ヤマハ音楽支援制度は、優れた音楽能力を有し、将来音楽分野で活躍が期待される方への支援として「音楽奨学支援」(13歳以上~25歳以下)を実施しています。
今回は2019年度の支援対象者で、現在、東京藝術大学音楽学部器楽科 ヴァイオリン専攻1年に在学中の小西健太郎さんにお話を伺いました。
プロフィール:小西 健太郎(コニシ ケンタロウ)
2001年生まれ、東京都出身、4歳よりヴァイオリンをはじめる
2010年 第26回かながわ音楽コンクール最優秀賞
2013年 第15回日本演奏家コンクール第1位
第25回全日本ジュニアクラシック音楽コンクール第1位
第67回全日本学生音楽コンクール小学校の部東京大会第2位・全国大会第2位
2016年 第15回大阪国際コンクールAge-J部門第2位
第26回日本クラシック音楽コンクール第3位(1位なし)
第70回全日本学生音楽コンクール中学校の部東京大会第2位・全国大会入選
2017年 第13回ウイーンベートーヴェン国際ヴァイオリンコンクール第1位(オーストリア)
第2回ナウエンチュフ国際ヴァイオリンコンクール第1位(ポーランド)
岐阜弦楽国際コンクール第1位
2018年7月 チェコ人ピアニスト、ルジェク・シャバカ氏とジョイントリサイタルを開催
東京都教育委員会より児童生徒表彰
東京都北区教育委員会より顕彰北区かがやき賞、みらい賞受賞
東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校を経て、現在、同大学音楽学部器楽科ヴァイオリン専攻1年在学中
これまでに瀬戸瑤子、清水高師、三上亮、尾池亜美の各氏に師事、また国内外のマスタークラスにおいてピエール・アモイヤル、ナムユン・キム、渡辺玲子の各氏に師事
音楽を始めたきっかけ
父が東京交響楽団のヴィオラ奏者で、父方の祖父母は兵庫県でヴァイオリンとピアノの音楽教室を主催しています。そういった家庭環境なので、物心ついたころから、クラシック音楽には当たり前のように自然に接していました。3才のころには、クライスラー作曲『中国の太鼓』が大好きで、曲に合わせて踊っていた記憶が何となくあります。そして、自分では覚えていないのですが、父と同じ形の楽器をやりたいと両親に言い出したらしく、4才の時に祖父からプレゼントされた子供用の8分の1のヴァイオリンで父に手ほどきを受けました。それがヴァイオリンを始めたきっかけです。
印象に残った経験、レッスン
家族が音楽に携わっているので、クラシック音楽に関わる方々と自然にご縁がありました。
小学生から中学時代までご指導いただいた瀬戸瑤子先生は、私の音楽上の土台になる技術と音楽の基礎を作り上げてくださいました。難しいことでも気がつかないうちに出来るようになっていたことが数多くあり、今でも不思議に思います。私が反抗期の時期でも、優しい笑顔と言葉でいつも心に寄り添ってご指導くださいました。
高校からは、清水高師先生に弓の使い方などテクニックをさらに掘り下げて教えていただきました。そして、グローバルにご活躍されている清水先生には、海外での演奏活動や学びのきっかけを作っていただきました。
シンガポール、オーストリア、ポーランドなどのコンクールやセミナーに参加し、視野が広がりました。たとえ言葉がスムーズに通じなくても、私の演奏を喜んでくださった外国の方々がたくさんいらっしゃったことに心から感動しました。特にヨーロッパでは、空気や建物、景色、食べ物などからも、過去の西洋音楽の歴史を肌で感じることができました。海外で勉強したいと心から思うようにもなりました。
影響を受けた音楽家、好きな音楽
小学生のころからマスタークラスでご指導いただいている、ピエール・アモイヤル先生と、コンサートをご一緒させていただいたチェコ人ピアニストのルジェク・シャバカさんのお言葉が、特に心に残っています。アモイヤル先生は、曲を作り上げる時、作曲家の生まれた国や時代、曲の構造等の様式を深く考えて演奏する大切さをお話しになりました。シャバカさんからは、その場にいる演奏家や聴衆の皆で、音楽を共有する幸福感を、彼とのエネルギッシュな共演から学ばせていただきました。そのお二人ともが「育ててくれた親、共演者、作曲家、聴いてくださる人、周りの全てに感謝の気持ちを忘れてはいけない」と、同じことを話されたのがとても印象深いです。
昔から深く豊かな低弦の響きが好きで、1番よく聴くCDは、ロストロポーヴィチとカラヤン指揮ベルリンフィルの、ドヴォルザーク『チェロ協奏曲』です。(ドヴォルザークはどの曲にもとても惹かれるものがあり、伝記を何冊も読みました。)
あとは、ヴァイオリンの昔の巨匠の、一音聴いただけで誰の演奏かわかるような個性的な演奏が好きです。その中でも特に、“ギリギリのテンション”のクリスチャン・フェラス、“個性的そのもの”のルッジェーロ・リッチをよく聴きます。また、イザイ、クライスラー、ラフマニノフのような、作曲家で演奏もした人の自作自演のCDもよく聴きます。今の演奏家では、ピンカス・ズーカーマンの美しく強くて暗めな音が小さいころから好きです。
今後どんな音楽をしていきたいか
高校の定期演奏会でコンサートマスターを務めましたが、これは、皆で音楽を作り上げる喜びを学んだ経験でした。また、民間有志によるオーケストラで、モーツァルト『ヴァイオリン協奏曲第3番』を、ベルリンフィルのコンサートマスター、クシシュトフ・ポロネクさんのソロの代弾きをさせていただきました(本番はオケの中で演奏しました)。あれほど隅々まで美しく端正で素晴らしい響きのモーツァルトは、今まで間近で聴いたことがなく、とても幸せな経験でした。
私は音楽以外でも、スポーツや劇のように、皆で楽しんだり、一緒に作り上げることが好きなのですが、高校時代のこのような音楽体験を踏まえて、オーケストラでの演奏や室内楽などのアンサンブルも、これからたくさんの経験を積み、深めていけるよう勉強していきたいと思っています。
今後チャレンジしたいこと、将来の夢
入学した東京藝大で、まずは専門的な経験や知識も深めたいと思っていますが、今後苦手な語学も克服して、さらに学ぶため海外留学を考えており、国際コンクール等にも鍛錬のために挑戦したいです。
往年の音楽家に憧れているので、私も、自分だけの個性的な音色を追求し、それを持てるようになりたいです。そして、聴いてくださる方に説得力をもって自分の音楽を共有してもらえる音楽家を目指したいと思っています。また、できればドヴォルザークやズーカーマンのように、ヴァイオリンもヴィオラも両方演奏していけるようになりたいと思います。
最後に、今、新型コロナウイルスが世界中に蔓延してしまい大変な状況ですが、自分でも少し思うところがあります。
私は、奨学生に選ばれたことが助けにもなり、海外のセミナーやコンクールに参加したいと考えていたのですが、かなりのことが現在中止になってしまいました。私の父も、仕事の演奏会が立て続けに中止になり、毎晩のように、音楽の必要性についてなどを楽団の人たちと語り合っています。
優しさや悲しみ、喜びなどさまざまな気持ちを共有することができる音楽によって、世の中が困難に立ち向かう勇気を持てると私は思っています。これからも前を向いて、音楽家への道を精進していきたいと思います。
【今後の演奏会予定】
「西本裕矢・小西健太郎duoリサイタル」
日時:2020年9月23日(水) 19:00 開演(18:30開場)
場所:ヤマハ銀座コンサートサロン
第2回 文京えほんパークレット オープニングコンサートに出演 (※イベントは中止となりました)
日時:2020年9月27日(日) 11:00~16:30
場所:小石川モノガタリ (文京区小石川3-26-10)