ヤマハ音楽支援制度は、優れた音楽能力を有し、将来音楽分野で活躍が期待される方への支援として「音楽奨学支援」(13歳以上~25歳以下)を実施しています。
今回は2019年度の支援対象者で、現在、東京藝術大学音楽学部指揮科1年に在学中の佐久山修太さんにお話を伺いました。
プロフィール:佐久山 修太(サクヤマ シュウタ)
1997年神奈川県藤沢市生まれ
ヤマハ音楽教室出身、ヤマハマスタークラス演奏研究コース、特別コース修了
2015年 「ヤマハ・ガラ・コンサート2015」に出演、東京フィルハーモニー交響楽団(三ツ橋敬子指揮)と、ラヴェル『ピアノ協奏曲ト長調』を共演
2019年 神奈川フィルハーモニー管弦楽団(上野正博指揮)と、ラヴェル『左手のためのピアノ協奏曲』を共演
東京、ウィーン、パリ、モスクワでのマスタークラスに参加し、著名な音楽家のレッスンを多数受講、歌曲伴奏や室内楽奏者としても活動する
これまでにピアノを吉永哲道、植田克己、江口玲、室内楽を青柳晋、山澤慧、総合音楽科を清水昭夫、西尾洋、西岡瞳、指揮を曽我大介、山下一史の各氏に師事
東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校を経て、同大学器楽科ピアノ専攻を卒業
現在、同大学指揮科1年に在籍、作曲や編曲の活動も手掛ける
音楽を始めたきっかけ
母がピアノの教師をやっていたので、家にピアノがあり、小さい頃は遊びで鍵盤を叩いていました。幼児期にヤマハ音楽教室に通い始め、歌やリズム遊びを友だちと一緒に楽しんでいました。小学生になってピアノのレッスンが始まりましたがツェルニーに苦戦していたのをよく覚えています。小学校5年の時、ヤマハマスタークラス演奏研究コースのconcert vivaceに出演し、ピアニストを目指す決心をしました。初めての有料のコンサートで、人前で演奏する幸福感を覚えました。
印象に残った経験
「ヤマハ・ガラ・コンサート2015」に高校3年の時に出演し、初めてオーケストラと共演したことは大変印象に残っています。最初のオーケストラとの練習では、それまでのどの本番よりも緊張しましたが、ソリストの位置でオーケストラの音を浴びた感動は忘れられません。ただリハーサルはあまり上手くいきませんでした。あとで録音を聴いてみると、自分が思ったより相当速いテンポで演奏してしまっていて、次の練習が本番当日の朝だったので、そこで修正出来るのかとても不安でした。当日の朝、練習の前には指揮者と相談する時間が無かったのですが、指揮台の前でテンポのことだけを伝えて確認しました。すると自分の心配とは裏腹に音楽が出来上がっていく感覚があり、本番は本当に素晴らしい経験となりました。また、音楽と関わっていく中で、ヨーロッパに行った経験はどれも印象的なものばかりでした。最近行ったモスクワでは大聖堂で本場のロシア聖歌を聴き、そのクオリティと荘厳な空気感に圧倒されました。言語のリズムや街の雰囲気からその土地の音楽を感じることができます。作曲家が曲を書いた環境を体感することで自分の解釈が育つのです。
影響を受けた音楽家・好きな音楽
高校時代、周りにいろいろな楽器を専攻する人がいる環境になり、それまでほとんどピアノ曲しか知らなかった私は、とてもたくさんの音楽を知ることができました。中でも印象的だったのは、グスタフ・マーラーの交響曲でした。はじめは演奏に千人も要する曲があると知り、そのサウンドはどんなものだろうという感覚で聴いた第8番の交響曲でした。
それから、マーラーの交響曲というジャンルの枠を超えたような世界を構築している音楽性にはまっていきました。他の作品も聴いていくうちにこんなにも豊かな音楽表現ができるのかとオーケストラの魅力に虜になっていきました。
また、ラフマニノフの演奏を聴いた時は衝撃を受けました。速めのテンポの中にとてつもなく自由でロマンあふれる表現が本当に素晴らしく、どのようにフレーズを作りルバートをかけているのか細かく聴いたりしました。いかにも20世紀的な演奏で、最近ではあまり聴けない演奏だと思います。ラフマニノフは指揮者としても一流だったと思います。自作の交響曲の録音でも、ピアノ同様非常に自由自在に音楽を操っています。
大学でジャズ・ポピュラー音楽の授業を取り、それまで忌避していたポップスも鑑賞するようになりました。クラシック音楽では転調が研究しつくされる前に不協和音や無調に発展したので、ポップスに見られる意外な転調が面白かったりします。
私はクラシックの大きな特徴として、なんでもありの側面があると思っています。優れた芸術は多くの側面を持っています。たとえば民族的であったりジャズ的であったり、ジョン・ケージの作品が認められるくらいですから。これからもさまざまな音楽を吸収して表現の幅を広げていきたいです。
今後チャレンジしたいこと
指揮を未経験のまま指揮科を受験したのですが、2次試験で初めてプロのオーケストラである「藝大フィルハーモニア管弦楽団」を振りました。これから現場に立つ事もあると思いますが、指揮者はスーパーマンでなければなりません。あらゆることに精通し、どんな質問にも答えられないといけないので勉強は尽きないと思います。楽譜の研究に加えて世界史や語学などは必須項目ですが、音楽とは直接関わりのない分野でも詳しいものがあると良いと思っています。私は都市開発や生物に興味があるので、それらの知識も増やしていきたいです。まずは演奏会でオーケストラを指揮することを目標にして学んでいきます。
また、自分の創造性を趣味感覚で表現できるのが作曲です。小学生の時にJOC(ジュニア・オリジナル・コンサートに出演したり、ヤマハ音楽教室で即興演奏や伴奏付けなどを学んでいたことが、音楽を創る上での土台となっています。作曲技法は全て実際の作品から影響を受けています。
そして、ピアノでも演奏技術を磨きながら、コンサートやオーケストラとの共演を目指して活動をしていきたいと思っています。