作曲家・ピアニストとして第一線で活躍を続けている西村由紀江さん。通算40枚目のアルバムとなる「PIANO SWITCH‐BEST SELECTION‐」を本年4月に発表し、ピアノの楽しさ、魅力を存分に味わえる作品として大きな注目を集めています。アルバムのお話のほか、来る6月30日（日）に出演される「ヤマハ・ガラ・コンサート2019」について、また現在のさまざまな活動やヤマハ音楽教室の思い出などをうかがいました。
4月に発売されたアルバム「PIANO SWITCH‐BEST SELECTION‐」は通算40枚目となるそうですね。聴きどころを教えてください。
今回のアルバムは、「ピアノを好きになるスイッチ」という意味でこのタイトルをつけました。これまでの私のオリジナル曲は、聴きやすいピアノサウンドを意識して一定の拍子やテンポのものが主だったのですが、今回は途中でテンポが変わったり、曲調がガラッと変わったり、4拍子が3拍子になったり、マイナーがメジャーになったりと、クラシックの曲などによくある「変化する楽しさ」をたくさん取り入れて、自分が感じるままに創りました。
「ヤマハ・ガラ・コンサート2019」ではアルバムの中から4曲演奏される予定ですが、それぞれの曲のエピソードなどをお聞かせいただけますか。
インタビューに答える西村さん
『黒鍵』はヤマハPSTA（*1）の指導者の皆さんとの交流から生まれた新曲です。子どもたちはなめらかできれいな曲も好きだけれど、そればっかりでも飽きてしまうから、途中で激しいところがあったり、ピアノを打楽器のように叩く場面など、曲の中で変化するところがあるとテンションが上がる。というお話を聞いたんです。そこで、右手も左手も全て黒鍵の音だけを使い、鍵盤と遊ぶような感じでお子さんたちが楽しめる曲になればいいな、という思いを込めてこの曲を書きました。げんこつや、広げた手のひらで黒鍵を打楽器のように弾くところもあるので、お友達同士やきょうだいで一緒に弾いて楽しんでほしいですね。
『あなたに最高のしあわせを』は、手の小さな私にピッタリのサイズで作った曲で、右手は6度のハーモニーがメインになっています。子どもの頃はオクターブがなかなか届かず音域の広い曲を弾くのに苦労しましたが、自分で曲を創る時には弾きやすくてハーモニーがきれいな6度の和音をよく使います。この曲はサビのメロディーのほとんどが6度で創られています。
ルノワールの絵画をイメージして作曲された『少女がみたもの』、そしてヤマハの教材としても広く知られる『オルゴールを聴きながら』の2曲はオーケストラと共演なさるそうですね。
はい。『少女がみたもの』は、もともとチェロの柏木広樹さんと録音した曲です。普段のコンサートではソロで、時には葉加瀬太郎さん達とアンサンブルでと、これまでいろいろな形で演奏してきましたが、今回はフルオーケストラで演奏できるのでとても楽しみです。CDに入っているピアノはポピュラー的なアレンジで弾いていますが、今回のバージョンには私のピアノパートに華やかなフレーズがたくさん加えられていて、ピアノコンチェルト風に仕上がっています。
『オルゴールを聴きながら』はデビュー5年目くらいの頃、ちょうど音楽大学を卒業した時にリリースしたミニアルバムの中の1曲です。ドラムやベースと共演したそれまでの作品とは形を変え、いったん原点に戻ろうという思いで、ピアノと最小限の弦楽器、ギターだけで録音しました。子どもの頃を懐かしく思い出した時にふとメロディーが浮かび、あっという間に作曲した覚えがあります。純粋な気持ちで作った曲を、こうしてヤマハの教材として皆さんに長年親しんでいただけることはとても感慨深いですね。オーケストレーションを担当してくださるヤマハの梶谷修先生は、私がJOC（*2）時代に大変お世話になった方で、私の作品を編曲してくださったり音楽のことでいろいろ相談にのっていただくなどしていました。ガラ・コンサートは今まで何度か客席で観せていただいていたのですが、私もあのステージで弾けたらいいなぁと思っていたこともあり、出演が決まりとても楽しみにしています。
*1 PSTA… レッスン教材「ピアノスタディ」を使用したピアノ個人レッスン指導者のためのサポートシステム。
*2 JOC（ジュニアオリジナルコンサート）… ヤマハ音楽教室で学ぶ15歳以下の子どもたちが、心に感じたことを曲にし、自ら演奏するコンサート。
ヤマハ音楽教室での思い出やライフワークとなっている「学校コンサート」については、続く後編でご紹介します。
西村由紀江 40th Album
「PIANO SWITCH‐BEST SELECTION‐」
DVD付盤：￥4,320(税込) HUCD-10276/B
通常盤：￥3,240(税込) HUCD-10277■収録曲
01.あなたに最高のしあわせを
02.オルゴールを聴きながら
03.objet
04.天空のワルツ
05.夢を追いかけて〜薫のテーマ〜
06.手紙
07.やさしさ
08.雪の路
09.My Classic
10.黒鍵
11.少女がみたもの
12.終わらない旅
13.DREAMS
14.すき
15.時のきらめき
■発売元：株式会社ハッツアンリミテッド
■販売元：エイベックスエンタテインメント株式会社
西村由紀江さんが出演される「ヤマハ・ガラ・コンサート2019」の詳細はこちら＞＞＞
幼少より音楽の才能を認められ、ヨーロッパ、アメリカ、東南アジア諸国への演奏旅行に参加。マエストロや世界の一流オーケストラとも共演し、絶賛を博す。
桐朋学園大学入学と同時にデビュー、美しく切ないオリジナルのメロディーには、幅広い層からの支持がある。
『101回目のプロポーズ』『子ぎつねヘレン』など、ドラマ・映画・CMの音楽を多数担当するほか、TV・ラジオの出演やエッセイの執筆も行う。
年間60本を超えるコンサートで全国各地を訪れる傍ら、ライフワークとして「学校コンサート」や「病院コンサート」、そして被災地にピアノを届ける活動「Smile Piano 500」にも精力を注ぐ。
2016年、アルバム「My Stories」が香港IFPI 「Best Sales Awards 2015」を受賞。
2018年、全国を巡回する「至上の印象派展 」とのコラボレーションアルバムをプロデュースし話題となる。
2019年4月、メジャー通算40枚目となるアルバム「PIANO SWITCH‐BEST SELECTION‐」をリリース。
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