研究活動支援対象者の活動レポート

保育者の歌声に求められる「声質」に関する実験的研究学習院大学 文学部 教育学科 嶋田由美 教授 インタビュー2014年08月22日 取材

保育者の歌声のあり方について、検討する材料を提供していきたい

今回の研究は、まだ初期段階であり、これからさらに実験参加者の数を増やし、より多くのデータを収集してその精度を高めたいと嶋田教授と志民教授は話します。

嶋田:これからは、全体的に実験参加者の年齢や職業などのバリエーションを増やしていきたいと考えています。特に子どもが8種類の音源を聴いてどのように受け止めているのか、条件の統制を工夫して詳しく調べていきたいですね。また、現役の保育者を対象とした実験も実施したいと考えています。主任クラスの保育者が求める声質と、若い世代の保育者が好む歌声は違うと思いますし、所属する幼稚園・保育園・学校がどのような音楽教育の方針なのかによっても変化が生じるのではないかと推察しています。そうしたことも実験で明確にしていきたいです。

志民:今回の実験後にある学会で結果と考察を発表したところ、音源の加工について「どういう仕組みで音源を変化させているのかを明確にするべき」という指摘がありました。そのことを受けて、今後はどのように音源を加工しているかが分かるコンピューターソフトを使用することはもちろん、音源の長さももう少し短めにして、さらに音源加工のクオリティーを高めていく方針です。

(右から)嶋田由美教授と志民一成教授

子どもたちは、親や保育者の声を聴いて育ちます。そのため、周りにいる大人の声が、その後の子どもたちの価値観に与える影響は少なくありません。今回の研究が、大人が子どもにより良い影響を与えられるようになるための端緒になれば、と3人は願っています。

嶋田:この研究が、冒頭でお話しした保育者のコンプレックス解消につながってほしいと思います。また、子育て中のお母さんの自信にもつながってほしいですね。自分の声に子どもが喜んでいると思えれば、自信を持って歌を歌ってあげることができますから。同じように、お父さんの声でもうまく抑揚をつければ子どもに喜んでもらえることも伝えていきたいです。

3人はこの研究を通じて、保育者の歌声のあり方について考えるための材料を提供していきたいと考えています。そして、さらに研究が進むことで、音楽教育だけではなく、日常的なコミュニケーションにも研究成果を活かせるようになれば、と願っています。

支援対象者プロフィール(取材時)

嶋田由美 教授

学習院大学 文学部 教育学科

支援対象研究

課題名
保育者の歌声に求められる「声質」に関する実験的研究
研究期間
平成25年4月~平成26年3月