三重県の御浜町と紀宝町は、紀伊半島の南端に位置し、高齢者人口は30%を越え、“20年後の日本を予見させる”といわれている地域です。このプロジェクトでは、御浜町と紀宝町の65歳以上の高齢者を3つにグルーピング。
<第1群>
※第2群は2012年4月~2013年3月にて実施
対象
65 歳以上、健常者
グループ分け
音楽体操群40名/体操群(音楽なし)40名/脳検査群39名
期間
御浜町 2011年10月~2012年9月
紀宝町 2011年11月~2012年10月
実施頻度・時間
月3~4回、1回60分 年間39回
実施場所
三重県御浜町、同紀宝町
検査内容
頭部MRI/心理検査:知能、記憶、構成、前頭葉機能/血液検査:全血球算定(CBC)、一般生化学/生理検査:心電図、呼吸機能
検査場所
紀南病院(三重県御浜町)
研究内容
健康な高齢者(65歳以上)を音楽体操群(運動+音楽)、体操群(運動のみ)、脳検査群(検査のみ)の3グループに分けて、それぞれ実施前後に上記検査を実施し、運動+音楽の認知機能に対する効果を検証しました。
認知機能改善には「音楽体操」。
今回の実証実験の結果、視空間認知や全般性知能、精神運動速度など複数の項目で、音楽と運動を組み合わせた「音楽体操群」が、「体操群」や「脳検査群」よりも、明らかに良い結果を示しました。健常高齢者の認知機能の維持・改善に、音楽体操が有効であることが分かったのです。既に証明されている<運動>に、<適切な音楽伴奏>が加わったことにより、さらに認知機能への改善効果が高まったことを示しています。
プログラム実施の様子
音楽と体操の組み合わせは有効な手段。
プロジェクトリーダーの産業技術大学院大学の佐藤正之特任教授は語ります。「今回の実験で注目すべき点は、音楽体操群が視空間認知が有意に改善していたことです。実験に活用したヤマハのプログラムは、体操の内容と音楽伴奏が一体化した非常に良いコンテンツです。認知症患者の増加は、国家の喫緊の問題です。治療とともに予防が大切であることは論をまちません」。
全般性知能
「MMSE」とは、見当識、記憶力、計算力、言語能力、図形認知などを検査する知能検査。音楽体操群のみ有意に向上。
視空間認知
「視空間認知検査」とは、物体が三次元空間に占める位置や運動方向、相互関係を把握・認識する能力の検査。音楽体操群が特に有意に向上。
精神運動速度
「RCPM」とは、非言語性の知能検査で、その施行時間は頭の回転の速さを表す。音楽体操群と体操群がともに有意に向上。
根拠のないものは意味がない。
さらに、佐藤正之特任教授は「"○○をすれば認知症が防げる"といった根拠に基づかないキャッチフレーズが巷にあふれる昨今、医学的・科学的にみて妥当な方法を市民に伝えることは、われわれ医師の務めでもあります。そのひとつの有効な手段として、体操と音楽の組み合わせに、今後とも注目していきたいと思います」と述べています。