ヤマハ音楽支援制度は、優れた音楽能力を有し、将来音楽分野で活躍が期待される若手音楽家への支援として「音楽奨学支援」(13歳以上~25歳以下)を実施しています。
今回は2017年度の支援対象者で、東京藝術大学を経て、現在ドイツ・べルリン芸術大学
マスター課程第3ゼメスター(ピアノ・ソリスト専攻)に在籍されている、開原由紀乃さんにお話を伺いました。
プロフィール:開原由紀乃(カイハラ ユキノ)1992年生まれ、広島県福山市出身
2010年 3月 東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校ピアノ専攻卒業
2014年 3月 東京藝術大学音楽学部器楽科ピアノ専攻卒業
2014年 4月 東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程ピアノ専攻入学
2017年10月 ベルリン芸術大学に留学。現在同大学マスター課程第3ゼメスター在籍、ピアノ・ソリスト専攻
2004年、2005年 ピティナピアノコンペティションD級、F級 全国決勝大会 入賞
2006年11月 第11回浜松国際ピアノアカデミー受講
2015年10月 ロン・ティボー=クレスパン国際コンクール セミファイナリスト
2016年8月 第14回東京音楽コンクール ピアノ部門第3位
また、大友直人、渡邊一正各氏の指揮で東京交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団など国内のオーケストラとも共演
これまでに、高橋紀子、小嶋素子、白石光隆、伊藤恵の各氏に師事。現在ベルリン芸術大学で、ビョルン・レーマン氏に師事
現在勉強していること
私が在籍しているマスター課程(ピアノ・ソリスト専攻)は、ピアノ・ソロと室内楽の2つのレッスンがあり、1ゼメスターにつき、それぞれ約2~5回のクラスコンサートなどが行われ、実技の勉強に専念することができる、とても充実したカリキュラムになっています。そして1年目はそれに加えて語学学校に行きドイツ語を学びました。また、私は室内楽が好きなこともあり、弦楽器の友人のレッスンに伴奏でついて行ったり、コンサートで伴奏をしたりと、ピアノ・ソロだけにとどまらず、他の楽器の先生方や友人と一緒に音楽に向き合うことも大変勉強になっています。
ベルリンではピアノ・ソロをビョルン・レーマン教授にご指導いただいていますが、楽譜から音楽をどのように読み取りどのような音色と音楽で表現することができるのかという事を、広い視野で丁寧に沢山の意見を提示してくださいます。決して決めつけることなく無限大の音楽を引き出してくださいます。また隣で演奏してくださる音楽と音色は格別でいつも感動。毎回のレッスンが本当に楽しく、幸せです。
音楽を始めたきっかけ
私の母が趣味でピアノを弾いていたので、私も小さいときから家のピアノを弾いて遊んでいました。また、両親はクラシック音楽や童謡などの音楽をよく聴かせていたそうです。私が楽しそうに音楽にのって歌ったり踊ったりしているのを見て、当時3,4歳だった私を連れて、母が幼少期に習いに行っていた近所のピアノ教室に行き、先生と相談をし、通う事にしたそうです。家族が特に音楽の世界に通じていたわけではありませんが、私の祖父が画家ということもあり、芸術に対して抵抗なく取り組める環境だったように思います。小さい頃から祖父の絵を見ていましたので、今でも祖父の絵からインスピレーションをもらうことができ、またどこか気持ちが落ち着くのです。高校で上京した時も、ベルリンに引っ越したときも、祖父の絵は必ず持って行き、部屋に飾っています。
※2点とも、祖父、開原通人の作品、何れも黒を基調にしたもの
印象に残った経験、先生、レッスン
私にとって初めての国際コンクール(ロン・ティボー国際コンクール)に出場した時に、歴史的なホールでの演奏や、フランスの空気に触れ、そこで化学反応を起こす音楽や音色に、ただただ感動と大きな衝撃を受け、私にとって海外で勉強したいと強く決心したきっかけにもなりました。また中学2年生の時に参加させて頂いた浜松国際ピアノアカデミーでの、故中村紘子先生やエリソ・ヴィルサラーゼ先生のレッスン、他の受講生のレッスンや演奏を聴いて沢山の刺激を受け、音楽に取り組む姿勢が少し変わったように思います。
ベルリンに留学して、ベルリンフィルや著名な演奏家の演奏を日本ではありえない頻度と値段で聴くことができるのは本当に幸せです。
影響を受けた音楽家、好きな音楽など
高校で広島から上京し現在に至るまで、約12年間ずっとご指導いただいている伊藤恵先生から受けた影響は本当に大きいと思います。マイペースな私を辛抱強く見守ってくださり、時には厳しく、演奏することに対しての姿勢など、音楽的にも人間的にも大切なことを沢山教えていただきました。ピアニストとして芸術家として本当に心から尊敬しています。また、自分自身の音楽を培っていく中で、やはり先生方との出会いは、私にとっては非常に大きなものだと感じています。幼少期から今に至るまでご指導いただいた先生方は、親身に寄り添い、私自身の音楽をとても大切にしてくださいました。そのお陰で音楽に感動する気持ちを一秒たりとも忘れることなくここまでやってこられたということに本当に感謝しています。
ベルリンは自然が多く、私の家の近くにも沢山の自然があり、家の窓からも四季を感じることのできる、まるで絵画のような素敵な景色が見えます。ウサギ、リス、キツネなど野生の動物も身近に生息していて、とても癒されます。留学する前は、フランス音楽やその時々のマイブームの曲(クラシック音楽)を聴くことが多かったのですが、留学してからは、時間があるときは朝起きて家の窓から見える景色に合わせて音楽を聴くのが日課になっています。不思議とドイツの作曲家(ブラームス、ベートーヴェン、シューマン他)の曲を聴くことが多くなり、やはり周りの環境から受けるインスピレーションなどの影響もとても大きいと感じます。
今後どんな音楽をしていきたいか、チャレンジしたいこと
先生方に何度も言っていただいているように、自分自身が目の前にある音楽に感動することを大切にし、また、もし作曲家が私の演奏を聴いてくれている、そんな夢のような瞬間があるならば、演奏後に「ありがとう」と言ってもらえるような、そんな演奏ができるよう、日々音楽に向き合っていきたいと思っています。
ベルリンに来てもう1年が経ちましたが、残りの留学生活を充実させるとともに、ヨーロッパで行われているマスタークラスやコンクールに、できる限り参加したいと思います。
また、室内楽にも積極的にとり取り組んでいきたいと思っています。
開原由紀乃さんが出演されるコンサートの予定をご紹介します
2019年3月25日(月)「ロビーコンサート25」(ホテルオークラ)
2019年4月5日(金)「東京・春・音楽祭」(旧東京音楽学校奏楽堂)