研究活動支援対象者の活動レポート

乳児の歌唱聴取における脳反応とその発達理化学研究所 脳科学総合研究センター 言語発達研究チーム 山根直人 研究員 インタビュー2014年01月09日 取材

理化学研究所 脳科学総合研究センター 言語発達研究チームの一員として、特に乳児の音声発達について研究を進めている山根直人研究員(以下、山根研究員)。「音の弁別」、「単語の切り出し」、「言葉と社会性と発達の関係」など、さまざまなテーマに沿った実験を行っておられます。そんな山根研究員の研究「乳児の歌唱聴取における脳反応とその発達」が、2012年度研究活動支援の対象になりました。今回はその内容について、埼玉県和光市にある理化学研究所で、山根研究員にお話をお聞きしました。

乳児は歌を、言葉として聴いているか、音楽として聴いているか

大学時代に専攻していた教育課程で、子どもの発達とは無関係に進められる音楽教育への疑問から、音声発達について興味を持ち始めたという山根研究員。理化学研究所の言語発達研究チームに所属し、乳児の音声発達に関するさまざまな研究を進めているうちに、あるテーマに着眼するようになったといいます。

山根:これまで乳児の音楽に関する研究といえば、楽器の音を使った実験が一般的でした。しかし、乳児が楽器だけの音を耳にする機会はさほど多くありません。それより、一番身近に聞いている親の歌いかけ・語りかけを乳児がどのように聴いているのか。そのことに関心を持つようになったのです。

また、私はこの言語発達研究チームで、言葉の韻律について集中的に研究しているのですが、その際に、言葉のメロディーと音楽のメロディーはどう違うのか、言葉を発音するときの高低・アクセントと音楽のメロディーはどう違うのか、また、それが発達によってどのように変化するのか、について興味を持つようになりました。

山根直人 研究員

乳児のときから歌は音楽ととらえられているのか、それとも言葉にメロディーが乗ったものととらえられているのか。このテーマで研究を進めるに当たって山根研究員を後押ししたのが、同じチームに所属する研究者の実験と、ヤマハ音楽支援制度でした。

山根:日本語には「雨と飴(あめ)」のように、音の高低やアクセントによって意味が異なる言葉がありますが、生後4カ月の乳児と10カ月の乳児はどちらもこの違いを理解していること、ただし、4カ月の乳児が左脳と右脳の両方を活用して言葉を理解しているのに対して、10カ月の乳児は左脳を優位に動かして理解していることが、同僚の研究によって分かっていました。

そこで私も、近い月齢の乳児を対象にすることで、言葉の韻律に対する認識と、旋律と言葉を合わせた歌に対する認識を比較できると考えました。

また、外部の支援制度に応募するには研究分野を明確にする必要があるのですが、私の研究内容は音楽学・教育学など、なかなか理解を得にくい分野です。このような私の研究を寛大に受け入れてくれるのは「ヤマハ音楽支援制度」だけでした。