研究活動支援対象者の活動レポート

金管楽器の吹奏における声道の音響的役割について九州大学大学院 芸術工学研究院 鏑木時彦 准教授 インタビュー2007年10月02日 取材

唇~声門の各ポイントで断面積を求め、シミュレーターで解析

この研究の方法について、鏑木准教授は次のように説明します。

鏑木: まず、演奏中のトランペット奏者の口内をMRI(核磁気共鳴画像法)を用いて撮影し、画像解析によって、唇から声門にかけての各ポイントにおける断面積を求め、関数化します。求めた断面積関数の値を、音響管モデルを用いたシミュレーターに入力することで、口内の共鳴特性を解析することができます。シミュレーターは、既存の研究をベースに求めたトランペットの共鳴特性のデータも合わせて構築したもので、肺から気管、声帯、声道までの音の伝搬や唇の振動を物理原則に基づいて忠実に再現できるものです。必要なパラメータを入力すれば、音圧波形を生成して音を出すところまで可能です。このシミュレーターを正確に制御するために、各部の断面積関数が必要になってくるというわけです。

断面積関数を測定するために必要なMRI撮影を行うにあたって、鏑木准教授は、トランペットを塩化ビニール管で作りました(写真参照)。これは、トランペットの各部のサイズをできるだけ忠実に再現したものだといいます。

鏑木: MRIの撮影では金属製品は使えません。それで、こうした模型を作る必要があったのです。ちなみに、マウスピースもアクリル製の特注品です。

高音域吹奏時のMRI画像。

鏑木: これを実際にプロのトランペット奏者に吹いてもらって、高音、中音、低音と3種類の音程について、MRI撮影を行い各断面についての画像データを得ました。

鏑木: MRIでは歯が写らないため、造影剤を口に含んで歯形を取って、あとでMRI画像と合成するそうです。歯列補填と呼ばれる作業ですが、プログラミングによる画像処理が必要になります。

鏑木: 現在ようやくこの画像処理が完了し、正確な断面積関数が求まったところです(図参照)。ここから、さらに細かい数値調整を行い、正確な数値をシミュレーターに入力して、詳細な共鳴特性を解析するところまで、もう少しという段階まで来ています。

MRI画像の各ポイントにおける断面積関数。同様に、中音域、低音域についても解析。