研究活動支援対象者の活動レポート

テンポ変化の認識およびテンポ変化が聴き手に与える印象に関する研究同志社大学 理工学部 山本誠一 教授 インタビュー2017年06月22日 取材

音声言語、つまり話し言葉の処理や認識を専門分野とし、同志社大学理工学部でも音声認識技術や自然言語処理技術、外国語能力測定技術の研究を進めている山本誠一教授(以下、山本教授)。そんな山本教授の研究「テンポ変化の認識およびテンポ変化が聴き手に与える印象に関する研究」が、2016年度研究活動支援の対象になりました。今回は、この研究テーマに着目したきっかけと、その研究内容について、京都府京田辺市にある同志社大学京田辺キャンパスで、お話をうかがいました。

演奏者のテンポ変化に対する意識と、聴き手の印象への影響を探る

2005年から同志社大学に移り、音声認識や日本人の英語能力向上に向けた研究をしていた山本教授。同大学の名誉教授であり、音声言語や音楽情報処理に造詣が深い柳田益造名誉教授(以下、柳田名誉教授)から研究室を引き継いたことをきっかけに、音楽情報処理の研究にも携わることになりました。そこから、英語能力向上の研究と、楽器の演奏スキルの向上を測定する研究において、比較的近い手法を活用できるかどうか。初級~中級の演奏家がうまいと感じる演奏を、インストラクターが主観的に評価した場合、結果は合致するのかなど、いくつかの研究を進めてきました。

山本:別の研究で、ピアノの初級・中級・上級の演奏家に、定期的なタイミングで和音を弾き続けてもらう、という実験をしたのです。そのとき、演奏経験の少ない人でも、同じ強さ・同じタイミングで和音を弾くことができました。ところが、上級の演奏者は例えば「ド・ミ・ソ」という和音なら、一番上の「ソ」を弾くタイミングがわずかに早くなったのです。ほぼ同時に聞こえるのですが、実際はミリセカンド(1000分の1秒)の単位で速い。このことを音楽大学の教師に話したところ、メロディーラインとなる音を早く弾いたほうが響きが良い、うまく聞こえるというのです。このことをきっかけに、演奏者はタイミングについてどのように考えているのか、興味を持つようになりました。

実際の演奏でも、楽譜でテンポ変化が明確に指定されていることもあれば、演奏者が情感を込めることで無意識にテンポを変化させていることもあります。このように、無機質的な演奏を避けるという意味でも、テンポ変化は重要な音楽表現の1つとして広く行われてきました。山本教授と柳田名誉教授は、このテンポ変化について新たに研究を進めることにしました。

山本誠一 教授

山本:ほとんどの楽曲で、演奏者は音楽性を考慮して、一定のスピードでピアノを弾くことはありません。では、そのテンポの変化は、聴いている人にどのような印象を与えているのか。演奏者はテンポ変化について、どの程度意識して演奏しているのかを、研究してみたいと考えました。

これまで音楽関連の支援制度に関する知識が少なかったという山本教授ですが、柳田名誉教授からの薦めによって「ヤマハ音楽支援制度」へ応募。すでに先行して進めていたこの研究を、2016年度の支援制度の助成により、さらに深く掘り下げました。