研究活動支援対象者の活動レポート

歯列矯正治療中の管楽器奏者にみられる吹きづらさと痛みに対するオーダーメードタイプのプロテクターの開発北海道大学大学院歯学研究科 飯田順一郎 教授 インタビュー2010年09月16日 取材

北海道大学大学院歯学研究科歯科矯正学教室に所属し、大学病院に来られる患者を診察しながら学生に歯科矯正学を教え、さらにご自身の研究も進めておられる飯田順一郎教授(以下、飯田教授)。そんな飯田教授を中心とする北海道大学病院矯正歯科のみなさまの研究「歯列矯正治療中の管楽器奏者にみられる吹きづらさと痛みに対するオーダーメードタイプのプロテクターの開発」が、2009年度研究活動支援の対象になりました。今回は、その内容について、北海道札幌市北区にある北海道大学病院歯科診療センターの一室で、飯田教授と共同研究者である梶井貴史氏と桜木修氏にお話をお聞きしました。

歯列の矯正治療装置が、若い管楽器演奏者の妨げになっていた

飯田順一郎 教授

梶井貴史 氏

桜木修 氏

「どのような力で歯を動かすのが良いか」を、生物的背景を調べた上で矯正治療に反映するというテーマをはじめ、不正咬合(噛み合わせの悪さ)がなぜ起こるのか、どうすれば多くの人が抵抗なく矯正治療ができるかなどのテーマを研究されている飯田教授、そして北海道大学病院矯正歯科のみなさま。今回の支援対象となった研究テーマは、梶井氏が日々診察している矯正治療中の患者が直面している、ある問題がきっかけだったといいます。

梶井: 矯正治療の患者は小中学生および高校生がメインで、学校のブラスバンド部に所属している子どもたちも数多くいます。そうした子どもたちからよく相談されていたのが、「矯正治療をすると楽器が吹きづらい」という悩みでした。

実はずっと昔から、「管楽器をやっているのですが、矯正して大丈夫でしょうか?」という相談はありました。しかし、これまでは、「そのうち慣れるでしょう」という答えが、矯正歯科界でも一般的だったため、そのまま矯正治療を勧めてきたのです。

ただ、子どもたちの中には、矯正治療がきっかけでうまく管楽器が吹けなくなってしまい、担当楽器を打楽器に変えられたというようなケースも少なくありませんでした。そうした患者の声を聞いて、矯正治療装置が管楽器演奏の妨げになってはいけないと考え始めたのが、この研究の発端です。

また、従来の矯正治療装置は、装着すると管楽器が吹きづらいだけではなく、痛さを伴うケースが多かったといいます。

梶井: こうした吹きづらさや痛みの話は、これまで感覚値で議論されることが多く、実際にどの程度なのかを数値化したことはありませんでした。そこで、実際に矯正治療している患者にアンケートを実施して、定量的に判断することにしたのです。