活動リポート:今井 理子(ピアノ)

今井理子

2024年度の支援対象者で、現在ウィーン国立音楽大学ピアノコンサート科に在籍の今井理子さんにお話しを伺いました。

現在勉強していること

ウィーン国立音楽大学ピアノコンサート科の学士課程4年に在籍しています。2021年秋にウィーンでの留学を始めてから、日本での音楽活動と両立しながらの生活を送っています。ウィーン国立音大では、専攻実技のピアノレッスンが非常にハイレベルであることはもちろんですが、ピアノ修理の専門家の先生によるピアノ構造についての講義や、現役で世界的に活躍されている古楽器奏者の先生による鍵盤古楽器のレッスン、ウィーン・ハプスブルク家のコレクションからなる古楽器博物館の楽器修復現場での特別講義など、音楽の都ならではの学びがたくさんあり、これまでになかった視点からピアノ演奏について考える機会を多く与えられました。その中で、今自分がやろうとしている音楽の歴史的な文脈や、文化的・社会的な役割について、より客観的に捉えることができるようになったと感じています。

ウィーン国立音大ピアノ科の校舎ウィーン国立音大ピアノ科の校舎
レッスン室やコンサートホールなどがある

古楽器のクラスコンサートのリハーサルにて古楽器のクラスコンサートのリハーサルにて

また、ピアノコンサート科では、4年生で専攻実技の卒業試験に加えて卒業論文も執筆する必要があり、自分の専攻実技や音楽科目での学習内容の応用として、より学術的な手法で一つのテーマについての研究を行う必要があります。つい最近執筆を終えたのですが、既往研究をドイツ語のデータベースで閲覧したり、普段実技レッスンがメインの生活では目にすることの少ない非常に狭い領域の専門的な原典資料を精読したりと、アカデミックな日々を経験することができ、大変充実したセメスターでした。楽譜や作曲家の史料の精読にとどまらない、新しいアプローチを学べたことは、今後のピアノの演奏研究にも大いに役立つ有意義なものであったと思います。

ウィーン国立音大の図書館ウィーン国立音大の図書館
豊富な蔵書とデータベースを閲覧できる

クラスコンサートの後、門下の仲間たちとの食事会にてクラスコンサートの後、門下の仲間たちとの食事会にて

音楽を始めたきっかけ

私の家族や親戚には、音楽の専門家は一人もいませんが、特に祖母が音楽をとても愛している人で、2歳の時に初めてピアノレッスンに連れて行ってもらった時から、いつも隣であたたかく練習を見守ってくれていました。また、両親は建築の専門家で、普段から音楽と建築の類似性と差異についての話をよくするのですが、2つのジャンルが程よい距離感で関わり合っていることもあり、日常的にインスピレーションをもらっています。幼少期から、自由にピアノを弾けるようにサポートしてくれましたが、練習するように言われたことは一度もなく、それが今まで楽しくピアノの勉強を続けることができた理由だと思います。
私がピアノを始めるにあたり、父が「とりあえず世界最高峰の音楽をたくさん聴かせよう」と購入してきてくれたベルリン・フィルのDVDが家にたくさんあるのですが、その中でも2004年の『ヨーロッパコンサート from アテネ』(ピアノ:ダニエル・バレンボイム、指揮:サイモン・ラトル、ブラームス:ピアノ協奏曲第1番)は今まで何回聞いたか分からないくらいに好きな演奏で、当時3歳だった私が興奮してテレビに近寄りミルクをこぼしてしまって買い直してもらったほどです。この演奏が私がおそらく生まれて初めて聴いたピアノ協奏曲で、後に初めてのオーケストラとの共演でも選んだ、大切な曲です。三つ子の魂百まで、とはまさにこのことで、私の中にある音楽への愛は、この時に触れたブラームスの音楽に原点があると思っています。

クリスマス休暇に訪れたザルツブルクにてクリスマス休暇に訪れたザルツブルクにて

アンドラーシュ・シフのコンサート、コンツェルトハウスにてアンドラーシュ・シフのコンサート、コンツェルトハウスにて

印象に残った経験

私が本格的に音楽の道を志すようになったきっかけとして、恩師との出会いがあります。11歳の時に初めてお会いし、今もお世話になっている金子勝子先生とのレッスンは、毎回が濃密で思い出深いものですが、特に指セット(金子先生オリジナルの指のトレーニングメソッド)について教えていただいてから、その修得によって可能になる音楽表現の広がりを実感し、「こんな音で表現したい」と次から次にアイデアが浮かぶようになりました。その感動はとても大きなもので、今でも音楽の追求の原動力になっています。また、現在ウィーン国立音大で師事しているアンナ・マリコヴァ先生とは、小学生の頃に東京で開催されたマスタークラスで初めてレッスンを受けました。先生が弾いて示してくださる解釈は、どれも伝統の中で培われた深い洞察に基づくものでありながら、常に革新的なインスピレーションの要素を含んだ創造的なものであり、毎回のレッスンに驚きがあります。

カフェ・ザッハーにて友人たちとカフェ・ザッハーにて友人たちと

ウィーン市庁舎広場のクリスマスマーケットウィーン市庁舎広場のクリスマスマーケット

今後の目標

ウィーンに留学して本場のクラシック音楽の世界を体感してから、「日本人の演奏家として自分ができることは何か」ということを考えるようになりました。それは簡単に言葉で言い表せるものではなく、これからさらに追求していきたいことでもありますが、禅的な精神性にヒントがあるように思います。そういった探究は、実験的な心構えから可能になるものなので、コンクールなどの機会を存分に活用し、日頃の鍛錬を頑張っていきたいです。志を同じくする素晴らしい仲間たちと切磋琢磨しながら、この素晴らしい音楽の文化を継承していけるような演奏家になることが、目標です。

コンサートで共演したポーランド出身のチェリストの友人とコンサートで共演したポーランド出身のチェリストの友人と

今井 理子(RIKO IMAI)さん プロフィール

  • 2001年東京都生まれ、2歳よりピアノを始める
    鶴岡佐代子、秋山徹也、金子勝子、角野裕の各氏に師事
    東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校を経て、東京藝術大学で江口玲氏に師事
  • 2021年10月より ウィーン国立音楽大学にてアンナ・マリコヴァ氏に師事
  • 2021年 第18回ショパン国際ピアノコンクール本大会出場
  • 2023年 Shigeru Kawai国際ピアノコンクール第6位
  • 2023年度 「藝大モーニング・コンサート」に出演
  • 2024年 ロザリオ・マルチアーノ国際ピアノコンクール第3位
    第5回日本ショパンピアノコンクール第2位
    「ショパン・フェスティバル2024・2025 in 表参道」に出演

今後の出演予定

7月5日(土)13:00-13:30 ヤマハ銀座店1F体験エリア(入場無料)
クレマチス サタデーミニピアノコンサート 第6回出演 今井理子
C6XA銀座モデル 特別展示新しいウィンドウで開く