研究活動支援対象者の活動レポート

自己組織化写像を用いた脳認識された音声の抽出アルゴリズムの開発徳島大学大学院 ソシオテクノサイエンス研究部 西尾芳文 准教授 インタビュー2008年07月15日 取材

回路工学を専門として、普段は大学院生に向けて非線形回路の研究について指導していらっしゃる西尾芳文准教授(以下、西尾准教授)。そんな西尾准教授の「自己組織化写像を用いた脳認識された音声の抽出アルゴリズムの開発」が、2007年度研究活動支援の対象になりました。その研究内容について徳島県徳島市にある徳島大学の一室で、お話しいただきました。

会話しなくても、人の感情や思考が推測できるようなシステムを

徳島大学にある軽音サークルの顧問で、ご自身もギターを弾かれるという西尾准教授。ただ、最初にヤマハの音楽支援制度をお知りになったとき、ご自身の専門である非線形回路工学の研究とは、分野が違うだろうと感じてらっしゃったそうです。そんな西尾准教授が実際に今回の研究を進めようと思われたのは、ある大学院生の熱い想いがきっかけだったといいます。

西尾芳文 准教授

西尾: 自分が研究指導をしていた学生の中に、とても音楽が好きな子がいまして。軽音サークルで部長をしていた彼は、ずっと音楽に関連した研究がしたいと熱望していました。そこで、ヤマハの音楽支援制度を紹介して、「やってみないか」と話を持ちかけたのです。彼の返事は、一も二もなくOK。それをきっかけに、この研究を一緒に始めることにしました。

もともと彼は、自己組織化写像(Self-Organizing Maps:SOM/以下、SOM)についての研究を進めていましたが、音楽と関連した研究テーマに取り組んだことはありません。ですから、今回の研究活動支援のお話は、私たちにとっても良い機会でした。

西尾准教授が掲げた本研究の目的は、人間が持つ感情や思考を、SOMという仕組みを用いて分類し、音声として抽出するための仕組みを開発することでした。ちなみにSOMとは、人間の脳を工学的に簡略化したモデル、ニューラルネットワークの一種です。これを使うことで、複雑なデータの特徴を抽出したり、分類したりできるとのことです。

難解な内容ですが、研究が進めば、会話というコミュニケーションが困難な高齢者や障害者の感情や思考を、推測できるようなシステムの開発につながるのでは、と期待が膨らみます。

西尾: ほかにも脳による音声処理メカニズムの解明や、音楽療法の科学的な裏付けなど、さまざまな効果が期待できる研究です。ただ、すぐに有意な結論が出るとは思えませんし、そのことはこの音楽支援の面接時にお伝えしました。それでも良いということでヤマハさんに認めてもらったことが、自分にとっての勇気になりましたね。