活動リポート:水越 菜生(ヴァイオリン)

2022年度の支援対象者で、現在、桐朋学園大学大学院1年に在学中の水越菜生さんにお話しを伺いました。

音楽を始めたきっかけ、そして全日本学生音楽コンクール

私の母はアマチュアながらヴァイオリンを嗜んでいました。そして母には「憧れの全日本学生音楽コンクールの小学校部門で、いつか娘を優勝させたい」という30年来の夢があり、私がヴァイオリンを始めるのは至って自然な流れでした。幼少期の私は、塾や絵画、チアリーディングといった習い事を17種類掛け持ちしていたのですが、その中でもヴァイオリンはあまり好きではありませんでした。「優勝したら(楽器を)やめて良いよ」という母の言葉と、勝負事には勝ちたいという本来の性分が合わさって原動力となり、小学6年生の時にコンクールで優勝することができました。

Singapore Violin Festival Competitionの表彰式、Yong Siew Toh Conservatory of Musicにて

カーネギーホールでのリサイタル当日のリハーサル風景 、Eri Kang先生と

マキシム・ヴェンゲーロフ先生との出会いと憧れ

私の音楽人生の中で欠かすことができない出来事は、やはりヴェンゲーロフ先生との出会いです。
中学1年生の春、先生が初めて日本でマスタークラスを行うと知り、大慌てで応募しました。その当時私はヴィエニャフスキの『創作主題による華麗なる変奏曲』を勉強していたのですが、YouTube上のヴェンゲーロフ先生の同曲の演奏動画を血眼で繰り返し観ていたからです。ありがたいことに3人の生徒の内の1人に選んでいただき、初めて近くで聴いたヴェンゲーロフ先生の生音は、厚み・深み・繊細さ、どれを取っても素晴らしく、とても衝撃を受けた記憶があります。
その後も先生が日本で行う演奏会では、ある時はソリストとして、またある時は譜めくりとして携わらせていただき、またプライベートでは、江ノ島でのBBQやご家族とディズニーランドにもご一緒させていただきました。

ヴェンゲーロフ先生とのツーショット

「Maxim Vengerov〜福島への祈り〜」に
ソリストで出演させていただいた時のサイト

これは少し面白い後日談なのですが、テレビ番組『題名のない音楽会』に先生が出演されたときの番組収録を観覧に行った時、司会の五嶋龍さんが「初めてのマスタークラスを見に行って、その時ある少女が弾いていた『創作主題』を気に入ったから今度発売するCDに組み込んだんですよ〜」と話されていて大変嬉しくなり、収録後「それ私です!」と楽屋にご挨拶に行った思い出があります。(笑)

モルドバ共和国での経験

高校2年生の時、現地の国立オーケストラと共演するために初めてモルドバ共和国に行きました。
モルドバは旧ソ連の国で、公用語はモルドバ語やロシア語です。物価が安く、食べ物も美味しく、人々は優しいとても良い街でしたが、私の言葉が通じませんでした。初合わせの時は「英語が通じなくて、どうやってオケとコミュニケーションを取ればいいのだろう」と頭を抱えました。ですが団員の方々はとても優しく、私の演奏やつたないボディランゲージから意思を汲み取り、合わせてくださいました。結果演奏会は大成功を収め、団員の方々と泣きながら熱いハグや握手をしたことをよく覚えています。
音楽という非言語コミュニケーションが私たちの心を繋げたことにとても感動し、その時音楽の力というものを強く感じました。

「NHKナゴヤニューイヤーコンサート2018」のカーテンコール

モルドバにて、Filarmonica Nationala Serghei Luncheviciの皆さんと

近い将来に向けての取り組み

“聴いてくださるお客さまの心に響く演奏ができる演奏家になりたい”、は永らく掲げている私の目標です。その実現のためにレパートリーを増やすことは必要不可欠ですし、室内楽の学びを深めることで音楽に多角的にアプローチできるようになりたいと思っています。
今はレパートリーを増やす為に、リサイタルプログラムやコンクール課題曲にとらわれず、積極的に新たな曲にチャレンジするよう励んでいます。

また今年は「Music Dialogue」のDuo Artist2023に選出されたことで竹澤恭子先生、上田晴子先生、大山平一郎先生よりソナタの濃厚なコーチングを受けています。

「Music Dialogue」のDuo Projectコーチング風景
この日は竹澤恭子先生と大山平一郎先生からご指導いただきました

大学院の方でもデュオを組んでおり、今年はソナタの構築から一層拘り、音楽的理解の深い演奏をしていけたらと思っております。その他ピアノ四重奏、弦楽四重奏を初めとした、さまざまな楽器とのアンサンブルも楽しむつもりです。
お客さまや応援してくださる方々への感謝の心を忘れず、常に成長し続けて演奏活動の幅を広げられるよう、精進してまいります。

プロジェクトQ(室内楽セミナー)の本公演後、クァルテット・ジェルメで原田幸一郎先生を囲んで

先日、友人たちと「ウェス・アンダーソンすぎる風景展」に行きました

水越 菜生(Nao Mizukoshi)さん プロフィール

  • 水越 菜生(みずこし・なお)
  • 2000年生まれ、愛知県出身。4歳よりヴァイオリンを始める。
  • 第66回全日本学生音楽コンクール、第12回ベートーヴェン国際コンクール、1st Singapore Violin Festival Competition等、国内外のコンクールで優勝。
  • 2013年のマキシム・ヴェンゲーロフ日本初マスタークラス受講以降、ヴェンゲーロフ・フェスティバルに数多く出演し「Maxim Vengerov & Young Artists」「Maxim Vengerov〜福島への祈り〜」ではソリストをつとめる。
  • また、2017年収録のNHK FM「リサイタル・ノヴァ」で好評を博し「NHKナゴヤニューイヤーコンサート2018」のソリストに選出。
  • 名古屋フィル、中部フィル、愛知室内オーケストラ等と共演。また、五嶋みどりリサイタルプレコンサートに出演のほか、東京・名古屋でリサイタルを重ねている。
  • 2018年にはカーネギーホールでソロリサイタルを開催し、ルーマニアやモルドバ共和国にて現地の国立オーケストラのコンチェルトソリストをつとめる等、海外でも精力的に演奏活動をしている。
  • これまでに故上田明子、加藤瑞木、竹澤恭子、辰巳明子、清水高師、原田幸一郎の各氏に師事。
  • 南山高等学校女子部、桐朋学園大学を経て、現在、桐朋学園大学大学院1年在学中。

最近の演奏会より

今後の演奏会予定

DUO PROJECT字幕解説付き公開リハーサル
  • ①8月9日(水)19時~
  • ②11月3日(金)19時~
  • @中目黒GTプラザホール
DUO PROJECT Concert2023
  • 11月10日(金)19時開演
  • @Hakuju Hall

浜松交響楽団第96回定期演奏会
  • 2024年3月17日(日)14時開演
  • ショスタコーヴィッチ:ヴァイオリン協奏曲
  • @アクトシティ浜松大ホール