ヤマハ音楽支援制度は、優れた音楽能力を有し、将来音楽分野で活躍が期待される若手音楽家への支援として「音楽奨学支援」(13歳以上~25歳以下)を実施しています。
今回は2019年度の支援対象者で、現在、バークリー音楽大学に在学中で、作曲を専攻されている 浦 秀朗さんにお話を伺いました。
プロフィール: 浦 秀朗(ウラ ヒデアキ)
1994年 長崎県生まれ、4歳よりピアノを始める
ヤマハ音楽教室出身、演奏および作曲を石塚初子氏、梶谷修氏に師事
2009年 JOC(ジュニアオリジナルコンサート)ハイライトコンサートin福岡およびJOCシティコンサートin柳川に出演
2017年秋 バークリー音楽大学に入学、作曲を専攻
Arnold Friedman、Tamar Diesendruck、Vadim Neselovskyiの各氏に師事
音楽を始めたきっかけ
私の自宅には母の古いピアノがあり、7歳上の兄がレッスンのためにピアノの練習をしている姿を小さい頃からよく見ていました。そのため自然とピアノに触れる機会が多く、その様子を見た両親がヤマハ音楽教室の幼児科に通わせてくれたことがきっかけでピアノを習い始めました。親が転勤族だったこともあり、多くの先生と出会い、その中でも石塚初子先生と梶谷修先生からさまざまなジャンルの音楽を教えていただき、音楽にのめり込んでいくようになりました。
影響を受けた音楽家
小学5年生のときにBill Evansを聴いてクラシック以外の音楽を知り、Chick CoreaやMichel Camiloが大好きになりました。そして私が10歳のときに偶然テレビで観た上原ひろみさんの圧倒的なテクニックとパワー、そして本当に楽しそうに演奏している姿を見て虜になり、演奏だけでなくステージパフォーマンスでも影響を受けました。
大学ではクラシックの作曲を学んでおり、Bach, Debussy, Stravinsky, Erkki-Sven Tuur, Steve Reichの曲構成やオーケストレーションから多くを学びました。最近ではプログレやジェント音楽、また変拍子という観点からTigran Hamasyan, Plini, Polyphia, Arch Echo, Covet, Sarah Longfield, Animals as Leasers, Dream Theater, King crimsonなど数えきれないほどのミュージシャンから影響を受けています。また、ポップスやアニメ音楽、ゲーム音楽も大好きで常に情報を得ては聴き、自分の音楽に昇華させるようにしています。全ての音楽を受け入れ、常に自分の音楽の幅を広げるように努めています。
印象に残った経験・先生・レッスン
第5, 6セメスターのときに受講したVadim Neselovskyi 先生のプライベートレッスンでは主に作曲の指導をしていただきました。初めてのレッスンで自分が自信を持って作った2曲を聴いてもらった際に、先生は「発想が面白くて良い曲だね。だけどこれは君が作った曲だけど君じゃないね」、続けて「ヒデアキは多分Hiromi (上原ひろみさん)やTigran Hamasyanが大好きでしょ?すごく分かるよ。彼らは本当に素晴らしいミュージシャンだ。でもHiromiやTigranはこの世に2人も3人もいらないんだよ。そしてそれは君にも同じことが言えて、僕は君に自分だけの音楽を作り上げて欲しい」とおっしゃいました。この言葉は私の心に深く刻まれました。それまで「上原ひろみさんのような音楽家になりたい」と思っていたのですが「自分を確立した音楽家になりたい」という目標に変化しました。先生のレッスンでは、時折厳しいご意見をいただきながらさまざまな作曲技術を学ぶことができて、それまでの音楽に対する姿勢が変わりました。
また、卒業後のことを考えるようになり、プロの世界で活躍するミュージシャンたちと積極的にコンタクトを取りました。Tony Grey、Devin Greig、Covetのメンバー( Yvette Young、David Adamiak、Forrest Rice)、Sarah Longfield、Jake Howsam Loweの皆さんと交流を持つようになり、一緒にプロジェクトを進めるようになりました。
<人気バンド”Covet”の各メンバーと>
Instagramを通して連絡をいただいたロシア人ドラマーのKristina Rybalchenko氏からオファーがあり、2019年夏にヨーロッパ (ストックホルム、モスクワ、ロンドン、フランクフルト等) で演奏出来たことはとても貴重な体験でした。また、自分のプロジェクトとしてピアノ、ベース、ドラムによるトリオプロジェクトを結成し、セメスターごとにリサイタルを開き、かつ全曲オリジナルで臨んだ経験はとても大切なものでした。
今後チャレンジしたいこと、将来の夢など
2020年5月に卒業の予定で、その後はOPTビザを取得してアメリカに残り、演奏家、作曲家として活動しようと思っています。また、上原ひろみさんや布袋寅泰さんのグループでレギュラーとして活躍されたベーシストのTony Grey氏、プログレッシブメタルバンドのドラマーとして活躍するDevin Greig氏と共にトリオとして日本ツアーを計画しており、それを実現させることを近い将来の夢として設定しています。また、別プロジェクトとしてギタリストのJake Howsom Lowe、Sarah Longfield、Yvette Youngの各氏をゲストとして迎えた作品制作を進めている途中で、これらのリリースも出来るように取り組んでいきたいと思います。将来はクラシック、ジャズ、フュージョン、プログレ、ロック等ジャンルに捉われずに、また、個性ある新しい音楽を世界に向けて発信していきたいです。
※バークリーで初めてレコーディングした自作曲です。