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活動リポート:松本 拓也(ファゴット)

2025年度の支援対象者で、現在チューリッヒ芸術大学に在籍されている松本拓也さんにお話しを伺いました。
在籍校、学年、専攻、現在勉強していること
私はスイス・チューリッヒ芸術大学のマスター・ミュージックパフォーマンス課程に在籍し、チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団の首席ファゴット奏者であるマティアス・ラッツ氏の下で研鑽を積んでいます。
チューリッヒ芸術大学
レッスン室
私が勉強しているクラスはヨーロッパ内でも特にレベルが高いことで有名で、マティアス・ラッツ氏による、非常に緻密かつ美しい音楽性を育むことのできるレッスンを毎週受けることができます。また、クラスメート同士もとても仲が良く、お互いの演奏や リード作りについて意見を交わし、切磋琢磨することができる素晴らしい環境です。レベルの高いクラスの中で勉強していると、クラスメートやクラスの卒業生からオーケストラやそのオーディション、コンクールなどを通じて得たさまざまな経験や学びを教えてもらうことができ、その多くの情報を基に、自分のパフォーマンスや音楽との向き合い方を改めたり、自らのキャリアプランを綿密に練ることができます。自分一人では実際に足を運んで経験できることに限りがあるため、このように仲間たちから経験談や情報を得ることができるというのも、ハイレベルな環境で学ぶことのメリットであると感じています。
クラスの試演会を終えた後
フリブールでホルンを勉強している中国人の友人とジュネーヴでランチ
音楽を始めたきっかけ
私の親族に音楽を生業としている人は一人もいませんが、父母ともに音楽を愛しており、また兄が幼少期にピアノを習っていました。そのことから自分も小さい頃から音楽をやりたいと親に言っていたようで、4、5歳の時にヴァイオリンを始めました。それが私の音楽人生の始まりです。その後、さまざまな理由からヴァイオリンは断念したのですが、10歳からピアノを習い始め、12歳の時に中学校の吹奏楽部でファゴットと出会います。初めてファゴットを触って吹いてみた時の感覚や、1音吹いてみた瞬間から「この楽器をやりたい!」と思ったことなどは今でも鮮明に覚えています。
印象に残った経験
「ヨーロッパに留学したい!」「こんな音楽家になりたい!」と思ったきっかけはいくつかあります。一番最初は2018年に聴きに行ったフランクフルト放送交響楽団の来日公演でした。当初はショパン国際ピアノコンクールで優勝して間も無くだったチョ・ソンジンの演奏を聴くことを目的に行った演奏会だったのですが、あまりに素晴らしいオーケストラの演奏に心を惹かれ、それからヨーロッパのオーケストラに興味を持ち始めました。その1年後に、ご縁があってパリ管弦楽団の首席ファゴット奏者であるジョルジオ・マンドレージ氏のレッスンを受ける機会をいただきました。これが人生で初めて受けたヨーロッパで活躍する方のレッスンだったのですが、それまで自分が持っていたファゴットという楽器のイメージを全て覆す大変感銘的な時間でした。このレッスンをきっかけにヨーロッパで勉強したいと思うようになり、いろいろなファゴット奏者の演奏を聴くようになりました。
その中で出会った1枚のCDが、現在師事しているマティアス・ラッツ氏のファゴット協奏曲集です。1音聴いた瞬間から彼の音色や音楽など、その全てに虜になり、このような、人の心を惹きつける演奏ができる音楽家になりたいと強く思うようになりました。
世界初演の協奏曲の演奏を終えた、師匠マティアス・ラッツ氏を門下生で囲んで
チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団のコンサート
今後の目標
日本で勉強していた頃に、指揮者の阪哲朗先生からいただいた大変印象的なお言葉があります。
「音楽家の仕事は、楽譜という二次元の物の中に埋め込まれた音を、いかにして三次元の世界に引き出して立体的に作るか、を追求することなんだよ。」日々の練習の中で時折、いかにミスをしないか、音程が正しく演奏されているか、といったことに集中してしまい、最も大切な音楽性が疎かになることがあります。もちろんそれらも大切ですが、それと同時に本質を見失わないように常に阪先生のお言葉を心に留めながら、聴き手を魅了する音楽家になることを目指して、これからも音楽と向き合っていきたいと思います。
グリンデルヴァルトのフィルストから見えるアルプス山脈
愛の不時着のロケ地としても有名
ミュンヘンを訪れた際にそこでファゴットを勉強している友人とランチ
松本 拓也(TAKUYA MATSUMTO)さん プロフィール
- 2001年 アメリカ・カリフォルニア州生まれ、大阪育ち
12歳の時にファゴットと出会う
16歳の時にテレビ朝日「題名のない音楽会」に出演、同番組内で、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団(指揮・藤岡幸夫)と共演し、ソリストデビューを飾る
その後も阪哲朗、下野竜也、延原武春各氏らの指揮の下、日本センチュリー交響楽団、京都市立芸術大学音楽学部・大学院管弦楽団、テレマン室内オーケストラと共演 - 2024年4月 京都市立芸術大学音楽学部卒業、ファゴットを中野陽一朗氏に師事
現在スイス・チューリッヒ芸術大学修士課程に在学し、ファゴットをMatthias Racz、コントラファゴットをHans Agreda各氏に師事、これまでにGiorgio Mandolesi、PhilippTutzer、Laurent lefèvre、Stefano Canuti、Philipp Zeller、Sergio Azzolini各氏のマスタークラスを受講








