研究活動支援対象者の活動レポート

異なる音色間で出現するピッチ知覚エラー(ピッチの錯覚)に関する実験的研究愛知教育大学 教育学部 新山王政和 准教授 インタビュー2008年2月29日 取材

優秀な教員育成はもちろん、音楽と人間・社会のより良い関わり方を実現するため、多彩な研究を進めておられる新山王政和准教授(以下、新山王准教授)。そんな新山王准教授の「異なる音色間で出現するピッチ知覚エラー(ピッチの錯覚)に関する実験的研究」が、2006年度研究活動支援の対象になりました。その内容について愛知県刈谷市にある愛知教育大学の一室で、新山王准教授にお話しいただきました。

音のピッチを、聞き分けられない人が増えている

幼少期にはヤマハの音楽教室に通っていた経験をお持ちで、現在はファゴットを専門に演奏しておられるという新山王准教授。ご自身でも演奏家として疑問を持ち続けてきた内容について、実際に研究を進めようと思われたのには、あるきっかけがあったといいます。

新山王政和 准教授

新山王: 私よりも上手にピアノが弾ける学生の多くが、ちょっとした音のピッチを聞き分けられないことに驚きました。彼らの中にあるはずのピッチを感じるセンサーが、まったく機能していないのです。これでは、自分が演奏している音も分からないから、自分の演奏に対してフィードバックができない。まだまだ発展途上で、勉強しなければならない学生たちにとって、これは大きな問題です。もっと1つ1つの音に対する鋭敏なセンサーを作って、音を大切に聴くということをやらないといけない、と思いました。

ただ、ピッチの違いに気付いていない人にこれを理解してもらうには、データの裏付けが必要でした。そこで、検討を重ねていった結果、「音色によって、ピッチの聞こえ方が違う」という結論に至り、このことについて研究を深めることにしたのです。

また、このピッチの違いに気付いていない音楽の指導者が多いことにも、新山王准教授は警鐘を鳴らします。

新山王: ピッチの違いが分からない子どもたちに対して、指導者自身も分かっていないから問題意識を持たないですよね。それでは違いの分からないままになってしまいます。そのことも、真剣に研究を進めるきっかけとなりました。