音楽支援事業開く
活動リポート:山影 頼楓(ヴァイオリン)

2023年度の支援対象者で、現在ウィーン国立音楽大学に在籍の山影頼楓さんにお話しを伺いました。
現在勉強していること
私は、ウィーン国立音楽大学のクライスラー・インスティテュート(弦楽器科)ヴァイオリン専攻科の第6学年に在籍しています。
ウィーン国立音楽大学の弦楽器科は、4年間+2年間の計6年間のカリキュラムで、特に最後の2年間は室内楽やオーケストラなどの専科を選び、より専門的な学びを深めます。
私は現代音楽を選択し、日常の実技レッスンではバッハやパガニーニ、ソナタ、コンチェルトなどを中心に勉強しますが、現代音楽のカリキュラムでは特殊奏法などの実技レッスンを受け、その他にも現代音楽のプロジェクトに参加します。プロジェクトは現代曲のアンサンブルで、合奏練習を何度か実施し、最終的には学内外の演奏会で演奏します。曲は全て現代音楽なので、取り上げる作曲家のほとんどは存命中です。オーストリアやドイツに在住する作曲家は、練習や演奏会に本人が立ち合うこともあります。実際に作曲者と直接話をして疑問点を解決し、時にはより魅力的な曲へと生まれ変わることもあり、そのような瞬間に居合わせることができるのは現代曲ならではです。
ウィーンミッテ駅から徒歩約10分の位置にある大学のメインキャンパス
これは図書館です。私が入学したころから校舎の建て替えが
進み、キレイで近代的な校舎が多くなりました
図書館内は広々としていて、数多くの楽譜を所蔵しています。
窓際の席ではヴァイオリンケースを置いても十分に余裕があります
音楽を始めたきっかけ
若い頃にレコード会社に勤務していた父の影響で、母は私がお腹の中にいるころからエリック・クラプトンやビートルズなどの音楽を聴いていたそうです。お気に入りのCDの中にクラシック音楽の有名曲を集めたアルバムがあり、つかまり立ちができるようになるとすぐに、私は好んでこのCDを選んでいたとのこと。
ヴァイオリンとの出会いは3歳ごろ。五嶋みどりさんのドキュメンタリー番組を観て、「ヴァイオリンを弾きたい」と言ったらしいのですが、まったく相手にされませんでした。その後、「何か習ってみたいことはある?」と言われる度に「ヴァイオリン」と言い続け、やっと7歳の時にヴァイオリンを手にすることができました。
現在師事しているアルテンブルガー先生(写真中央)、
チェリストのマシアス・バルトロメイ氏(写真右)と共に
印象に残った経験(レッスン、影響を受けた音楽家)
一番大きな影響を受けたのは、10歳からお世話になった徳永二男先生です。特に「楽譜に誠実でなければいけない」という言葉が印象に残っていて、イザイのバラードのレッスンでは「他の人がこう弾いているからと勝手にアレンジするのではなく、まずは楽譜を徹底的に読み込むことが大切」と教えられました。おかげで、ウィーンに留学してからもアルテンブルガー先生はもちろん、伴奏の先生や現代音楽科の先生からも「いつも楽譜をしっかり勉強して、曲の細かい部分まで把握できている」と評価していただけています。そして何より、徳永先生が「海外へ行きなさい」と早くから後押ししてくださったおかげで今の私があります。遠く離れていても、いつも心の支えのような存在です。
アルテンブルガー先生からは「常にエレガントな演奏を心がける」という姿勢を学びました。音楽は芸術であり、音で美を紡ぐものです。かといって小さくまとまるのではなく、スケールの大きな演奏と、上品さを両立させること。先生の影響で、私の演奏スタイルはずいぶん変わったと感じます。アルテンブルガー先生とは演奏会で共演させていただく機会も多く、先生を通じて数多くの演奏家と出会えました。ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の首席クラリネット奏者、マシアス・ショーン氏やスイスのチェリスト、パトリック・デメンガ氏など、一流の演奏家から「プロの演奏家とはどうあるべきか」を学びました。 また、現代奏法の指導を受けている元ハーゲンカルテットのセカンドヴァイオリンのアネッテ・ビク先生を通じて、弾き手次第で現代音楽も表情豊かに、美しく演奏できるということを知りました。より現代音楽への興味が深まったのは、ビク先生のおかげです。
2022年の学年末試験で主席となり、翌年ピアニストのヒンターフーバー氏と共演。
事前の合わせ等で一流演奏家の解釈に触れ、大きな刺激を得られました
今後の目標
音楽、曲、作品は演奏されて初めて完成すると思います。これまでに現代音楽のオーストリア初演や世界初演を10曲ほど経験しましたが、新しい作品を演奏するというのは、ある意味で責任を伴う行為です。曲が難解に思えることも多いですし、アンサンブルが難しく、どんな演奏が正解なのか分からず手探りで作り上げていくこともあります。何よりも、作曲家が魂を込めた作品に命を吹き込むのですから、相応の準備が必要です。楽譜を徹底的に読み込み、練習を繰り返し、アンサンブルの精度を高め、本番では一瞬たりとも気を抜かずに最後まで集中力を保つ。「難しい現代音楽だからどうせミスしても分からない」などと思わず、真摯に取り組み、弾き手が曲を理解し、納得して演奏することで、初めて曲は輝き、聞き手の心に響くのです。
一方で、現代音楽を取り巻く様々な課題の中には、奏者側の問題もあります。「現代曲は特殊奏法など楽器や弓に負担がかかる」「奇妙な音、耳障りの悪い音を求められるため、演奏する意義が感じられない」といった偏見から、現代音楽から距離を置く演奏家も少なくありません。
世の中にはまだ知られていないだけで優れた現代曲、美しい現代曲がたくさん存在します。まずは今後10年以内に100曲の現代音楽に命を吹き込むことが私の目標です。コンクールや演奏会を通じて自分の知名度を上げ、演奏機会を増やせたらと考えています。私自身が演奏技術をより高め、現代音楽の美を引き出すことで、より多くの方に「現代に生きる作曲家も多くの優れた作品を生み出している」ということを広めていきたいと願っています。
Austrian Composersはオーストリアの現代作曲家が集って作った組織で、
これまでに2度ほど新曲の演奏会に出演しました
山影 頼楓(RAIKA YAMAKAGE)さん プロフィール
- 1999年 東京生まれ
- 7歳でヴァイオリンをはじめ、8歳からピアノ、10歳から作曲を学ぶ
- 2007年に桐朋子どものための音楽教室に入室
- 2009年より徳永二男氏に師事
- 2011年 日本学生音楽コンクール小学校の部 全国大会第3位
- 全日本クラシック音楽コンクール2位(1位なし)
- 2013年 広島交響楽団とブルッフのヴァイオリン協奏曲を演奏
- 2014年 全日本学生音楽コンクールバイオリン部門 中学生の部 全国大会第1位
- 2015年 桐朋女子高等学校音楽科(男女共学)に特待生で入学
- 神奈川県フィルハーモニーと共演
- 2018年 ウィーン国立音楽大学に入学、クリスティアン・アルテンブルガー氏に師事
- 2021年 ミュンヘン国際音楽コンクール本大会出場、「ロイジアルテ音楽祭」でウィーン・
- フィルの首席クラリネット奏者、マティアス・ショーンと共演
- 2022年 イザイ国際音楽コンクール(ベルギー)第3位
- 学年末試験で満場一致の最優秀となりベンジャミン賞受賞
- 「ヴァイセンゼー音楽祭」や「ベートーベンの春 音楽祭」に出演
- 2023年1月に、レオポルト・ミュージアム内のホールにて、ピアニストのクリストファー・ヒンターフーバー氏と共演
- ザール国際ヴァイオリンコンクールで第3位








