ヤマハ音楽支援制度は、優れた音楽能力を有し、将来音楽分野で活躍が期待される若手音楽家への支援として「音楽奨学支援」（13歳以上～25歳以下）を実施しています。
今回は2017年度の支援対象者で、この春、東京藝術大学器楽科（ピアノ専攻）を卒業され、4月に同大学大学院修士課程に進学された、上田実季さんにお話を伺いました。
プロフィール：上田実季（ウエダ ミキ）1996年生まれ、愛知県碧南市出身
2010年 3月 愛知県立明和高等学校音楽科卒業
2019年 3月 東京藝術大学音楽学部器楽科ピアノ専攻卒業
2019年 4月 東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程ピアノ専攻入学
2012年 第66回全日本学生音楽コンクール高等学校の部名古屋大会第3位
2013年 第3回日本バッハコンクール全国大会高校の部金賞、ベスト賞
2013年 第37回PTNA ピアノコンペティション全国大会G級、ベスト賞
2014年 第1回イモラ国際ピアノオーディションin JAPAN高校の部第1位、併せてグランプリ受賞
ロヴェレート、ピストイア、フィレンツェのイタリア各地でジョイントコンサート、
フェニーチェ劇場（イタリア）にて行われたガルッピ音楽祭に出演
イモラサマーフェスティバル、ムジクアルブ夏期国際音楽アカデミー受講
2018年 第42回PTINAピアノコンペティション特級、銀賞
ヤマハマスタークラス特別コース修了
これまでに、安田高子、後藤康孝、今野尚美、高石香、湯口美和、吉永哲道、清水皇樹、鈴木弘尚、伊藤恵の各氏に師事
音楽を始めたきっかけ
私の両親は、特に音楽との関わりはなく、音楽(特にクラシック音楽)とは無縁の一家でした。
私がピアノをはじめたのは、5歳のときです。母と私は、よくテレビの教育番組を見ていたのですが、母はいつも「歌のお姉さん」の真似をしていました。しかし母は音楽を特に勉強したこともなく、もちろん絶対音感などもないですし、知っているクラシック音楽もほとんどありませんでした。そしてなにより、すごく歌が下手なのです…。それを見た父が、「お母さんの歌声を聴いて、それを娘が真似したら娘まで歌が下手になってしまう。娘が将来、大人になって、お友達や会社の人とカラオケに行ったときに、あの子は歌が下手だな…などといじめられないように、とりあえずピアノを習わせよう！(ピアノをやったら歌が下手ではなくなると思っていたみたいです)」と言い、近くのヤマハ音楽教室に通うことになったのがきっかけです(笑)
今となっては、母の歌が下手だったことや、父が危機感を持ってピアノをやらせてくれたことに感謝しています(笑)
伊藤恵先生と(先生のリサイタル終演後)
伊藤先生「門下部屋」
印象に残った経験、先生、レッスン
私が忘れられないレッスンは、現在大学で師事している伊藤恵先生の2度目のレッスンでのことです。高校3年生の8月末でした。
そのときの曲はベートーヴェンの『ピアノソナタ第28番』でしたが、私なりに精一杯表現しようと演奏しました。しかし先生から言われたことは、私にとってはとても衝撃的でした。
「これは音楽じゃない。」
いきなり冷水を浴びせられた気分でした。私が演奏したのは、音楽ではない…？
今まで頑張ってきたものが全て崩されてしまったようで、とても悔しくて悲しくて泣いてしまったことを覚えています。
その時、先生は私に「ベートーヴェンが、この作品をあなたに向けて書いたと思って弾いてごらんなさい。」とおっしゃったのです。
「そんなことはありえない！」と思いながらも、必死でイメージしました。ベートーヴェンがそばにいて、私にこの素晴らしい作品を書いてくれた。「弾いてごらん」とベートーヴェンが言っているようでした。
そんなイメージを抱きながら弾き始めた瞬間、私はまた涙が溢れてきて、とまりませんでした。さっきと同じ曲を弾いたのに、まるで全く違った作品のようでした！心の底から音楽を愛する気持ちや、ベートーヴェンへの感謝の気持ちが湧いてきました。苦しみや悩みを、その作品が、ベートーヴェンが、全てを包み込んでくれるような感覚でした。
弾き終わったあと「どうだった？」と聞かれ、何も言いだせなかったことを覚えています。でも私の心に、すごく大切なものが芽生えたような感覚でした。
伊藤先生門下生同期の仲間と、卒業を記念して
大学で履修した「ピアノDuo」発表会
今後チャレンジしたいこと
大学では、ソロだけではなく、室内楽も勉強させていただく機会が多くありました。
ソロも大好きですが室内楽もすごく好きで、大学院でも、たくさんの方々と一緒に音楽をしたいと思います。
また、先日ヴィオラのお友達とリサイタルを開催したときに、大学の先輩に編曲をお願いして演奏させていただいたのですが、素晴らしいアレンジばかりで、今まであまり触れてこなかった編曲作品にも最近興味が湧いてきています。
学生でいられるのも、あと数年です。今のうちにレパートリーを増やし、いろいろなところに出かけて旅をして、さまざまなものに触れ、豊かな人間になりたいです。
ヴィオラの有富さんとDuoリサイタル(左は編曲の藤森さん)
4年間伴奏した同期の鳥海君(テノール)のリサイタル
今後どんな音楽をしていきたいか、将来について
私は5歳の頃から音楽に触れ、ピアノを弾き続けてきました。ピアノのことだけでなく、友人関係や、学校や部活のこと、そして勉強、さまざまな場面で嬉しいことや楽しいことがたくさんありましたが、辛いことや悲しいこともありました。そんなとき私は、いつも音楽に助けられてきました。演奏しているときには、ただその音楽のことだけを考え、感動して、パワーをもらっています。私が音楽を始めたきっかけは、笑ってしまうようなことでしたが、今では自分の人生になくてはならない存在です。
そして、音楽の素晴らしさを教えてくださったのは、お世話になった先生方であり、感謝の気持ちでいっぱいです。
いつか私も、先生方のように、自分が感じている音楽の素晴らしさを、多くの人に伝えられるような人間になりたいです。
そして、そんなかけがえのない音楽、ピアノを、おばあさんになっても演奏し続けていけたらいいなと思っています。
東京藝術大学の卒業式にて
卒業演奏会に来てくださったピアニスト草 冬香さん
4/13(土)東京藝術大学音楽学部 同声会新人演奏会
場所 ：東京藝術大学奏楽堂（大学構内）
時間 ：第一部 12:30開場 13:00開演（ピアノ･ソロで出演）
第二部 17:30開場 18:00開演（ソプラノ･テノールとの共演）
入場料：（全席自由 第一部・第二部通し券）2,000円
4/25(木)2018年ピティナピアノコンペティション特級入賞者コンサート
場所 ：カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ」
時間 ：18:00開場 18:30開演
入場料：一般3,000円 ピティナ会員2,500円 学生2,000円
5/4(土)ラフォルジュルネ 丸の内エリアコンサート
共演 ：エロイカ木管五重奏団
時間 ：16:45-17:15演奏予定
入場料：無料
5/5(日・祝)第89回新人演奏会
場所 ：東京文化会館大ホール
時間 ：11:00開演
入場料：前売り1,300円 前売りペア2,000円 当日1,600円
5/12(日)東京藝術大学アカンサス東海第20回新人演奏会
場所 ：愛知県芸術劇場コンサートホール
時間 ：14:30開場 15:00開演
入場料：全自由席2,000円
5/30(木)アーク紀尾井町サロンホール主催シリーズ 木曜コンサート
場所 ：紀尾井町サロンホール
時間 ：18:30開場 19:00開演
入場料：3,500円
フルート：河合雪子
6/23(日) STEINWAY & SONS 特級スペシャルコンサート
場所 ：スタインウェイ＆サンズ東京
時間 ：17:00開場 17:30開演
入場料：1,500円
6/29(土)河合雪子フルートリサイタル（共演）
場所 ：カーサクラシカ
時間 ：19:00開演
入場料：未定
