落語を聞いたことがあるでしょうか? 一人の落語家が物語のすべての登場人物を語り分けていく古典芸能ですが、この「落語」と「エレクトーン」がコラボレーション。一人でいくつもの楽器の音を演奏してしまうエレクトーンと落語の、世界初!?の共演は、ケーブルテレビ、スカパー、Amazon Prime Videoなどで見られる芸と笑いの専門チャンネル「寄席チャンネル」(運営:株式会社アトス・ブロードキャスティング)の新番組『E~落語』で実現。2019年12月15日(日)、ヤマハ音楽振興会本部(東京都目黒区)で公開収録が行われました。
登場したのは若手落語家で、なんと落語アイドルグループを組んでいる「ちょちょら組」から、三遊亭ぽん太さん、橘家文吾さん、立川かしめさん。そして、エレクトーンはヤマハエレクトーンコンクール2016で第1位を獲得した実力派、山﨑雅也さんが演奏。
三味線や鼓の音色が、どことなく日曜夕方のテレビで聴いたことのあるようなオープニングのオリジナル曲の演奏から、期待いっぱいに始まりました。落語家さんが登場するときの音楽を「出囃子」と言い、一人一人違うのですが、これもしっかりエレクトーンで再現されていて、会場が一気に寄席の雰囲気に変わります。
まず、かしめさんが言葉遊びが楽しい『ん廻し』を。「ん」が入った言葉をひとつ言うごとに美味しい田楽がもらえるので、みんな知恵を絞って頑張るというお話で、山﨑さんは効果音やBGMを奏でるだけでなく、「ん」が入った言葉が出ると、エレクトーンの音色で「Come On!」を連発するなど、ネタにしっかりと絡んで会場を大笑いさせました。
文吾さんはこっけい噺の『磯の鮑』というお話。シーンごとに雰囲気の違う曲が演奏され、セリフの切れ目にはピタッと音が止まったり、物語のラストへの進行に合わせて音量をじわじわと上げていったりと、細やかな演奏が落語を一層伝わりやすく演出していました。落語家さんの間や呼吸の変化にピタッと合わせる即興力も。
ぽん太さんは年の瀬に語られることが多い、人情噺の『芝浜』を好演。海で拾ったお財布がカギになるお話で、山﨑さんはお財布が出てくるシーンでは自身のオリジナル曲『海』のフレーズを奏で、印象付けました。改心した旦那と改心させたおかみさんのやり取りが感動的なクライマックスでは、ドラマティックな音楽が感情をより揺さぶり、涙をぬぐう観客もいたほどでした。
落語の後には、山﨑さんのソロで『芝浜』で使われた『海』の演奏も。曲の解説の最後に「おあとがよろしいようで」なんて言うあたり、すっかり落語家のようでしたが、沖縄の海に想いを馳せ、悠久の風景をエレクトーンならではのミクスチャーサウンドで表現し、エレクトーンの持ち味をしっかりと堪能させてくれました。
4人とも初めての経験ばかりで試行錯誤したとのことでしたが、終わってみれば一様に「楽しかった!」と声をそろえていました。山﨑さんは「相手が楽器ではないだけで、セッションすることに変わりはありません。アクション的な音を増やしてお話に絡んでいくことももっとやってみたいですし、怪談や不思議なお話などにも、挑戦してみたい」と意欲的でした。落語家の皆さんも「エレクトーンのことを知れば知るほどやってもらいたいことが出てきてしまう」と次への構想が止まらない様子。近いうちに、またこのコラボレーションが見られることがあるかもしれません。
この日収録された番組は「寄席チャンネル」で、12月29日(日)20:00~21:00放送予定です。