ヤマハ音楽支援制度は、優れた音楽能力を有し、将来音楽分野で活躍が期待される若手音楽家への支援として「音楽奨学支援」(13歳以上~25歳以下)を実施しています。
今回は2019年度の支援対象者で、現在、東京音楽大学大学院修士課程 打楽器専攻1年に在学中の坂口璃々己さんにお話を伺いました。
プロフィール:坂口璃々己(サカグチ リリコ)
1997年生まれ、埼玉県出身、12歳より打楽器を始める。
2015年3月 埼玉県立松伏高等学校音楽科卒業
2019年3月 東京音楽大学音楽学部器楽科打楽器専攻卒業
2019年4月 東京音楽大学大学院修士課程管打楽器研究領域打楽器専攻入学、東京音楽大学給付奨学生
2016年1月 第21回KOBE国際音楽コンクール打楽器C部門最優秀賞、および兵庫県知事賞受賞
2017年11月 第16回東京音楽大学コンクール管打楽器部門第1位
2018年9月 第16回イタリア国際打楽器コンクールマリンバB部門Absolute 1位、およびアダムス特別賞を受賞
2019年5月 第35回打楽器新人演奏会(日本打楽器協会主催)に出演、最優秀賞、および岩城賞を受賞
2019年5月 第89回新人演奏会(読売新聞社主催)に出演
これまでに打楽器、マリンバを神谷百子、村瀬秀美、藤本隆文、岩崎りえ、藤井里佳、東佳樹の各氏に師事
音楽を始めたきっかけ
母がエレクトーンのブライダルプレイヤーをしていたこともあり、私にも「音楽の楽しさを味わって感受性の豊かな子に育って欲しい」という思いで、小学1年生の頃にピアノを習わせたそうです。そしてピアノを習っていた影響で吹奏楽部に入部し(テニス部とどちらにするか迷いましたが)、入部後は、本当はサックスを吹きたかったのですが音が出ず、音が出たフルート、クラリネットと打楽器のどれにしようかここでも迷いましたが、結局ドラムを叩いている女性の先輩に憧れて打楽器を選びました。
その後はドラムに熱中するはずでしたが、実はマリンバを弾いていることが自分にとっては一番楽しかったらしく、気がつけば今までマリンバばかり弾いてきました。
印象に残った経験
まず、今年5月に出演した、読売新聞社主催の新人演奏会です。東京文化会館の大ホールで演奏しましたが、こんなに大きなホールでのソロ演奏は不安だったのですが、予想をはるかに超えたすてきな響きに感極まったことを今でも鮮明に覚えています。貴重な経験をさせていただけたことに感謝の気持ちでいっぱいです。
また昨年9月に参加したイタリア国際打楽器コンクール「Italy PAS」では、世界各地から集まった同世代の演奏がとても刺激になりました。打楽器は音楽のジャンルも幅広いので、演奏を聴いていること自体が大変勉強になり、またとても楽しむことができました。
ファイナルラウンドでの自分の演奏では、楽器のトラブルがありました。演奏を始めてからトラブルに気づき、演奏を中断せざるをえなくなり、楽器が正常になった後、途中から演奏する事態となってしまいました。それでも最後まで諦めずに演奏しましたが、逆に吹っ切れて良い演奏ができたのかもしれません(笑)。そしてそれが結果に繋がり、たくさんの方に楽しんでいただけたようで、苦しい思いもしましたが最後まで頑張り続けて本当に良かったと思っています。
このItaly PASでは今までにないさまざまな経験をすることができました。
そしてもう一つは、昨年行われた大学のリサイタル試験です。東京音楽大学では「リサイタル試験」(8単位)というものを履修することができ、書類審査から選抜された者が履修します。(その時は私を含めて3人が履修しました。)
この試験は、自分がリサイタルの立ち上げから終えるまでの企画、制作、運営(チラシ作成などまで含む)の全般について、そしてもちろん演奏内容について、管打楽器、弦楽器、ピアノ、声楽、作曲のさまざまな分野の先生方に評価していただくものです。
演奏以外の部分をご指導いただいたり、またこれほど幅広い分野の多くの先生方に評価していただけることはなかなか経験できないことなので、とても貴重なものでした。この経験を今後の演奏活動に生かしていきたいと思っています。
好きな音楽、ミュージシャン
実はロックが好きなのです!
クラシックを学んでいながらも、通学中の電車に乗っているときなど、普段はロックばかり聴いています(笑)。
ピアノを習っていて、中学の吹奏楽部ではドラムがやりたくて打楽器を始めた私に、父は「YOSHIKIを目指したら?」と言って私にX JAPANのDVDを渡しました。それからX JAPANのファンになり、今もバンド好きな父と弟の影響でさまざまなバンドにはまっています。そんな訳で、大学ではなかなか話が合う人がおらず寂しいですが、家族と盛り上がれるので楽しいです。
今後どんな音楽をしていきたいか
自分の個性をより大切にしていきたいです。
同じ曲を演奏しても、それぞれ全く異なる音楽が生まれるところがクラシック音楽の醍醐味だと思います。音楽に個性をいかに上手に出していけるか、そしてどれだけ自分を解放できるかを学んで、経験を重ねていき、たとえ自分の演奏が変化していっても、坂口璃々己というキャラクターを一番大切にして音楽をつくっていきたいです。そしてそれをたくさんの人に気に入っていただけるものとなるよう、今後も研究していこうと思います。
今後チャレンジしたいこと、近い将来の夢
私には、とてもアクティブで、地域の方とも関わりが深い祖父がいます。祖父はマリンバをやっている私に「ここで演奏してみないか?」「ここでマリンバを弾いたら良いのではないか?」とたくさん演奏の機会や話を持ち出してくれます。祖父が住んでいるところはとても自然の豊かな場所なのです。
祖父との会話の中でも、特に「湖や洞窟、森でマリンバを演奏してみないか?」という案は、マリンバという楽器と音色にマッチしそうで、とてもワクワクしました。(細かいことを言えば、楽器本体のためにはあまり良いとは言えない、などいろいろ問題もあるのですが)私は、そんな自然の中で聴くマリンバはきっとお客さまの心の奥底まで染み渡るに違いないと確信できます。この様な発想は祖父の助言がなければたぶん実現しようとは思わないでしょう。坂口家の中で最もアクティブかもしれない、そんな祖父を家族はみんな尊敬しています。
今後は、ホールで演奏するばかりではなく、まだ誰も挑戦したことのない新しい場所での演奏にもチャレンジしてみたいと思っています。