.service.infosys.yamaha.com/webymf/?p=13400 M.ロストロポーヴィチ氏の提唱で1988年に開設されて以来、特に優れた才能や資質を持つ子どもたちを対象に指導を行っているヤマハマスタークラス。30年以上紡ぐ歴史の中で多数の音楽家を世に送り出し、高い評価を得ています。このマスタークラスのピアノ特別コースに在籍する7名によるコンサートが、2025年4月13日(日)、ヤマハホール(東京都中央区)で行われました。

 

コンサートの冒頭に登場したのは最年少である堀口奈々美さん(11歳)。スカルラッティ『ソナタ』から、3曲を演奏しました。チェンバロのために書かれた曲であることを意識してか、とても端正な音色を響かせます。明瞭な『ホ長調 K.162』や躍動感あふれる『ハ長調 K.159』など、3曲の表情の違いを、メリハリを持って聴かせてくれました。

 

2番手の山下さくらさん(13歳)は、ショスタコーヴィチ『3つの幻想的舞曲』でその独特の作風を味わい深く楽しませます。リラックスした表情も印象的。ハチャトゥリアン『トッカータ』では情熱的な演奏が惹き付けながら、メロディーをくっきりと浮き上がらせる立体的な演奏を披露しました。

 

グリーグ『抒情小曲集』から『第7集 作品62 第3曲 フランス風のセレナード』と『第8集 作品65 第6曲 トロルハウゲンの婚礼の日』を演奏したのは正木克橙さん(13歳)。ていねいに語るように生み出す音からは、ぬくもりと優しさがこぼれ落ちるよう。楽曲の持つ背景に、ともに想いを馳せる演奏となりました。

 

太田朝日さん(16歳)は、ラフマニノフ『絵画的練習曲 作品33』からの4曲を演奏。繊細な伴奏とそこに絡むようなメロディーで変化に富んだ『第2番 ハ長調』や、複雑な響きとドラマティックな構成の『第5番 ニ短調』など。重厚な音楽を芯のある技術で弾きあげた『第9番 嬰ハ短調』は特に深い研究のあとが感じられる演奏で、客席を魅了し、前半の最後を飾りました。

 

後半は小林真優さん(13歳)によるヘンデル『クラヴサン組曲 第1巻 第5番 HWV430』より『エアと変奏曲(調子のよい鍛冶屋)』から。凛々しい音色を心地良く聴かせて惹き付けます。続くショパン=リスト『6つのポーランドの歌 S.480 R145』より『第1曲 乙女の願い ト長調』では華やかな音色と可憐な表情も見せて、表現力の幅の広さも聴かせてくれました。

 

ショパン『スケルツォ 第1番 ロ短調 作品20』を演奏したのは見木虹心さん(15歳)。悲痛な叫びが込められた楽曲を緻密に描写します。感情移入した演奏から生まれる多彩な音色が、ホールの隅々まで響きわたりました。凛としながらもパッションを感じさせる演奏は、観客をぐっと惹き付けるものでした。

 

最後の演奏となったのは萩原麻理子さん(17歳)。プロコフィエフ『ソナタ 第7番「戦争ソナタ」変ロ長調 作品83』という大曲を披露しました。始まりの主題から緊張感に彩られた演奏で、鮮やかな対比を繰り広げます。変拍子である最終章では打楽器的な表現を前面に押し出し、圧倒的なエネルギーを感じさせました。ダイナミックな演奏に、会場からは感嘆の拍手が惜しみなく贈られました。

7名の演奏はとても真摯で、日頃から深く音楽と向き合っていることが感じられるものばかりでした。客席には同じ年頃のお客さまも多かったので、きっと大きな感動を与えたことでしょう。

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「ヤマハ・ガラ・コンサート2024」開催 https://www-yamaha-mf-or-jp.wp.wolken.service.infosys.yamaha.com/webymf/concert/24103101/ Wed, 30 Oct 2024 00:33:17 +0000 https://www-yamaha-mf-or-jp.wp.wolken.service.infosys.yamaha.com/webymf/?p=13374 年に一度のスペシャルコンサート、「ヤマハ・ガラ・コンサート2024」が9月23日(月・祝)、東京オペラシティ コンサートホール(東京都新宿区)で開催されました。このコンサートはヤマハが展開するジュニアオリジナルコンサート(JOC)、ヤマハジュニアピアノコンクール(YJPC)、ヤマハエレクトーンフェスティバル(YEF)など、ヤマハが展開する幅広い音楽教育・普及活動で、その才能を育む若き音楽家が集い、ソロやアンサンブルだけでなく、毎回オーケストラとの共演やOB・OGなどのゲストを招いた特別なプログラムも注目され、多くの観客が来場しています。

 

今年は本編の前にヤマハエレクトーンコンクールなどで活躍し、現在エレクトーンデモンストレーターとして活動する山﨑雅也さんがこのコンサートのために書き下ろしたオープニング曲「Stories」が披露されました。ヤマハの音楽教室で学び今に至るストーリーをテーマに、バイオリン、チェロ、エレクトーンによるアンサンブルで表現。さわやかなフュージョンタッチの楽曲がコンサートの幕開けを華やかに飾りました。

 

第1部は2023年度のJOC参加作品から。最初にステージに登場したのは松井莉音(まついりお・11歳)さん。エレクトーンのソロでイングリッシュガーデンからイメージを広げた『Hope for tomorrow!!』を演奏しました。エネルギーや生命力といった前向きさを、力強いオーケストラで表現していきました。

 

ピアノの佐藤あかり(さとうあかり・10歳)さんは、広い宇宙に想いを馳せた3曲からなる『組曲「スペースピクニック」』を。星が流れるようなアルペジオや幻想的な音の重なりで表現された流星群など、ピアノの音色の繊細さや可愛らしさを生かしたロマンティックな楽曲を楽しませてくれました。

 

続いて登場した小林蒼太郎(こばやしそうたろう・13歳)さんは、ピアノとフルートのための作品を演奏。念願だったというフルートとの共演で、フランス的なエスプリを意識したオシャレな組曲『フルートとピアノのための幻想曲』を奏でました。『メランコリック』と『スケルツァンド』の2曲からなり、『スケルツァンド』は変拍子で、フルートの音色を惹き立てるメロディが軽やかに響きました。

 

4曲目の『彩雲』は、エレクトーンの山口日菜(やまぐちひな・13歳)さんと、ピアノの若山明花(わかやまめいか・13歳)さんの共作です。演奏前のコメントから声をそろえて、息がぴったりなところを見せていたふたり。演奏もふたりで心を込めて、変化に富んだ楽曲で雲が色鮮やかに変化していく様子を表現していきました。

 

続いては中国からの出演となるオードリー・ジー・チェン(9歳)さん。エレクトーンのソロで演奏した『The Spiritual Mountain』は、中国の伝統楽器の音色をふんだんに取り入れ、オーケストラと融合させた壮大な楽曲。オリエンタルな雰囲気もたっぷりに、雄大な風景を描き出しました。

 

ピアノの鈴木美琴(すずきみこと・16歳)さんはベース、ドラムスとともに、ピアノトリオで登場。『Kaleidoscope』(=万華鏡)のクルクルと変化する模様を、スリリングなセッションで描写していきます。グルーヴに満ちたジャジーな楽曲と即興的な演奏に惹き付けられました。

 

昨年のYJPCのC部門(12歳以下)で第1位を獲得した佐々木悠衣(ささきゆい・12歳)さんは、リスト作曲『巡礼の年 第1年「スイス」S.160より 第3曲「パストラール」 第4曲「泉のほとりで」』を演奏しました。緩急のメリハリある表現力と変化に富んだ音色の弾き分けで、聴衆を楽曲の世界観に引き込みます。

 

赤坂哲(あかさかてつ・14歳)さんは、YEF2023中学生部門の第1位に輝いています。今回はラフマニノフの『ピアノ協奏曲 第1番 嬰へ短調 Op.1 第3楽章』を披露しました。オーケストラの立体感のある音作りと、鍵盤の上を縦横無尽に駆けまわるようなテクニックで圧倒的な演奏を聴かせてくれました。エレクトーンならではのオーケストラの表現を追究している姿が、頼もしく映ります。

 

休憩を挟んで第2部は東京交響楽団(指揮:角田鋼亮さん)との共演で、ステージにはオーケストラがスタンバイ。ピアノで共演したのは西野秀一(にしのしゅういち・16歳)さんで、演奏曲はJOC参加作品の『新幹線~with your Heart~』です。新幹線の走っている姿やホームに滑り込んでくるかっこいい様子を音楽で表現し、未来へ向かって軽やかに走り抜けていくようなポジティブ感あふれる楽曲でした。緊張した様子も見せながらも、オーケストラを率いたソリストとしてしっかり務め、客席からは大きな拍手が送られました。

 

そしてコンサートのフィナーレは、音楽教室卒業生であり、ピアニスト、作・編曲家など幅広く活躍する塩谷哲さんが登場。JOC作品として誕生した名曲『Earth Beat』を、東京交響楽団と共演しました。憂いあるメロディや和声の美しさにゾクゾクさせられ、パーカッションやアンサンブルから生命力あふれるパワーを感じます。塩谷さん自身もオーケストラの演奏を全身で受け止め、楽しんでピアノを奏でている様子がうかがえました。

 

演奏後には同じくヤマハ音楽教室の出身である指揮者の角田さんとマイクを持ち、曲のことや後輩であるコンサート出演者たちについて、自身のヤマハ音楽教室時代の思い出などを語ってくれました。客席にいる教室で学ぶ子どもたちへ向けて、「アンサンブルをすることでコミュニケーション力が培われるので、大事にしながら学んでいってほしい」と角田さん。塩谷さんは「人の音を聴くことが非常に大事。アンサンブルで人の音を聴き、心を合わせられる音楽教室での経験はとても貴重ですので、心に留めておいて」とメッセージを送りました。

その後、コンサート最後の曲となる『Spanish Waltz』の演奏へ。ドラマティックに風景が移り変わるエネルギッシュな楽曲で、塩谷さんも踊るようにピアノを弾き観客を惹き付けます。オーケストラとの一体感ある演奏で圧倒し、コンサートは大興奮に包まれながら終演となりました。こんな演奏がしたい、こんな曲を創りたい……最後は子どもたちの羨望のまなざしとモチベーションがあふれたコンサートとなりました。

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「ヤマハマスタークラス ピアノ特別コース Piano Concert」開催 https://www-yamaha-mf-or-jp.wp.wolken.service.infosys.yamaha.com/webymf/concert/24052301/ Wed, 22 May 2024 06:30:13 +0000 https://www-yamaha-mf-or-jp.wp.wolken.service.infosys.yamaha.com/webymf/?p=13358 1988年にM.ロストロポーヴィチ氏の提唱により、特に優れた才能や資質を持つ生徒を対象に、高い目標を達成するために必要な環境や演奏力向上の機会を提供することを目的に開設された「ヤマハマスタークラス」。ここで世界的な指導者のもとに研鑽を積んだ生徒たちは、国際コンクールで優勝するなど音楽家として数多く羽ばたき、社会的にも高い評価を受けています。この「ヤマハマスタークラス ピアノ特別コース」で学ぶ5名によるコンサートが、4月7日(日)にヤマハホール(東京都中央区)で行われました。ピアニストとしての将来性に富んだ魅力を放つ5人の演奏が、次々と披露されていきました。

 

コンサートは今回出演の最年少、小林真優さん(12歳)の演奏から始まりました。演奏曲はハイドンの『ソナタ第38番 ヘ長調 Hob.XVI:23 作品13-3』で、明るい1楽章に始まり、優しさ溢れる2楽章、そしてハイドンのユーモアある遊び心を楽しむような3楽章を軽快に奏でました。伸びやかな演奏姿がとても印象に残ります。

 

続く太田朝日さん(15歳)は、ラフマニノフの『前奏曲集 作品32』より2曲と、チャイコフスキー『ドゥムカ ハ短調 作品59』を選曲。チャイコフスキーではポーランド民謡独特の重厚感と華やかさを弾き分け、ロシアの壮大な風景をしっかりと描写。細部まで描き込まれた絵画のようで、味わい深い音を楽しませてくれました。

 

荻原麻理子さん(16歳)が選んだのはリストの『スペイン狂詩曲 S.254 R.90』。超絶技巧で知られる名曲を情熱的に演奏しました。入り組んだ難しいリズムや速いパッセージも自分のものにしてしっかりと伝え、きらびやかさと華のある演奏で観客を魅了し続けました。ドラマティックな演奏には、2度のアンコールが起こるほどたくさんの拍手が送られました。

 

後半は見木虹心さん(14歳)の演奏から。チャイコフスキーの『18の小品 作品72』より、変化に富んだ楽曲を鮮やかに表現した『穏やかなおしかり』、オルゴールを表す高音を可憐に響かせた『村のこだま』、速いリズムとフレーズを凜と聴かせた『踊りの情景(トレパークへの誘い)』の3曲を、生き生きと奏でました。ピアノを歌わせるような躍動感ある演奏が、目と耳に焼き付きます。

 

フィナーレを飾ったのは上原悠さん(20歳)で、前衛的な作風で知られるヴェーベルンの『ピアノのための変奏曲 作品27』と、古典的な形式を好むブラームスの『ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ 変ロ長調 作品24』という、対照的とも言える2曲に挑みました。音数の決して多くはないヴェーベルン作品は、一音一音の重みを感じさせるような緊張感ある演奏で惹きつけます。ブラームスでは次々に展開される25の変奏をていねいに紡ぎ、時に力強く、かと思えばささやくような繊細な音を生み出し、濃厚に、清らかに……といくつもの表情を楽しませてくれました。最後のフーガまで約30分という大曲を見事に表現しきった上原さんにも、盛大な拍手が送られていました。

若き音楽家たちの熱演をたっぷりと堪能できた演奏会。1年に一度、研鑽の成果を余すことなく発揮した5人の演奏は、観客を終始魅力し続けるものでした。

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「ヤマハ・ガラ・コンサート2023」開催 https://www-yamaha-mf-or-jp.wp.wolken.service.infosys.yamaha.com/webymf/concert/23101201/ Tue, 10 Oct 2023 09:00:22 +0000 https://www-yamaha-mf-or-jp.wp.wolken.service.infosys.yamaha.com/webymf/?p=13332 ジュニアオリジナルコンサート(JOC)、ヤマハジュニアピアノコンクール(YJPC)、ヤマハエレクトーンフェスティバル(YEF)、ヤマハマスタークラスなど、ヤマハが展開する幅広い音楽教育・普及活動で、その才能を育む若き音楽家たちが年に一度集うスペシャルコンサート「ヤマハ・ガラ・コンサート」。第19回が、9月10日(日)東京芸術劇場コンサートホール(東京都豊島区)で開催されました。

 

コンサートのオープニングは、エレクトーンプレイヤーの渡辺睦樹さんによる特別委嘱作品『「黎明(れいめい)」~トランペットとオルガンのための~』の初演が飾ります。パイプオルガンが荘厳な音色を響かせ、トランペットの透明感あるメロディーとともに徐々に明るさを増していくような“黎明=新しい時代の始まり”を感じさせる楽曲で、渡辺さんのヤマハで学ぶ人たちへ向けた温かな想いが溢れていました。

 

第1部の前半は2022年度のJOC作品からの演奏が続きます。演奏前には自己紹介動画が映し出され、曲への想いなどを聞くことができました。今回最年少の大礒由衣(おおいそゆい・9歳)さんは“夢”をテーマにした『Believing heart ~夢をえがいて~』をエレクトーンで演奏。伸びやかに進んでいくオーケストラ曲で、堂々とした演奏を披露しました。

 

小林直史(こばやしなおと・12歳)さんは、ナポリの舞曲であるタランテラの楽曲『ぼくのタランテラ』。毒グモ・タランチュラに噛まれ毒を抜くために踊り狂っている……そんなちょっと恐ろしいシーンをピアノで表現しました。

 

ミュージカル風の楽しいナンバー『Fancy Cats Overture』を演奏したのはエレクトーンの髙橋美礼(たかはしみれい・12歳)さん。多彩なシーンを次々に繰り広げ、華やかなステージを展開しました。

 

ピアノの堀川奈愛(ほりかわなな・11歳)さんは、色をテーマにした3曲からなる『ソナチネ「COLORS」』を。『Ⅰ.Shiny Yellow』『Ⅱ.MarineBlue』『Ⅲ.Popping Rainbow』で、色鮮やかなイメージが伝わるメロディーや和声を軽やかに紡ぎました。白いドレスに音が映えるようでした。

 

バイオリンとの共演で登場したのは出雲沙弥(いづもさや・15歳)さん。“感情”を意味する『Emotion』で、怒りと優しさという正反対の心模様を映し出します。バイオリンの音色を生かした調和ある美しい響きが、会場を魅了しました。

 

続く石崎夏向(いしざきかなた・11歳)さんは第7回YJPCのB部門(10歳以下)で第1位を受賞。プーランク『15の即興曲より 第1番ロ短調 第15番ハ短調「エディット・ピアフを讃えて」』を味わい深く丁寧に紡ぎ、聴衆を惹きつけました。

 

ニールセンの『交響曲第2番「四つの気質」作品16より第1楽章』というスケールの大きな楽曲を演奏したのは、YEF2022小学生高学年部門で第1位を受賞した増田和輝(ますだかずき・13歳)さん。“短気で移り気、前向きでエネルギッシュ”という気質を、立体感あるオーケストラサウンドでダイナミックに表現しました。

 

そして第1部最後は再びJOC作品から。ライブでは初めてとなるアメリカからの出演を果たしたのは、ランドン・クルーンさん(12歳)。アコーディオン、チェロとともに、スリリングなフェンシングの世界を、3曲立ての組曲『アン・ガルド! ~内なる闘い~』で。不安や緊張、興奮など、音による心理描写に引き込まれてしまいました。

 

そして第2部。ガラコンサートのハイライトとなる“オーケストラとの共演”が今回も実施されました。指揮の大井駿さん率いる東京フィルハーモニー交響楽団とピアノで共演した一人目は、井本在樹(いもとありき・10歳)さん。JOC参加作品『Journey of Discovery ~行こう!新大陸へ』で、大航海時代の胸躍る冒険をオーケストラとともにドラマティックに作り上げました。小さなソリストの堂々たる演奏には、オーケストラメンバーからも温かな拍手が贈られていました。

 

コンサートの最後を飾ったのはヤマハ音楽院ヤマハマスタークラスピアノ特別コースで研鑽を積む上原悠(うえはらゆう・20歳)さん。ラヴェルの『ピアノ協奏曲ト長調』全楽章の演奏で、トリッキーさもある第1楽章から観衆の耳をぎゅっと掴み、静謐なピアノソロを聴かせた第2楽章、テクニカルな第3楽章と、どんなシーンもオーケストラを従えて冷静にピアノを歌わせる姿が印象的。若きピアニストの頼もしい姿に、客席からは賞賛の嵐が巻き起こりました。

コンサートの模様を、 にて放送します。

前編
10月21日(土)13:30-14:00
後編
10月28日(土)14:00-14:30
再放送 前編
11月11日(土)23:30-24:00
再放送 後編
11月25日(土)23:30-24:00

協賛:三井住友海上火災保険株式会社、ヤマハ株式会社

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「ヤマハマスタークラスピアノ特別コースPiano Concert」開催 https://www-yamaha-mf-or-jp.wp.wolken.service.infosys.yamaha.com/webymf/concert/23052501/ Thu, 18 May 2023 03:00:36 +0000 https://www-yamaha-mf-or-jp.wp.wolken.service.infosys.yamaha.com/webymf/?p=13311 特に優れた才能や資質を持つ生徒に、より専門的な指導や演奏力向上の機会を提供するべく、M.ロストロポーヴィチ氏の提唱で1988年に開設されたヤマハマスタークラス。30年以上の歴史の中で世界的な音楽家を多数世に送り出し、高く評価されています。この「ピアノ特別コース」の在籍生による年に一度のピアノコンサートが、2023年4月9日(日)、ヤマハホール(東京都中央区)で開催されました。出演した5人は、それぞれに真摯な姿勢で向き合ってきた日頃の学習成果を、余すことなく披露していきました。

 

コンサートは太田朝日さん(14歳)の、ショパン『夜想曲』で幕開けとなりました。優美なメロディを歌うように響かせたあとは、プロコフィエフの『ピアノソナタ第1番』へ。初期の作品に見られる豊かな情感を、緩急をしっかりと表現したドラマチックな演奏で聴かせていきました。時に見せたダイナミックさも印象に残ります。

 

萩原麻理子さん(15歳)はラヴェルの『クープランの墓』より4曲を披露しました。立体的な響きが瑞々しい『プレリュード』から、『リゴードン』では生き生きとしたテーマと中間部の厳かな雰囲気の対比を繊細に表現していきます。さらに静ひつな『メヌエット』では心地良い緊張感を保ちながら終曲『トッカータ』へと誘い、この曲の魅力であり難関でもある同音連打の技巧的な要求にも的確に答えていきます。テクニックに終始することなく、情緒豊かな音色をたっぷりと味合わせてくれました。

 

3番目にステージに登場したのは新田雛菜さん(18歳)。スクリャービンの作品から3曲を選びました。まず丁寧に1音1音を紡ぐように『2つの詩曲 作品32』の『第一曲』を奏で、その独特の和声感をホールに静かにたゆたわせました。『第二曲』では力強さを感じさせ、その対比の鮮やかさは目を見張るほど。続く『練習曲 作品8-2 嬰へ短調』ではフレーズが呼応するような変化をスリリングに展開し、最後の『ピアノソナタ 第4番 嬰へ長調 作品30』に移ります。2楽章からなるこの曲を、高音域から低音域まできらびやかに表現。熱量のある演奏で観客を惹き込みました。

 

休憩を挟んでの後半は、今回の出演者の中で最年少である高宮奈月さん(10歳)の演奏から。6つの舞曲からなるバッハの『フランス組曲 第3番 ロ短調 BWV814』を、各曲の特徴を明確に浮かび上がらせて演奏していきます。バロックらしい謹厳な雰囲気を表しながら、軽快な終曲まで高い集中力で奏で上げました。

 

そして、コンサートの最後は今回の最年長、上原悠さん(19歳)。ピアノ特別コースでは招聘講師による室内楽などの特別レッスンも行われており、その成果を発揮するショスタコーヴィチ『ピアノ5重奏曲 ト短調 作品57』を、4人の弦楽奏者とともに披露しました。5楽章を通じて弦と絡み合う重厚なピアノの音色を響かせ、芳醇な音の空間を繰り広げます。4人の弦楽奏者を率いる統率力と存在感あるピアノの音色は、ソリストとしての貫禄十分。多彩なピアノ表現で観客を魅了し、最後は“ブラボー!”の声も上がるほど。圧倒的な演奏でコンサートを締めくくりました。

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